医師
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平均年齢は48.9歳[10]。近年では医学部に進学する女子が飛躍的に増え、29歳以下の若い医師は3人に1人が女性である[11][12]。医学部の一学年の女性の割合が半数近い大学も存在する。一方で、入学試験において女子学生を不利に扱う大学も存在する(2018年に発覚した医学部不正入試問題)。

様々な研究により、女性医師の方が男性医師よりも良い結果を出す傾向にあると報告されている[13]。また、医師と患者の性別が異なると手術のリスクも増加する。特に女性患者において顕著であり、女性医師の場合に比べて男性医師の場合は死亡リスクが32%高くなる。

一方で、出産育児のバックアップ体制が整っていない面が多分にあり、仕事を続けながら出産・育児が困難であり結婚・出産とともに退職する女性医師もいまだ多い。出産・育児により職場を離れた女性医師に対し働きやすい環境を整え、医療の場に戻す方策が始まっているとはされるが、2006年頃より地方の医師不足が顕著になり始めている一方で都市部では過剰傾向にあり、倒産廃業に追い込まれる開業医も少なからず存在する。
就業場所

医師のおおよそ6割は病院で、3割は診療所にて就業している[10]

施設・業務の種別にみた医師数(平成24年)[10]人数(千人)割合(%)総人口10万対
総数男女計303.3100.0237.8
男243.680.3191.1
女59.619.746.8
医療施設の
従事者小計288.995.2226.5
病院の従事者188.362.1147.7
病院(医育機関附属の病院を除く)の
開設者又は法人の代表者5.41.84.2
病院(医育機関附属の病院を除く)の勤務者132.543.7103.9
医育機関附属の病院の勤務者50.416.639.5
うち、臨床系の教官又は教員27.08.921.2
うち、臨床系の大学院生5.41.84.2
うち、臨床系の勤務医18.05.914.1
診療所の従事者100.533.278.8
診療所の開設者又は法人の代表者72.223.856.6
診療所の勤務者28.49.422.3
老健施設
従事者小計3.21.12.5
老健施設の開設者又は法人の代表者.40.10.3
老健施設の勤務者2.80.92.2
医療施設・老健施設
以外の従事者小計8.62.86.8
医育機関の臨床系以外の大学院生0.50.20.4
医育機関の臨床系以外の勤務者3.01.02.4
医育機関以外の教育機関又は研究機関の勤務者1.50.51.2
行政機関・産業医・保健衛生業務の従事者3.51.22.8
うち、行政機関の従事者1.70.61.3
うち、産業医1.00.30.7
うち、保健衛生業務の従事者0.90.30.7
その他の者小計2.60.92.0
その他の業務の従事者0.60.20.5
無職の者2.00.71.6

医師とIT

IT関連技術の進歩に伴いパソコンが急速に普及し、各医療機関ではレセコン(レセプトコンピュータ)だけでなく電子カルテも次第に普及しつつある。

本来、診療を行う為に掛かるコストを支払う診療報酬にIT関連機器(レセコンや電子カルテ等)導入の為の費用は全く考慮されず、その全てを医療機関側が負担してきた。2005年、国は医療制度改革大綱にレセプトのオンライン化の義務化を盛り込んだが、2006年度の診療報酬改定でも初診料の電子化加算(3点、30円に相当)を新設したのみで、約650億円と試算される財源については全く触れていない。

従来、医師会等を通じてのみ情報を得ていた全国各地の医師同士も、各種掲示板、メーリングリスト(ML)を通じて横断的に双方向性に情報・意見交換できるようになった。学会等ではなかなか得られない臨床現場で役立つ医学・医療の経験・知識が、全国的に共有される意義は大きい。

1999年冬のインフルエンザ流行時、medpract-ML(実地医療研究ML)という医療系MLを通じてアマンタジンの有効性が初めて全国的に注目され、その後、迅速診断法や抗インフルエンザ薬などの情報も、医学会や医師会に先んじて様々な医療系MLに流れ、全国各地の医師同士の実体験が共有された。これを学問的に将来性のあるものに取りまとめたものとして、日本臨床内科医会のインフルエンザ全国調査研究:FLU・STUDY/JPAが注目された。
医療保険制度と医師

医師免許を取得して初めて医師と呼ばれ、自由診療(保険外診療)を行うことができる。更に保険医の認定を得れば保険医療機関において保険診療を行うことができる(健康保険法第64条)。一連の医療行為の中で両者を行うことは混合診療と呼ばれ、現在は認められていない。日本の公的医療保険制度は国民皆保険である為、必然的に医師の大半は保険医となり、保険者が決めたルール(保険適用)の中で診断・治療を行っている。

