十二国記
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小野は、十二国記のような物語は、ファンタジーというより神話や歴史絵巻の様なものだと考えているという[6]。本シリーズは少女小説としては珍しく、理想の政治を考えるというような、中国歴史小説ものに近い受け止められ方もあるようである[3][7]。とはいえ、十二国間では天が定めたとされる摂理により侵略が許されないため(これを破ると王は死ぬ)、商業面以外の外交は必要なく、現実の政治とはかけ離れている[3]

元々小野は講談社X文庫ティーンズハートという少女小説レーベルで少女小説を書いており、読者の少女たちにファンレターで悩みを打ち明けられることがあった[6]。小野は、しいて言えばこの読者たちが陽子の原型であり、『月の影 影の海』は読者への返信の代わりであると述べている[6]。『月の影 影の海』は、少女向けとしてはあまりに重すぎるということで一度は没になり、紆余曲折があって出版された[6]。無理やり異世界に連れてこられた少女が、苦難に満ちた冒険の末に自分の居場所を見出すというこの物語は、「自己を探求し、真に帰属すべき場所を見出す」というファンタジーにおける大きなテーマが描かれており[3]、重すぎる、難しすぎるのではという出版社の一部の懸念に反して読者の少女たちの反応は好評だった[6][8]。人気により同一世界を舞台とする作品が増え、徐々に綿密な世界観が明らかにされていき、シリーズになった。主役は各話によって異なっており、日本の女子高生であったが十二国の世界に連れもどされ慶国の王となった陽子、陽子と同時代の日本に生まれたが戴国の麒麟であった泰麒(蒿里)、戦国時代の武家の跡取りであったが雁国の王となった尚隆、室町時代の貧民の子どもで延国の麒麟であった延麒(六太)など、胎果のキャラクターを中心にストーリーは展開する。シリーズの刊行は時系列ではなく、『ナルニア国物語』のように時代が前後しながら、様々な場所を舞台に物語が進んでいく。おもしろい物語と魅力的なキャラクターを持つこのシリーズは、普段ティーンズ向け作品を読まない層までファンを拡大させていった[3][7]。1996年には週刊誌の書評コーナーで評論家の北上次郎が『図南の翼』を絶賛し、2000年には雑誌『幻想文学』で評論家の石堂藍が紹介するなど、注目を集めた[8][7]

2021年9月時点でシリーズ累計発行部数は1280万部を突破している[9]。「ダヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2020」小説ランキング50では1位を獲得している[10]。また、2002年にNHKテレビアニメ化されている。

2001年7月以降シリーズ新作は久しく発表されていなかったが、『yom yom vol.6』(2008年2月27日発売)にて、約6年半ぶりとなる新作短編、十二国記シリーズ番外編「丕緒(ひしょ)の鳥」が掲載され、同誌vol.12(2009年9月27日発売)にて、柳国を舞台とした短編「落照の獄」が掲載された。
出版社・レーベル

当初講談社X文庫ホワイトハート[注 1]から発刊されたが、読者層が成人層へ拡大し、2000年から一般向けの講談社文庫からイラストなしで刊行された。少女小説が一般の文庫に引き入れられた例はそれまでになく、少女小説の世界で同シリーズは非常に破格の作品であった[7]

シリーズ誕生のきっかけとなった講談社の担当編集者が新潮社に転職して文庫編集部に配属されて、そのまま作者の担当者になり、2012年4月にシリーズが講談社から新潮社に移籍し、一般向けの新潮文庫から完全版が刊行される運びとなった[11]。同年7月以降、既刊の新装版、新作を含む短編集、新作長編が順次刊行された。これまで別作品という形だった『魔性の子』が、Episode-0巻としてシリーズの中に統合された。完全版の表紙・挿絵はホワイトハート版と同じ山田章博。詳細は#シリーズ全体の構成を参照。
シリーズ名

このシリーズは現在では公式に「十二国記」と呼ばれて表紙・カバーなどにも明記されている。しかし当初はこのような表記はされておらず正式な名称は無かった。「十二国記」というシリーズ名が付されるのは1994年9月に出版された『風の万里 黎明の空(下)』以降のことである。1994年6月の『東の海神 西の滄海』の著者による後書きには、シリーズ名はないが、読者はおおむね「十二国」と呼んでおり、自分も呼びやすいのでそう呼んでいるとある。「ダ・ヴィンチ」2003年7月号の著者インタビューによると、シリーズ名が付けられたのは編集部からの要望によるものである。
シリーズ全体の構成

新潮文庫刊行の『魔性の子』以外は、全て講談社X文庫ホワイトハートおよび講談社文庫。ホワイトハート版のイラストは山田章博が担当。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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