千年女優
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『千年女優』は前作『パーフェクトブルー』で高い評価を得た今敏監督の二作目の映画で、初のオリジナル作品[7][8]丸山正雄が企画を、真木太郎がプロデューサーを務めた[9]

今作の企画は、前作を見てプロデュースすることになった真木太郎の「騙し絵みたいな映画を作ろう」という一言から生まれた[7][10]。脚本作りは、今が思い付いた「かつて大女優と謳われた老女が自分の一代記を語っているはずが、記憶は錯綜し、昔演じた様々な役柄が混じりはじめ、波瀾万丈の物語となっていく。」という一文から始まった。この一文をもとに今が肉付けして書いた大まかなプロットが原案となり、この段階で物語の最初と最後を形作る構成は決まった[8]。この時点で映画のラストシーンがイメージされ、完成した映画にそのまま残っている[11]。そしてシナリオライターの村井さだゆきやプロデューサーも交えてそのプロットの中に盛り込むエピソードや細かな人物設定などを膨らませて行った[11]

「元々あった企画を料理する」という雇われ監督的な面があった前作と違い、オリジナル企画である今作では自分の意見を言うことが出来たため、音関係、特に音楽に比重を置いて製作に挑むことに決めた。そこで、かねてからファンであった平沢進に音楽を依頼した[12]

スタッフは総勢250人ほどで、製作期間は約2年間[11]。20人ほどのメインスタッフの顔ぶれはほとんど前作と同じで、その中で作画監督だけが変わっている。『パーフェクトブルー』ではキャラクターデザイン江口寿史、作画監督は濱洲英喜だったが、本作ではキャラクターデザインと作画監督に本田雄が起用された[12]。これは、作画監督は非常に重要なポジションで負荷がかかる立場でもあり、また今が作画監督を頼みたいと思うような技量や能力を持ったアニメーターは得てして作監よりも原画を描く事を好む人が多いので、続けて依頼するのは難しいという事情があるためである[12]。またキャラクターデザインも、「アニメ絵」というだけで一般の人々には眉をひそめられる傾向があるので、アニメーション映画を一部のファンだけのものでは終わらせないために、「上品で押しつけがましくない絵を描き、純粋にアニメ業界の中で才能を持つ人を」ということで本田が選ばれた[12]。また一部のキャラクターデザインは今自身が手掛け、劇中に登場する千代子のポスターも今が描いている[13]

本作はセルアニメで作られ、ほとんどが今のレイアウトを基に作画されている[13]

予算は当初、1億3千万円で、最終的には1億数千万円という日本の劇場アニメーション作品としては最低ランクの制作費で作られた[14]

北米でもドリームワークス系のゴー・フィッシュ・ピクチャーズの配給で2003年9月12日に公開され、劇場数は6スクリーン、興行収入は3万7641ドルだった[15]。公開規模は決して大きくないが、日本の劇場アニメの米国公開がまだ難しい時代であり、今の才能を知らしめるのには大きな役割を果たした[15]。劇場公開のメリットは興行収入だけでなく、批評家が鑑賞して一般新聞や雑誌・サイトに批評やレビューが掲載されることにもあり、そのことで作品の認知度が上がり、アニメファン以外の層にも到達する[15]。その効果で海外での今敏の映画監督としての評価が確固たるものになり、アニメーションのアカデミー賞と呼ばれるアニー賞でも、最優秀長編アニメーション賞・監督賞・脚本賞・声優賞にノミネートされた[15]
作品のテーマ

「千年女優」は「前作『パーフェクトブルー』みたいな『だまし絵』のような映画を」というリクエスト(しかし、あくまで映画の手法ということであり、映画の中心的テーマというわけではない)が出発点で、両作品は今的にはいわばコインの裏表のような姉妹的な存在だという[12][16]。前作では人間のネガティブな面に、今作ではポジティブな面にそれぞれスポットを当てているが、どちらも「虚実を曖昧にする」という方法論は共通している[16]。今作は、前作で試みたその方法論を発展させるというところからスタートし、それを表現するにはどういう内容が相応しいかという形で考えられたものだからである[16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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