ボルツァーノ自治県(ボルツァーノじちけん、イタリア語: Provincia autonoma di Bolzano)は、イタリア共和国トレンティーノ=アルト・アディジェ特別自治州に属する県。県都はボルツァーノ。
歴史的にティロルと呼ばれた地域の一部で、南ティロル(ドイツ語: Sudtirol ズュートティロール)とも呼ばれる。ドイツ語を母語とするドイツ系(バイエルン系、アレマン系の一部)住民が人口の半分以上を占めるほか、ラディン語(レト・ロマンス語群の言語)の話者もおり、3つの公用語を併用する県である。 画像外部リンク
名称
Sudtirol と Alto Adige の範囲の変遷
Sudtirol の語が指し示す領域の変遷
Alto Adige の語が指し示す領域の変遷 (イタリア語版Wikipedia)
県名の正式表記は、3つの公用語で以下のようになる。
ドイツ語: Autonome Provinz Bozen - Sudtirol
イタリア語: Provincia autonoma di Bolzano - Alto Adige
ラディン語: Provinzia autonoma de Balsan/Bulsan - Sudtirol
この地域は、ティロル地方の南部に位置することから南ティロル(標準ドイツ語・アレマン語: Sudtirol ; バイエルン語: Sidtiroul)とも呼ばれる。歴史的に、Sudtirol という語が指し示す範囲は一様ではなく(トレント自治県#名称も参照)、現在のトレンティーノ=アルト・アディジェ特別自治州全体を指して用いることもあれば[3]、おおむね現在のトレント自治県の領域を南ティロル、ボルツァーノ自治県の領域を中ティロル(Mitteltirol)と呼ぶこともあった[4]。トレンティーノ=アルト・アディジェ特別自治州全体の領域を南ティロルと呼ぶ場合、トレント自治県の領域を「ヴェルシュ(イタリア人)の南ティロル」 Welschsudtirol と呼ぶのに対して、ボルツァーノ自治県の領域を「ドイツ人の南ティロル」 Deutschsudtirol とも呼んだ[3]。ボルツァーノ自治県の領域を Sudtirol とする呼び方は、1972年にボルツァーノ自治県とトレント自治県が自治権を得た際に確立された。
イタリア語では、「アディジェ川上流」を意味するアルト・アディジェ(Alto Adige)の名でも呼ばれる。この Alto Adige という地域名称が指し示す範囲も18世紀末以来変遷がある。この地名はナポレオンの時代、チザルピーナ共和国において郡の名として用いられたのが最初であるが、これは現在のヴェローナ県の一部にあたる。1810年、ナポレオンのイタリア王国が設置したアルト・アディジェ県 (Department of Alto Adige) はトレントを県都とする、おおむね現在のトレント自治県と重なる領域を管轄する行政区画で、現在のボルツァーノ自治県南部(ボルツァーノ周辺)もここに含まれていた。第一次世界大戦後にこの地域がイタリア領に編入されると、ティロル伯国に由来する広域地名としてのティロルは(伯国発祥の地としてのティローロはボルツァーノ自治県内にあるが)忌避され、ファシスト政権によるイタリア化政策の中で Alto Adige が使われるようになった。
地理
位置・広がりユーロリージョン「チロル=南チロル=トレンティーノ」を構成する3地域 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{} チロル州(北チロル・東チロル)
( オーストリア) ボルツァーノ自治県(南チロル)
( イタリア) トレント自治県(トレンティーノ)
( イタリア)
トレンティーノ=アルト・アディジェ特別自治州に属する2つの県のうちの北側の県で、イタリア共和国最北端の県でもある。県都ボルツァーノは、州都トレントの北北東約51km、インスブルックの南約86km、サンモリッツの東約116km、ヴェネツィアの北北西約139kmに位置する。
県域は東西に長く、面積は約 7,400 km2 とイタリアの県の中で最大である[注釈 1]。北から東にかけてオーストリアと、西にスイスと、それぞれ境界を接する。トレント自治県も含めた広義のティロル地方の中央に位置するが、この広域地名は本県中西部のメラーノ近郊に位置するティローロ(ドイツ語名: ドルフ・ティロール)が発祥の地となっている。
隣接する県、およびそれに相当する行政区画は以下の通り。
インスブルック=ラント郡(英語版) (オーストリア・ティロル州) - 北
シュヴァーツ郡 (ティロル州) - 北東
ツェル・アム・ゼー郡 (オーストリア・ザルツブルク州) - 北東
リエンツ郡 (ティロル州) - 東
ベッルーノ県 (ヴェネト州) - 南東
トレント自治県 - 南
ソンドリオ県 (ロンバルディア州) - 南西
イン郡(英語版) (スイス・グラウビュンデン州) - 西
イムスト郡 (ティロル州) - 北西
地勢ボルツァーノ/南ティロル自治県 (地名表示はドイツ語)
河川と谷筋
県域のほとんどはアディジェ川(独: エッチュ川)の流域である。イタリアで2番目に長い川であるアディジェ川は、県北西部のレッシェン峠付近に源を発し、メラーノやボルツァーノの市街を流れる。
県北東部から流れ下るリエンツァ川(独: リエンツ川)は、ブレッサノーネにおいて、ブレンネロ峠付近から流れるイザルコ川(独: アイザック川)を合わせ、ボルツァーノでアディジェ川に合流する。
県東端部のドッビアーコ付近を流れるドラーヴァ川はドナウ川水系に属しており、東へオーストリア領の東チロル(リエンツ郡)に流れ下る。
峠
アルプスを越える著名な峠として、オーストリアのチロル州へ越えるブレンナー峠(伊: ブレンネロ峠、1375m)がある。この峠はブレッサノーネからイザルコ川をさかのぼったブレンネロに所在し、北にインスブルック(オーストリア・チロル州州都)に至る。この峠には高速道路や鉄道が通り、現代もティロル地方の南北、イタリアとオーストリアを結ぶ重要な交通路である。
ブレンナー峠のほか、県北側のオーストリア国境には、メラーノからヴァル・パッシーリア (it:Val Passiria) を上りモーゾ・イン・パッシーリアからエッツタールへと降りるティンメルスヨッホ(英語版)(2474 m)、アディジェ川最上流部のヴァル・ヴェノスタ(イタリア語版)からランデック郡(チロル州のイン川最上流部)へ越えるレッシェン峠(レージア峠、1504m、古代のクラウディア・アウグスタ街道)などの峠がある。