十二指腸潰瘍
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約10%の人が、人生のある時点で消化性潰瘍を発症する[9]。2015年には消化性潰瘍によって267,500人が死亡したが、1990年の327,000人から減少している[10][11]。穿孔性消化性潰瘍の最初の記述は1670年にイギリスのヘンリエッタ姫であった[4]。 20世紀後半にはバリー・マーシャルロビン・ウォレンにより初めて、H. pyloriが消化性潰瘍を引き起こすことを確認され[7]、これにより 2005年にノーベル賞を受賞した[12]十二指腸潰瘍凝血が付着した十二指腸潰瘍 A2ステージ.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
名称

潰瘍の生じる部位別に旧来通り以下の通りに称される。

胃潰瘍(gastric ulcer、stomach ulcer)

十二指腸潰瘍 (duodenal ulcer)

食道潰瘍(esophageal ulcer、胃食道逆流症を参照)

デュラフォイ潰瘍: ulcere de Dieulafoy)
比較的小さな潰瘍であるが大出血を生じる潰瘍として1898年にフランスの外科医Paul Georges Dieulafoyが報告したもの。粘膜浅層の血管の走行上部にちょうど潰瘍が生じることで、小さく浅い潰瘍でも血管破綻を生じ大出血する潰瘍。

急性胃粘膜病変(AGML:acute gastric mucosal lesion)

急性十二指腸粘膜病変(ADML:acute duodenal mucosal lesion)

徴候と症状胃潰瘍

消化性潰瘍の徴候および症状は、以下の1つ以上を含みえる

腹痛、古典的な心窩部、食事時間と強く相関する。十二指腸潰瘍の場合、痛みは食事を取ってから約3時間後に現れ、睡眠から患者を目覚めさせる。

膨満感、腹部の膨張感。

流涎 (逆流による食道の酸を希釈するエピソード後に唾液ラッシュ。これは胃食道逆流症に関連する)

悪心と嘔吐

胃潰瘍による食欲不振と体重減少。

十二指腸潰瘍による体重増加。痛みは食べることによって緩和されるため。

吐血(血液の嘔吐)。胃潰瘍からの直接出血や重度/継続的な嘔吐により、食道が損傷するために発生しうる。

タール便(ヘモグロビンからの酸化鉄の存在による黒色・悪臭の血便)

まれに消化性潰瘍は、胃または十二指腸穿穿を引き起こす可能性がある。これは急性腹膜炎と極端な刺すような痛みとなり、[13]、緊急手術を必要とする。

既往歴に胸焼け胃食道逆流症(GERD)や、特定薬の使用があった場合、消化性潰瘍の疑いが高まる。消化性潰瘍に関連する医薬品にはNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)が含まれる。

上記症状が2週間以上を有する45歳以上の人々では、消化性潰瘍のオッズは、食道胃十二指腸内視鏡検査による迅速な調査を保証するのに十分高い。

食事に関連する症状のタイミングは、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を区別しうるかもしれない。胃潰瘍は食べ物が胃に入るにつれて胃酸発生量が増加するため、食事中に吐き気や嘔吐に関連する上胃痛を与えるだろう。十二指腸潰瘍の痛みは空腹によって悪化するため、食事によって緩和され、これは夜の痛みに関連する[14]

また消化性潰瘍の症状は、潰瘍の位置や年齢によって異なる場合がある。さらに典型的な潰瘍は治癒し再発する傾向があり、その結果痛みは数日と数週間に起こり、その後衰えたり消えたりする[15]。小児や高齢者は、合併症が起きなければ通常は症状がない。

30分から3時間程度続く胃の部分の灼熱感、かじり感は、一般的に潰瘍に伴うものである。この痛みは、空腹、消化不良、胸焼けと誤解される可能性がある。痛みは通常は潰瘍によって引き起こされるが、胃酸が潰瘍領域に接触すると、それにより悪化する可能性がある。消化性潰瘍によって引き起こされる痛みは、臍から胸骨までどこでも感じることができ、数分から数時間続く可能性があり、胃が空のときに悪化しうる。また夜間に痛みが燃え上がることもあるし、胃酸を緩衝する食品を食べたり、抗酸薬を服用したりすることで一時的に緩和できることもある[16]。しかし消化性潰瘍疾患の症状は、すべての患者に異なりうる[17]
要因

リスクファクターは主に胃粘膜保護の減少である防御因子の低下を助長するものであり、以下が知られている。
ヘリコバクター・ピロリ

ヘリコバクター・ピロリ(H. Pylori)保菌者が多く、比較的若年者に多い。H. Pyloriが胃前庭部に潜伏し始め、持続的にガストリン分泌刺激が促され胃酸分泌過多を生じることによって生じるとされている。十二指腸潰瘍は食前・空腹時に痛みが増悪することが知られているが、摂食刺激によってセクレチンが分泌されガストリン分泌が抑制され胃酸分泌が少なくなるためと考えられている。
NSAID詳細は「NSAID潰瘍」を参照

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、non steroidal anti-inflammatory drugs)は鎮痛薬抗血小板剤として広く用いられCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素を阻害する作用を有し、このうちCOX-1が阻害されることで胃粘膜防御因子のPGE2(プロスタグランジン)産生低下が生じ、潰瘍を生じやすい。COX-2のみを選択的に阻害するNSAIDsでは比較的生じにくい。
ストレス

ストレスはストレス潰瘍として、集中治療室での治療を必要とするなどの深刻な健康問題となりえており、消化性潰瘍の原因として認知されている[5]

かつては慢性的な生活上のストレスが潰瘍の主な原因であると考えられていたが、これはもはや事実ではない[18]。しかしいまだに、それは原因となっていると信じられている[18]。これはストレスは、胃の生理機能に影響をおよぼし、さらにH. pyloriやNSAIDの使用など、他のリスクファクターを高めることが十分に実証されているためであろう[19]
食生活

スパイスなどの食事要因は、20世紀後半まで潰瘍を引き起こすと仮定されていたが、現在は重要性が比較的低いことが示されている[20]カフェインコーヒーは、一般に潰瘍を引き起こすまたは悪化させると考えられているが、ほとんど効果がないと考えられている[21][22]。同様にアルコール摂取は、H. pylori感染者についてはリスクを増加させることが研究により判明しているが、単体でリスクを増加させるとは考えられていない。H. pylori感染と組み合わされた場合でも、その増加は主要な危険因子と比較してわずかであった[23][24]
その他

ステロイド
旧来よりステロイド(一般に糖質コルチコイド製剤)使用にて消化性潰瘍発症が高くなると言われていたが、近年のメタアナリシス報告で潰瘍発症の有意差は無いことが指摘され、ステロイドは消化性潰瘍のリスクファクターではないことが証明されてきた。
診断
鑑別疾患

胃炎

胃がん

胃食道逆流症

膵炎

ニクズク肝

胆嚢炎

胆石発作

心筋梗塞

関連痛 (胸膜炎心膜炎)

上腸間膜動脈症候群

血液検査

出血があれば貧血(Hb・RBC低下)が認められ、持続消耗性出血による小球性低色素性貧血(MCV低下)を呈してくる場合が多い。大量出血である場合には貧血があっても、MCV低下がみられないこともある。また活動期の出血の場合、胃内に蛋白成分が漏出し蛋白異化による尿素窒素(BUN)が高くなることでBUN/Cr比の上昇が認められ臨床的に出血兆候の指標として用いられる。
内視鏡検査胃前庭部の多発胃潰瘍。潰瘍表面を覆うのは「白苔」と呼ばれる壊死物質。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の診断・治療において上部消化管内視鏡が基本となってくる。


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