南極海
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何人かの学者は南極海は60度で分割されるのではなく、季節によって変動する南極収束線に合わせるべきと主張している[3]オーストラリアは、オーストラリア南岸以南のすべての海域を南極海に含めるべきと主張している[4][5]
概要

面積は約20,327,000km2で、最深部はサウスサンドウィッチ海溝南部のファクトリアン海淵で水深7,434m、平均深度は約4,000mである。

南極海は、南極大陸の周りを囲んでいる。時計回りにロス海アムンゼン海ベリングスハウゼン海スコシア海の一部、ウェッデル海、ラザレフ海、リーセルラルセン海、デービス海を含む。南太平洋南大西洋インド洋南部とつながっている。

南極海には、サウス・オークニー諸島サウス・シェトランド諸島スコット島バレニー諸島ピョートル1世島などの島々が存在する。

インド洋太平洋大西洋との明確な地理的境界はないが、南極前線が生物分布での境界線にあたる。なお地理上の南極圏は南緯66度33分から南であるため、南極海がすべて南極圏に属しているわけではない。

南極海が他の海洋から分かれたのは南極周回流ができた時だが、これは3000万年前に南極大陸と南アメリカ大陸が離れてドレーク海峡ができてからであり、極めて若い大洋である。それ以前は南極大陸まで暖流が届いていたので、今のような氷の大陸ではなかった。

南極海は南極前線以北の海域よりも水温は2 - 3℃低く、塩分濃度も高いので、浅海に棲息する生物は南極海と北側の海との間を行き来することができない[6]。そのため、南極海には独特な環境に適応し独自の進化を遂げた生物が多く、北側の海とは大きく異なる南極の生態系が形成されている。

地球上の海洋の中では非常に冷たい(海水の氷点より高い-1.9℃以上)が、陸上の気温と比べると遥かに暖かい。そのため、多様な生物の姿が見られる。南極の真冬の気温は-20℃から-30℃だが、水温は0℃近くなので、温度差は20℃、場合によっては30℃にもなる。季節変化のサイクルに応じてプランクトンが増減する。

南極海の上空では、南緯60度付近に亜寒帯低圧帯が形成される。一方、南極大陸上空では氷床によって空気が冷やされるために極高圧帯が形成され、ここから強烈な寒気が北の亜寒帯低圧帯に向かって吹き込む。さらに南極海には北半球と違ってこの風を和らげるような巨大な陸地が存在しないため、南極海北部は絶叫する60度と呼ばれるほどの猛烈な嵐に見舞われることが多い。なお、この寒気は南極海以北にも影響を与え、狂う50度吠える40度と呼ばれる暴風圏を作り出す[7]

南極海には、世界最南端の火山であるロス島のエレバス山や、サウスシェトランド諸島にあるデセプション島など、いくつかの火山が存在する。デセプション島は火山の山頂部のカルデラがそのまま水没して縁の部分のみ残ったものであり、C字型の島の内湾は火口であるため、地底から湧き出る熱水と地熱によって冬でも凍結せず、また島が周囲の強風から内湾を守るために、南極海において最も優れた良港となっている。そのため、かつてはアザラシやクジラ猟の拠点として多くの漁業会社が基地を置いており、会社撤退後も観測基地がおかれていたが、1967年にデセプション島が噴火して大きな被害を受けた。デセプション島は、1969年から1970年にかけても再び噴火した[8]。また、デセプション島においては湧き出る温泉によって海水が温められるため、温泉の湧きだし口のそばでは温泉浴や海水浴が楽しめる[9]。ただし、周囲の海水は南極海の標準水温であり、また温泉はかなりの温度があるため、混合を誤ると極寒や灼熱となる。
氷山と棚氷ウィルキンス棚氷の位置と2008年に崩壊した様子

南極海の南岸はすべて南極大陸となっているが、南極大陸の海岸の多くは氷で覆われており、岩石が露出しているのは全海岸の5%にすぎない。13%は氷河、38%は氷床がそのまま壁となっている氷壁であるが、最も多い44%の海岸は棚氷となっている。棚氷は南極を覆う氷床が海の上にそのまま張り出したものであり、陸上の氷と連結している。棚氷の厚さは数十mにも達する。棚氷で最も大きなものはロス海に浮かぶロス棚氷 (472,960 km2)であり、ついでウェッデル海の南側を覆うフィルヒナー・ロンネ棚氷 (422,420 km2)が大きい。この2大棚氷は突出して大きな棚氷であるが、他にも南極大陸沿岸にはアメリー棚氷 (62,620 km2)、ラーセンC棚氷 (48,600 km2)、リーセル・ラーセン棚氷 (48,180 km2)、フィンブル棚氷 (41,060 km2)、シャクルトン棚氷 (33,820 km2)、ジョージ6世棚氷 (23,880 km2)、ウエスト棚氷 (16,370 km2)、ウィルキンス棚氷 (13,680 km2)といった大きな棚氷が存在する。これらの棚氷は、末端部分は海に浸食されてやがて棚氷から分離し、氷山となる。氷山はなにかの衝撃で末端部分が崩壊してできることがあり、東日本大震災時にも南極大陸に到達した津波の衝撃によって巨大氷山が南極海に流出している[10]

20世紀末以降、地球温暖化の影響などで南極各地で棚氷の崩壊が観測されるようになってきている。上記のラーセンC棚氷はかつてラーセン棚氷(ラルセン棚氷)と呼ばれる一つの巨大な棚氷だったが、1995年1月にラーセンA棚氷が崩壊、2002年2月にはラーセンB棚氷の半分が崩壊し、2012年にはラーセンB棚氷の85%が消滅していることが明らかになった[11]。これにより、ラーセン棚氷はほぼラーセンC棚氷が残存するのみとなった。2008年にはウィルキンス棚氷の末端部が急速に崩壊しつつあることが確認され、南極半島とは細い氷床でつながっているだけとなっていたが[12]、2009年4月5日には南極大陸からの分離が確認され、棚氷ではなくなった[13]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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