双子
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理論上でその存在は指摘されているが検証が困難であることに加え、そもそも存在が稀であるため確認されたことはない[42]。異性双生児として誕生する可能性が、通常の二卵性双生児の場合と同様に存在する。また半一卵性双生児は各々75%のDNAを共有している[43]
準一卵性双生児
準一卵性双生児は多精子受精(過受精)した卵子(二精子が受精した卵子)が何らかの原因によって分裂し、双生児となったもの。2007年3月、初めて学術的に公式な報告がなされた[44]。一個体中に異なる遺伝子情報が混在するキメラモザイク)として出生している[45]。卵子に過受精が発生する確率自体は全体の受精のうち1%程度と言われているが実際に出生にいたって生存が確認される事例はかなり稀であり、二例が確認されている。
双生児の出生頻度

双生児の出生頻度は人種により違いがあり白人種は1/80から1/120、黒人種では1/50以上といわれる。日本における双生児の出生頻度はかつては1/150から1/160の低い水準で安定していたが、1987年以降は双生児の出生頻度は大きな変動が続いている。一卵性双生児の出生率は地域・民族・時代に関わりなく一律0.4%であり、双生児出生率の人種間の差や近年の日本の双生児出生頻度の変動は主として二卵性双生児の出生頻度によるものである。

日本の双生児出生頻度は1000組中、1974年頃は6組を少し下回る程度だったが、2003年には10組を上回った。日本の一卵性双生児出生頻度は1974年から2003年の30年間において1000組中4組前後で安定しているため[46]、この出生頻度の変化は二卵性双生児の出生率の変動による影響が大きい。特に体外受精の導入による影響は大きく、体外受精によって双生児の出生率は導入前の6割増になったと言われる[47]。ただし1996年から日本産婦人科学会が胎内に戻す受精卵数を制限を開始し、現在は日本の双生児の出生率は2005年をピークに低下傾向[48]にある(現在の産婦人科学会の指針では原則として、胎内に戻す受精卵は一つと定められている[49])。

また、二卵性双生児の出生頻度は地域間・民族間の違いも大きい。西アフリカ一帯に住むヨルバ族の場合、二卵性双生児の出生率は2.8%(二卵性出生率1000組中28組、一卵性出生率は1000組中7組)[50]から約5%[51]におよぶ。さらにブラジルのある小さな集落、リーニャ・サンペドロ地区では双子出生率が10%に達する[52]。これは日本の二卵性双生児出生頻度の10 - 20倍に達している。また、リーニャ・サンペドロ地区の双子のうち半数は一卵性である(出生率5%)。この原因について長期にわたる調査が行われた結果、地域住民の遺伝的要因(TP53*P72およびMDM4-T)が影響を及ぼしている可能性が2012年に報告された[53]。この報告では住民に多い遺伝子(特にP53)多型種に受精胚生存率を上昇させる効果を有するものがあり、(受胎が知覚される前に消失するような受精胚も生き残るなどの結果として)卵性を問わず双子出生率が上昇している、と指摘している。ただし、受精胚の生存率には非常に多様な遺伝的影響があるため、P53の多型のみによって双子出生率が影響されることはない。あくまで居住者(すなわち遺伝子)の地域流動性が低い、特定地域のみで偶発的に現れる現象であると考えられている。

二卵性双生児とは異なり、一卵性双生児の受胎は偶然であって遺伝的な影響は存在しないとされている。しかし、インドのモハンマド・プル・ウムリ (Mohammad Pur Umri) 村では一卵性双生児の出生率が約10%に達しており、他にもヨルダンに一卵性双生児の誕生率が非常に高い家族が存在するなど、一卵性双生児の出生率にも遺伝的な影響が存在する可能性も指摘されている[54]。なお、ココノオビアルマジロは基本的に一卵性の四つ子を生むことで知られており、偶然に依拠することなく生物が一卵性多胎児を受胎することは可能である[55]。一方、ジャイアントパンダの多胎出生率(1963年から1990年まで)は飼育下において54%(74分娩中、双胎39、品胎1)に達する[56]。2016年時点での調査では双胎率44%であったが、そのうち同性双子18組の遺伝子調査を行ったところ、全てが二卵性双生児であった。ジャイアントパンダの場合は、一卵性双生児は極めて稀であるか、そもそも誕生しない可能性が示唆されている[57]。また飼育下のホッキョクグマの双子出生率は68%にのぼり(50分娩に対し88出産。単胎14頭、双胎34組、品胎2組)、妊娠期間が短いほど平均出生頭数は多い(多胎の場合は早産となる傾向がある)[58]。なお野生のホッキョクグマ2945個体に遺伝子検査を行ったところ、一組の一卵性双生児が発見されている[59]。ヒグマの場合はほぼ双子であり、内陸部のヒグマの平均出産頭数は約2頭、沿岸部(サケの捕食が可能な地域)では約2.3頭となっている(飼育下のヒグマでは11分娩中双子9組、三つ子2組であった)[60]
性別・卵性別の出生割合

一般に出生男女比は106:100とされるが、双生児等の多胎児の男女比は男児の割合が低くなり、102:100程度となる[61]。特に1絨毛膜1羊膜性双胎の場合、男男の出生率は極めて低い[62]。膜性(卵性)と性比の間に関係性があることを示唆する報告が幾つかあり1980年の報告では、二絨毛膜性双胎の出産総数に対する男児割合は0.571(男性が多い)、一絨毛膜二羊膜では0.492、一絨毛膜一羊膜では0.416であった[63]。これは、一卵性(一絨毛膜)の場合は多胚化時におけるX染色体不活性との相関が、二卵性(二絨毛膜性)の場合は母親が高身長・高体重であるケースが多く、体格的な要因によるステロイドホルモンの濃度との相関が示唆されている[64]。(よって卵性不問の双子の男女比は、一卵性の比率が高ければ男性割合が減ることになる。)

双胎妊娠における卵性と性別の組合せは、以下の5つのバリエーションが一般的である(確認されている事例が1例のみである準一卵性双生児と、異性一卵性双生児は除く)。1975年の文献[65]は、出生率順に以下のパターンとなると指摘した。

男女の二卵性双生児

女女の二卵性双生児

男男の二卵性双生児

女女の一卵性双生児

男男の一卵性双生児

しかし、性別と卵性の組合せを示す幾つかの調査のうち、オランダの1986年末?1993年までに生まれた全ての双子の約40%を調査した結果[66]と、日本の多胎児データベースに基づいたある調査[67](標本数461組)の結果は以下の通りであった。どちらの調査も卵性不明の対象者を除いているが、調査時期や人種・地域の違いによって性別や卵性の組合せの割合が異なることを示している。

性別・卵性別の出生数

組合せオランダの調査(1993)日本の調査(2013)
男女の二卵性双生児1032組(33.6%)142組(30.8%)
男男の二卵性双生児651組(21.2%)69組(15.0%)
女女の二卵性双生児594組(19.4%)79組(17.1%)
女女の一卵性双生児421組(13.7%)70組(15.2%)
男男の一卵性双生児371組(12.1%)59組(12.8%)

二卵性双生児の出生割合はそもそも地域差があるが、その組み合わせ(同性双生児か異性双生児か)もバラツキがある。2018年の報告[68]では、英国の二卵性双生児の同性・異性の割合は同性6:異性4の比率であった。
一卵性双生児の受胎誘因


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