参議院
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一方、GHQでは1946年2月5日の民政局長会合で簡明な一院制を日本政府に提案することとなった[3]。民政局長ホイットニー准将は、1946年2月13日、吉田茂外務大臣及び松本烝治憲法改正担当国務大臣と会見した際、衆議院のみの一院制とする憲法改正案(マッカーサー草案)を提示したが[13]、その場で松本が、一院制では選挙で多数党が変わる度に、前政権が作った法律をすべて変更し政情が安定しないことを指摘し、二院制の検討をホイットニーに約束させている[14][15]

その後、帝国議会と枢密院での議論のために法制局が作成した想定問答集では、「問 一院制を採らず両院制を採る事由如何」「答 一院制を採るときは、いはゆる政党政治の弊害、即ち多数党の横暴、腐敗、党利党略の貫徹等が絶無であるとは保し難いのであって(以下略)」[16]と「政党政治の弊害」を両院制を採る理由としている。

参議院は全く新しく作られた組織で貴族院との直接のつながりは無い。ただし、初期の参議院が職能代表を指向したのは、かつての貴族院改革案のリバイバルであったという指摘もある[17]。また、第1回参議院議員通常選挙は貴族院出身者が少なからず当選し、彼らが中心になって組織した院内会派緑風会は初期の参議院で大きな影響力を持っていた。
特質
良識の府良識の府

内閣にとって多数派の支持が必須となる衆議院は、逆に言えば通常は内閣の存立基盤であり、日本国政府を監視し、その過誤を是正するといった機能は、参議院の方により強く期待されることとなる。

参議院議員の任期は6年と長く、衆議院とは異なり内閣総理大臣によって解散されることもない。多様な人材を集めて充実した審議がなされ、院も内閣も議院運営上の駆け引きを抑制しつつも、良い緊張感を保ちながら誠実な議論の積み重ねが行われる「良識の府」となることは、参議院の一つの理想であるといえる。

ただし、参議院が新設された当時の議論では「良識の府」などという議論は全くなく、誰がこのようなことを言い出したかは不明であり、由来は不明である[注釈 3]。また、設置の目的に存在したものでもない。
再考の府

衆議院先議案が衆議院で可決した後に参議院に送付されて国会で二度目の審議に入ることが多いことから「再考の府」とも呼ばれる。予算は衆議院先議規定があり、条約や法律も政権にとって重要法案は多くが政権側によって衆議院先議法案となりやすい。与野党対立法案では衆議院可決後に参議院で審議未了で廃案や継続審議となることもある。

学習院大学教授の福元健太郎が参院発足後の1947年から2000年に政府が衆議院先議に提出した7106本の全法案を分析すると、衆議院が可決した法案を参議院が実質修正したり廃案になった例は8%。審査回数で参議院が衆議院を上回ったのは22%という結果が出た[19]。一方で、政策研究大学院大学教授の竹中治堅は「参議院は戦後日本の政治過程において多くの場面で現状を維持する方向で影響を与えてきた」と分析している[20]

衆議院で可決され参議院で否決された法案は過去に13例ある(みなし否決を除く)。ただし、衆議院で可決されたものの、参議院で議決できずに審議未了で法案が廃案になった例、参議院で修正案が可決された後で衆議院で参議院案が可決された例は多い。また、参議院で修正案が可決された後で衆議院が参議院案に賛成せず廃案になった例、参議院否決でも法案が成立した例もある。詳しくは衆議院の再議決を参照。

衆議院で可決され参議院で否決された法案例参院本会議議決日法案可否票差その後
1950年(昭和25年)5月1日地方税法改正案73102295月2日の両院協議会で成案成立に至らず廃案
1951年(昭和26年)3月29日食糧管理法改正案64126623月31日から5月10日までの両院協議会で成案成立に至らず廃案
1951年(昭和26年)6月2日モーターボート競走法案6595306月5日に衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
1954年(昭和29年)6月1日協同組合金融事業関連法案少数多数不明参議院での継続審議を経ての否決であったため参議院先議扱いとなり廃案
1994年(平成6年)1月21日政治改革関連法案118130121月29日に両院協議会で修正案が成立し、衆参本会議で可決
2005年(平成17年)8月8日郵政民営化関連法案10812517否決を受け同日衆院解散により廃案
総選挙で賛成派が圧勝し、再提出された法案が10月14日に国会で可決し成立
2008年(平成20年)1月11日補給支援特別措置法案10613327同日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
2008年(平成20年)5月12日道路整備費財源特例法改正案10812618翌日、衆院本会議で野党による両院協議会請求動議否決の上3分の2以上の賛成で再可決し成立
2008年(平成20年)12月12日補給支援特別措置法改正案10813224同日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
2009年(平成21年)3月3日第二次補正予算財源法案10713326翌日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
2009年(平成21年)6月19日海賊行為対策法案9913132同日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
2009年(平成21年)6月19日租税特別措置法改正案9913132同日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立
2009年(平成21年)6月19日年金改正法案9913132同日、衆院本会議で3分の2以上の賛成で再可決し成立

政局の府


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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