南極海
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また、南極海沿岸のほとんどは氷におおわれているため、波による海岸の浸食がほとんど存在しないことも特徴である[20]
探検史

人類史上初めて南極海を周航したのは、ジェームズ・クックである。彼は1772年から1775年にかけての第2回航海で英国軍艦レゾリューション号を指揮して南極海を周航し、1773年1月17日にはヨーロッパ人としてはじめて南極圏に突入し、南緯71度10分まで達したが、南極大陸を発見することはできなかった。しかし彼の航海によって、南方の未確定領域は大幅に狭められ[21]、伝説の南方大陸(テラ・アウストラリス、メガラニカ)は存在しないことが明らかとなった[22]。クック自身は、氷山の形状などから彼が探検した海域の南方には大陸があることを予想していた[23]が、それは人類が居住できるようなものではないことも予測していた。また、クックはこの海域にクジラアザラシが多く生息していることを報告し、そのため1790年代以降にはこの海域にはアザラシ漁師たちが出没するようになった。初期の南極海探検において、こうしたアザラシ漁師たちは重要な役割を果たした。1819年にはイギリスのウィリアム・スミスがサウス・シェトランド諸島を発見した。これは、南緯60度以南においては初の陸地の発見であった。

1820年には人類は南極海を越え、南極大陸が発見された。この発見者はロシア海軍のファビアン・ゴットリープ・フォン・ベリングスハウゼン、イギリス海軍のエドワード・ブランスフィールド、アメリカ人アザラシ漁師のナサニエル・パーマーの3人のうちいずれかとされる。いずれか、というのは、この三人はほぼ同時に南極大陸を発見しており、発見日に数日程度のずれしか存在しないため、正確な発見者の確定ができないためである。また、この際ベリングスハウゼンは南極海をクックよりも高い緯度で周航している。1821年にはパーマーとイギリスのジョージ・パウエルがサウス・オークニー諸島を発見した。1830年代から1840年代初頭にかけては、ジョン・ビスコー、ジョン・バレニー、チャールズ・ウィルクスジュール・デュモン・デュルヴィルジェイムズ・クラーク・ロスといった探検家たちが南極海を航行し、多くの発見を成し遂げている。ウィルクスの航海によって南極大陸の海岸線の70%程度はほぼ確定し、ロスはエレバス山やロス棚氷などを発見している。

1874年にはチャレンジャー号探検航海中のチャレンジャー号ケルゲレン諸島から南極海へと突入し、調査を行った[24]

ここまでの調査は南極海の調査というより南極全般の調査であったが、南極海を専門の対象とした調査は、1925年にイギリスによって開始されたディスカバリー号調査を嚆矢とする。この調査は第二次世界大戦の勃発まで10回にわたって行われ、南極海のデータを収集するのに大きな役割を果たした[25]

1940年代以降、複数の国家が南極海および南極の領有を宣言するようになり、1952年には南極海最良の港であるデセプション島において、領有を主張するイギリス軍とアルゼンチン軍の間で発砲騒ぎも起きている[26]。一方、第二次世界大戦後、チリやアルゼンチンなど数か国が南極に観測基地を設置していたが、1957年から1958年にかけての国際地球観測年によって参加各国が南極大陸の海岸にまんべんなく南極観測基地を設置し、協力体制が構築された。これを踏まえ、1959年には南極条約が採択され、南緯60度以南における領土主張はすべて凍結された[27]
名前について

南極海という言葉は、長年、南極周辺の海を指す非公式な名だったが、国際水路機関 (IHO) が2000年に大洋と認定する草案が採択された(正式な採用には至っていない)[28]。これは、近年の海洋学において海流の重要性が確認され、南極周回流によって一つに結ばれている海域を他の大洋から独立させることに科学的根拠が生まれたからである。IHOの決議では、加盟68国のうち28国が投票し、アルゼンチンを除く27国が新しい大洋の設定に賛成した。18国が Southern Ocean に投票し、別名の Antarctic Ocean を破ったので、前者に決まった。
人文地理南緯60度以南における領有権主張(面積順)。主張のいくつかは地域が重複している : .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  オーストラリア  ノルウェー  イギリス  チリ  アルゼンチン  ニュージーランド  フランス

南緯60度以南が南極海の海域となっているが、この範囲はそのまま南極条約の適用範囲と一致するため、南極海において各国の領土は存在しない。ただし、南極条約は各国の領土主張を凍結しているのみであるため、南極海内の諸島を自国領と主張している国家は複数存在する。サウス・オークニー諸島はイギリスアルゼンチンが、サウス・シェトランド諸島はイギリス・アルゼンチン・チリが、スコット島とバレニー諸島はロス海属領の一部としてニュージーランドが、ピョートル1世島はノルウェーがそれぞれ領有権を主張している。また、南極海沿岸の南極大陸においても、イギリス(イギリス領南極地域)、オーストラリア(オーストラリア南極領土)、ニュージーランド(ロス海属領)、フランスアデリーランド)、ノルウェー(ドロンニング・モード・ランド)、チリ(チリ領南極)、アルゼンチン(アルゼンチン領南極)の7か国がそれぞれ領有権を主張している。


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