原子力
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その後、1949年にソヴィエト連邦が、1952年にイギリスが、1960年にフランスが、1964年に中華人民共和国が核実験を成功させ、核保有国は5ヶ国にまで拡大した。それ以上の核兵器の拡散を防ぐために1968年に核拡散防止条約(NPT)が締結され、この5大国以外の核兵器保有は禁止されることとなったが、これを批准しなかったインドが1974年に、パキスタンが1998年に、そして朝鮮民主主義人民共和国が2006年に核実験を成功させ、さらに保有が確実視されているイスラエルを含め、2011年時点では9ヶ国が核兵器を保有している[12]。ただし、5大国を中心に核兵器保有の拡大には批判が強く、特に北朝鮮核問題を巡っては同国が2003年にNRTを脱退した後、国際社会との攻防が続いている。そのほか、いくつかの国家に核爆弾開発の疑いが持たれており、なかでもイランは核開発を巡って国際社会と激しく対立しており、イランの核開発問題として政治的な焦点の一つとなっている。また、以前は南アフリカも核兵器を所有していたものの、1993年に正式にこれを放棄した[13]。1991年にソビエト連邦が崩壊すると、ロシアベラルーシウクライナカザフスタンの4か国が核兵器を継承したものの、このうちベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンの3か国はロシアに核兵器を移管してこれを放棄し、旧ソビエトの核兵器はロシアのみが継承することとなった[14]

核兵器の存在は大規模戦争を抑止するという、いわゆる核抑止論も存在するものの、大規模核戦争は放射性物質の広範囲な汚染や核の冬などによって巨大な被害をもたらすことが懸念されているため、核拡散防止や核軍縮、核実験の禁止など、さまざまな手段によって核兵器の統制や抑止が目指されている。核実験に関しては1963年に、核実験を地下に限定する部分的核実験禁止条約(PTBT) が締結され、1974年には残された地下核実験についてもアメリカ・ソヴィエト両国間において地下核実験制限条約が締結され、発効は遅れたものの1990年には発効した。その後、1996年にはあらゆる空間における核実験・核爆発を禁止する包括的核実験禁止条約が締結されたものの、核開発能力を持つ44ヶ国のうち数カ国が批准を行っていないため、いまだに発効していない[15]。また南半球を中心に、核兵器を条約によって禁止する非核兵器地帯を設定する地域も多い。
原子力推進

核を動力源とする物体の推進運動を原子力推進(nuclear propulsion)と呼ぶ。原子力で動く船舶は原子力船と総称され、主に軍事用に使用される。動力は船舶に搭載された原子炉であるが、原子炉で蒸気タービンを動かし直接スクリューを駆動して航行するものと、蒸気タービンから電気を作りそれによって航行するものの2タイプが存在する[16]。軍事用原子力船は主に航空母艦潜水艦に多用され、航空母艦は「原子力空母」、潜水艦は「原子力潜水艦」という。また、原子力巡洋艦も少数存在する。原子力船を所持する国家は少数であり、原子力潜水艦を運用しているのは2000年代にはアメリカ、ロシア、フランス、イギリス、中国の5大国のみだった[16]。その後、インドが2009年に原潜アリハントを就航させ[17]、原潜保有国は6ヶ国となった。原子力空母の保有国はさらに少なく、10隻を保持しているアメリカを除くと、フランスのシャルル・ド・ゴールが就役しているのみである[18]原子力飛行機は1950年代に軍事用として構想されたものの、実用化はなされなかった。
民生利用
発電詳細は「原子力発電」を参照関西電力高浜原子力発電所

核反応を利用した発電を「原子力発電」や「核発電」と呼ぶ。現在実用化されている原子力発電は核分裂反応によるもので、通常は原子炉で発生した熱エネルギーで蒸気をつくり、タービン発電機で発電する[19]。燃料としてはウランプルトニウムなどが用いられる例が通常である。1951年に世界初の原子力発電所が稼働し、以後世界各国で次々と導入されたが、1980年代以降はアジアを除き新規稼働が鈍化した[20]。2016年度には、原子力発電は世界の総エネルギー供給量の7%を占めていた[21]。2017年度においては全世界で31ヶ国が447カ所の原子力発電所を所有している[22]。2016年で最も原子力発電量が大きな国はアメリカであり、以下フランスロシア韓国と続く[23]。日本は発電能力はフランスに次ぎ3位であるが、2016年度において設備利用率は5%と極めて低くなっている[23]

日本では1963年の原子力発電の開始以来発電量に占める割合は増加を続け、2011年には総発電量の3分の1程度にまで達したが[24]、同年の福島第一原子力発電所事故によってすべての原子力発電所は停止され[25]、一部が再開されたのちも、原子力発電の占める割合はわずかなものにすぎない。この原子力発電の停止はエネルギー供給のうち9割以上を化石燃料に頼る結果をもたらし[26]、エネルギー自給率が震災前の20%から6%に低下するなどの影響をもたらした[27]


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