即興演奏
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一般的にポピュラー音楽、特にロックなどでの「即興演奏」では、ジャズと同様に一定のコード進行やコード理論などの規則にしたがってフレーズを作り演奏される。

1960年代後半以後のブルース・ロックやファンク、ハードロックプログレッシブ・ロックのジャンルに、間奏部分に即興演奏をおこなうバンドが登場した。ジェームス・ブラウンの「スーパーバッド」の間奏部分では即興が聴ける。ミュージシャンがその場の雰囲気に合わせてソロを自由に繰り広げるライブが人気を得て、拡大していった。1970年代には、即興演奏を重視したプログレッシブ・ロック・バンドも人気となった。キング・クリムゾンのアルバム『暗黒の世界』は、ライブ部分が即興演奏となっている。だが、1970年代後半にはパンクの登場により、ハードロックやプログレのバンドはオールド・ウェイブと呼ばれることもあり、古いと決めつけられた。その中で、常に斬新なサウンドに挑戦し続けたのは、フランク・ザッパキャプテン・ビーフハート、レジデンツ、ルー・リードらである。ジャム・バンド[注釈 4]と呼ばれるバンド群のルーツには、グレイトフル・デッド[注釈 5]オールマン・ブラザーズ・バンド[注釈 6]がいる。
ジャズの即興演奏

ジャズの即興演奏はスタイルによって多少の違いがあるが、まったく無規則に演奏されるのではなく、原曲のコード進行、またはそこから音楽理論的に展開可能なコードに基づいて行われる。従って演奏されるアドリブを理解したり、アドリブを自ら演奏するためには、前提としてコード理論に関する知識が必要であり、さらに原曲のコード進行を知っていなければならない。前身のラグタイムから、ジャズ時代のニューオーリンズ、ディキシー、スウィングまでは、ジャズは大衆音楽だった。やがてチャーリー・パーカーディジー・ガレスピーらのビバップの時代となり、ジャズは即興音楽・芸術音楽として認識されるようになる[注釈 7]。1950年代後半におけるセシル・テイラーオーネット・コールマンらによるフリー・ジャズは、ほとんど規則性のない演奏だと言われるが、ブルースやアフリカ音楽に影響を受けたジャズ・メンもみられる。

フリー・ジャズの登場により、ジャズの即興演奏の幅が大きく広がり、1960年代には完全即興演奏によるジャズが大きく成長することになった。また、1985年ソニー・ロリンズニューヨーク近代美術館で、1時間近くに及ぶ無伴奏のサックス・ソロを即興で披露したコンサートは当時話題になった。

日本の大友良英+Sachiko Mのように、ノイズを大量に使った現代の自由即興演奏がジャズのカテゴリーに組み込まれることもある。ジャズで即興演奏をする奏者は、一般的にリフ(短いフレーズの繰り返し)をいくつも覚えていて、曲想やひらめきなどに応じて、リフを自在に組み合わせて演奏する。

ジャズにおいて、ディキシーランド・ジャズ・スタイルのリフを主に覚えている者たちの演奏と、ビバップ・スタイルのリックを主に覚えている者たちとでは、演奏の趣はまるで異なるが、たとえば同じディキシーランド・ジャズのリックを覚えている者同士の演奏の趣は、異なってはいるがなんとなく似たスタイルに聞こえる。専門用語が分野別に異なるように、リックもスタイルにより異なっているからである。

ライブ演奏か録音かにかかわらず、より高度なソロを演奏するために、あらかじめ演奏内容を作りこんで準備することがある。即興演奏とはいえなくなるが、それをそのまま演奏することにするか、作りこんだメロディからインスピレーションを得てある程度即興的なメロディを演奏するかは場合による。ともあれ、奏者が即興演奏に先立ち、綿密か大まかかにかかわらず、下準備をしてくることもしばしばある。
民族音楽の即興演奏

津軽三味線の伴奏では唄い手の即興に応じた演奏が求められ、「唄づけ」と呼ばれる。

インドの伝統音楽

ガムラン音楽

他の表現ジャンルとの共演

即興の融通性を活かして、映像や絵画、パフォーマンスなど異なるジャンルとのコラボレーションが行われることもある。

絵画における即興演奏

イヴ・クラインがヌードの女性3人の協力を得て、大型ボードに白とブルーのアートを表現した際に、楽団が演奏をつけている。

即興劇(インプロ)における即興演奏

演劇のジャンルの一つである即興劇(インプロ)の劇中では、演劇の内容も台本・打ち合わせが全くないため、BGMも即興で演奏される。主に使われるのはピアノ、キーボード、シンセサイザー、ギターなどであり、舞台のすぐ横、あるいは舞台上に楽器が設置され、専門のプレイヤー(即興ミュージシャンと呼ばれる)が演奏する。場面の展開にあわせて適切なBGMを即興で演奏しなければならないため、演奏者としての技術や音楽の知識のみならず、即興的に対応する能力が必要とされる。

身体表現と結びつく即興演奏

ダンス舞踏の表現者と即興演奏家の共演も見られる。決めごとの配分は様々で、全員が自由即興を行う事もある。最近では即興舞台芸術としての観点から、効果照明やビデオアート、ライブ・ペインティングが伴われることも多い。

言語表現と結びつく即興演奏

その場で作品を作りながら読む即興詩人も含めた詩人、作家の朗読と音楽の演奏の共演も見られる。また即興を行う歌手やヴォイス・パフォーマーの場合、音楽の形式のみならず自身の発する声と母語との結びつきも即興性を設定する際の問題となりうる。
関連項目

即興

ジャム (音楽)

和音(コード)

作曲家

編曲家

スキャット

ミニマル・ミュージック

フリージャズ

ジャム・バンド

脚注[脚注の使い方]
注釈^ エリック・カルメンはラフマニノフの曲をもとにした「オール・バイ・マイセルフ」を発表している
^ 無音の作品など、前衛的な作品を数多く発表した
^ 映画音楽や「死んだ男の残したものは」など、ポピュラー音楽も作曲した
^ 他のジャム・バンドにはロバート・ランドルフ、ギャラクティク、ソウライブらがいる
^ 1969年のアルバム『ライブ・デッド』など、即興演奏の作品も多い
^ 「ランブリン・マン」が1973年にヒットした
^ 1947年の『バード・アンド・ディズ』はビバップの誕生を告げたアルバムとして有名である

出典^ Leon Botstein, What makes Franz Liszt still important 2022年12月28日閲覧
^ Robert D. Levin|en Profile Philadelphia Chamber Music Society. 2022年1月7日閲覧










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