国民にとって最も重要な事は、病気にならないことである。しかし、目覚しい進歩をとげ、多くの病気において早期診断・早期治療を可能としつつあるが、何を持って予防しえたかとするか、治療に比べれば遥かにその医学的評価は難しい。病気の早期発見を謳ういわゆる人間ドックや病気にならぬ為の予防医学などに、現時点では保険が利かない由縁である。(一日人間ドックなどは、人によっては自治体や健保組合などからの補助が出る場合もある)
日本の医師の労働環境OECD各国の医師数と、人口あたり年間受診回数

日本における医師の労働環境は非常に厳しいものである[14]勤務医の労働時間は日本医療労働組合連合会(後述)の2007年4月発表の資料によると、平均労働時間は1日あたり10.6時間、週あたり58.9時間、月あたりの時間外勤務は62.9時間となっている[15]。厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」の調査(同年)では、医師の労働時間は平均で週に63.3時間になっている。平均的な医師でも月90時間以上は時間外労働をしており、同省の過労死認定基準が目安とする「月80時間の時間外労働」を超えている。徹夜の当直開けに休みを取る“ディーンスト・フライ”は現在実行されず、50歳以下の医師の多くはその言葉の意味さえ知らない。徹夜明けの医師が外来診療や手術をすることが常態化し、週に32時間以上の連続勤務も珍しくない。中には週に2?3回の当直もあり、睡眠不足や過労による医療事故が懸念されている他、医師の過労死が問題となっている。

また、産業別労働組合として日本医療労働組合連合会がある。
医師の働き方改革

2019年、厚生労働省は医師の働き方改革の推進に関する検討会を開催し、以下の答申が行われた[14]

診療従事勤務医2024年度以降適用される、時間外労働水準[14]

通常予見される時間外労働につき延長することができる時間数 :労働基準法の限度と同じ(月45時間・年360時間)

臨時的な必要がある場合の延長限度:1か月あたり原則100時間未満、年間960時間未満


一般の労働者に適用される時間外労働の上限を超えた場合の、措置義務

睡眠時間を一日6時間程度確保[14]

勤務間インターバルを9時間確保(当直勤務である場合除く)[14]

当直明けの連続勤務は、当直中に十分な睡眠を確保できていない場合、勤務全体を通して連続28時間まで[14]


医師の転職

これまでは多くの医師は、「医局」という組織に管理されていた[16]。これは大学の「教室(職員室)」とほぼ同義であり、各診療科目の教室が運営する非公式な医師の同業者組織である[16]。医局は教授を頂点とし、定期的に任命される医局長によって日常的な事務運営がなされる[16]。学費として「医局費」が徴収されることもある[16]

従来の方式では、医師は卒業と同時にいずれかの医局に「入局」していた。医局は医師の研修先・勤務先を指定し、医師はそれに従って転勤する。医局は医師を必要としている病院の情報を集中管理し、必要とされている医師の技能や経験年数に合わせて医師を派遣する。医師が派遣先で経験を重ね、技能を身につけると、派遣先の病院は医師に対して昇給をするか、賃金の安い医師と交代させるかしなければならない。そのため、数年おきに医局は医師を転属させ、新たに若い医師を派遣する。この繰り返しによって病院側は人件費を一定に維持し、経営の安定化を図ることができる。医師は自分の技能レベルに合った就職先で研鑽を積むことが出来る。また、高度な技術を取得することが可能な病院に派遣してもらった場合、「お礼奉公」と称して、しばらく低賃金で過疎地の診療所に派遣される慣習もあり、これによって地方の医師不足を埋め合わせていた側面があった。多くの場合、医師の派遣を受ける病院は大学教授に研究費などを提供し、教授の研究業績に寄与していた。こういう病院は医局の「関連病院」と呼ばれる。研究費が集まる有名教授の下にはさらに入局者が集まり、教授の権威を高める好循環を生む仕組みであった。

派遣を受けた医師は、国立病院に転属すれば「国家公務員」、公立病院に転属すれば「地方公務員」、私立病院に転属すれば「サラリーマン」、大学に戻り「研究生」「大学院生」などの名目で無給の労働力として使役される期間は「学生」と、転属先により身分が変遷する。また日雇い契約で雇われる場合は「フリーター」「非正規雇用」、僻地の診療所で一人医長に任命された期間は「管理職」と雇用階級も変遷し、数年おきに転属する。こういう身分の変遷は不安定で退職金も福利厚生もほとんどない。最近では、医療費削減に伴い、病院の経営状態が悪化し、多くの医師が「非正規雇用」か「管理職」のいずれかの身分で働くようになり、時間外手当もボーナスもなく、不当に長い労働時間を強いられている。

従来は医局の指示により、転職するのが一般的であった。しかし2004年からの初期臨床研修義務化(スーパーローテート)に伴い、医局に入局する医師が減少し、新たに医師の派遣を行ったり、医師の人材紹介や転職を斡旋する会社が出てきている[16]。これらの医療従事者専門の転職支援サービスは、医局から医師の派遣を断られた病院の医師確保などにも一定の役割を果たしている。このビジネス分野は未開拓で、さまざまな会社がしのぎを削っている。


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