当初、原生生物界は単細胞生物のみを含んでいたが、その後、ホイッタカーやリン・マーギュリスらによって、真核多細胞生物を含めた再定義がなされた。この定義によると原生生物は「胚を作らず、組織の分化または形成も行わず、波動毛(鞭毛)をもつ場合は微小管が9+2構造に配列する真核生物」と定義される。従来、 原生生物界の学名は Protista(プロティスタ)とされてきたが、上記の真核多細胞生物を含めた分類では学名を Protoctista(プロトクティスタ)とすることがある。 近年、鞭毛根構造などの細胞内の微細構造や遺伝子の解析を通じて生物間の系統を解析する方法の進歩により、原生生物の中でも類縁関係の検討が進んでいる。また、細胞内共生説が想定していなかった、真核細胞間での細胞内共生の発見も大きな影響力を持っている。 そうした中、トーマス・キャバリエ=スミスは八界説を提出し、原生生物界をさらに三つに分けた。それによると、褐藻植物を含む黄色植物などの藻類群は、真核細胞由来の葉緑体を持ち、さらに葉緑体を持たない卵菌類、ラビリンチュラ類とともに、鞭毛が前方に向かうマスチゴネマを持つ羽型のものと後方に向かう鞭型のものの2本がセットになっている点で共通し、これらが単系群をなすということで、さらに体制に共通点があるハプト藻類とクリプト藻類を合わせ、これをクロミスタ界として独立させた。また、微胞子虫を含むいくつかの単細胞生物はミトコンドリアを持たず、これをミトコンドリアが共生する以前の真核細胞生物の生き残りと判断し、これをアーケゾア界とした。残りの原生生物界のものは、原生動物界という名を与えている。ただし、アーケゾア界には疑問の声もあり、ミトコンドリアを持たないのは、二次的に退化したのだとの指摘がある。キャバリエ=スミス自身もその後撤回している。 現在もこれらの生物の分類については見直しが続いている。他方で2011年現在の日本の高等学校教科書においては、五界説はひとまず標準としての位置を保っており、原生生物については生物の教科書が扱っている。しかし、1990年にカール・ウーズが生物界を細菌、古細菌、真核生物の3つに大別する3ドメイン説を発表するとこれが主流となり、原生生物は真核生物ドメインの中に含まれることとなった[3]。
五界説以降の展開
脚注
出典^ “Microbial predators form a new supergroup of eukaryotes”. Nature 612 (7941): 714?719. (2022). Bibcode: 2022Natur.612..714T
^ “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes”. Journal of Eukaryotic Microbiology 66 (1): 4?119. (2019). doi:10.1111/jeu.12691. PMC 6492006. PMID 30257078. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6492006/.
^ a b c d 「人間のための一般生物学」p18 武村政春 裳華房 2010年3月10日第3版第1刷
^ 「人間のための一般生物学」p17 武村政春 裳華房 2010年3月10日第3版第1刷
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