半導体レーザー
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発光ダイオードと同様に、基本的な発光色は半導体内部の電荷(励起状態電子と正孔)が再結合する時のバンドギャップエネルギー差によってほぼ決定される。光学半導体として良好に機能する元素の組み合わせは限られるために、発光色はまばらに存在しており、幾つかの波長領域は不得意である。赤色や青色の半導体レーザーは量産されているが、黄色や緑色、中赤外線 (2-5μm) は実用的な発光効率を得るのが困難な傾向にあり、そのような波長ではガスレーザーなど半導体以外の材質が用いられることが多い。それでも新たな技術が開発されることで、半導体レーザーの発光色は広がり発光効率も向上している[4]

窒化ガリウムによる半導体レーザーの実現により、直接発振での紫外線-紫-青-青緑の発光が可能になっている( ⇒製品ラインアップの例)。窒化ガリウム製のレーザーは量産の難しさから比較的高価格であるが、青色の物は日亜化学工業に続いてソニーなどが生産しており、ゲーム機やBlu-ray Discなど民生品にも利用されている。

長波長の半導体レーザ光から短波長のレーザ光を発生させる手法としては、高調波発生(SHG,THG,FHGなど)も用いられ、光ピックアップなどに応用されることがある。

住友電気工業ソニーは共同で、従来、困難だった高出力の純緑色半導体レーザーを開発した[5]

有機半導体レーザー詳細は「有機半導体レーザー」を参照

近年では無機半導体と比較して高い分子設計自由度を特徴とする有機半導体の特徴を利用したレーザーの研究が進められ、2000年7月にベル研究所で発振に成功したと伝えられたが、これは後に捏造であると判明した[6][注 6]。その後も他の研究機関や大学で研究は継続され、徐々に成果が出つつある[7][8][9][10]
応用

他のレーザーと比べ、小型で消費電力が少なく安価に製造出来るため、民生分野の情報機器などで広く用いられている。
CDDVDBD等の光学ドライブの光ピックアップ、コピー機レーザープリンター光ファイバーを用いた通信機器などに利用されている。

高出力なものは1個の素子で5W以上、複数の素子を束ねたアレイとすることで数十Wの出力を持つ 例 や、数十kWもの出力を持つ ⇒ もある。こうした超高出力製品はレーザーマーカーやレーザー加工機などに応用される。

レーザー光のもつ拡散しにくく遠距離まで届く性質から、測量機器や、物を指し示すための目印として使用するレーザーポインターとしても利用され、特に低出力赤色半導体レーザー素子の小型化・低電力化・低価格化と共に広く普及した[注 7]

PC用のマウスは通常は安価なLEDが用いられるが、半導体レーザーを用いたものは「レーザーマウス」と呼ばれ、ハイレンジに属するマウス製品も作られている[注 8]

歯科用レーザーとしては比較的安価であるために、この半導体レーザーを用いた装置が日本では最も普及している。

フォトレジストの光源としてデジタル・イメージングでの走査露光を行う場合に用いられる。主な用途は、平版印刷版プリント基板である。

脚注
注釈^ IUPACでは、「半導体レーザー」はなく、「ダイオードレーザー」という用語を推奨している。
^ 出射する光の形、つまり光量の広がりの形状は、素子のレーザー出力部直近のものがNFP(Near Field Pattern) と呼ばれ、出力部より数cm離れたものがFFP(Far Field Pattern) と呼ばれる。NFPとFFPで90度ねじれる。
^ 半導体による光の増幅は可能だが、荷電キャリアの吸収によるフォトンの損失で実現できないだろうと、エドワード・テラージョン・バーディーンなどに語っている。
^ このときの発明の名称は「半導体メーザー」となっているが、赤外線の増幅を意図したものであった。この特許出願に記載の、半導体への自由キャリアの注入によって再結合放射(発光)を起こす機構は半導体レーザーでも用いられる。
^ この特許権は後年否定された。
^ これに関しては ⇒その真偽に関する調査がおこなわれた
^ 長波長の半導体レーザ光で発振用の結晶(レーザー結晶)を励起することで輝度の向上を試みたり、あるいは非線形光学効果の応用により波長変換を施し、短波長のレーザ光を得る手法(SHGなど)により、可視光レーザー光を発する製品も市販されている。
^ レーザーのコヒーレンス性(可干渉性)を利用して、微細な凹凸を敏感に検出することで感度を上げることができるとされる。

出典^ a b c 安藤幸司著、『半導体レーザーが一番わかる』、技術評論社、2011年6月25日発行、ISBN 978-4-7741-4653-9


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