医師
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ここで大きく「総合診療医(general practice)」と「病院医(専門医療)」とに進路は選択され、それぞれ研修が行われる[4]。そして研修終了の後にそれぞれ総合診療認定医、専門認定医の試験があり、合格して初めて「医師」としての独立した診療行為が許されている。

一般的に医師免許はその国の中でしか通用しないが、英国の医師免許はニュージーランドなどのイギリス連邦加盟国や植民地でも通用する。またヨーロッパ諸国の資格が有効となる場合もあり、コナン・ドイルは眼科資格を取得するため1891年にウィーンへ移住した(ドイツ語能力の不足により断念)。

英国の植民地の住民が医師を目指す場合には英国の医大に入学することが多い。特に医大のような高等教育機関を持たない植民地の場合はイギリス本国かイギリス連邦加盟国の医大へ行くしかない。このように、英国の医師免許は国際免許のような性格を持っているため、シンガポールやブルネイなどの経済的に豊かな小国で医師を目指す人間が英国の医大に入学して医師になる場合が非常に多い。

このため、イギリス連邦なら絶海の孤島であっても医師の質が比較的高い場合が多い。香港などでは返還前はイギリスの医師免許を持った医師しか医業を行えなかったが、香港返還後ではイギリスと中国の両方の医師免許が通用する。
ドイツの医師制度

ドイツでも、日本のように「医師」であれば事実上全ての診療科を行うことができるということはなく、各診療科ごとに専門医資格が必要とされている。

ドイツの医師国家試験は4段階の試験が存在する。まず日本と同様に中等教育修了後に大学医学部に進学でき、そこで約6年間の医学教育を受けるが、医学部での勉強と医師国家試験は平行して行われ、医師免許取得後にも医学部で医学教育を受ける必要がある。

まず医学部在学2年目で「Physikum(教養試験)」(教養科目)と呼ばれる自然科学系国家資格の統一試験がある。それに合格するとまた1年後に「Das erste Staatsexamen(第一次国家試験)」(基礎医学)と呼ばれる試験があった。これに合格し約2年後に「Das zweite Staatsexamen(第二次国家試験)」(臨床医学)と呼ばれる試験があった。これに合格すると最終学年時に、1年間の病院での臨床研修が義務付けられている。最後に「Das dritte Staatsexamen(第三次国家試験)」と呼ばれる試験があり、これに合格して初めて「研修医 (AIP:Arzt im Praktikum)」という免許が与えられた(現在は研修医という制度がなくなり、医師免許が発行される)。このほかにFamulaturという合計4か月の実習がPhysikum合格後、最終学年前までに義務付けられている。これは医学部の正規の教育課程で行われることではないため、大学の休み期間に学生自らで行う。現在ではPhysikumの後、3年勉学後、1年間の病院実習を行い国家試験に合格後、医師免許を習得できるように制度が改変された。またこの間大学医学部での医学の勉強は同時並行となり、ドイツの医学生はまた別に大学での単位の取得が必要とされているが大学によってはと卒業論文の製作を求めているところもある。そしてこの「医師免許」と「卒論」の二つが揃って初めて大学では卒業が認められ、学位が授与される。卒業論文の代わりに博士論文を書く学生もいる。この場合、博士論文が認定されると、「博士」の学位を授与される。

また医師免許があったとしても医師としての活動が許されているわけではなく、歴史ある医学大国として各「医師会」の権威が大きく、また何年かの臨床研修を受け各医師会、の専門医試験に合格しないと診療科を標榜することが許されない。開業する場合、専門医試験に合格していない場合、公的健康保険に対して診療報酬は請求できない。また、専門医資格の中に「一般医学(家庭医)」という専門資格も存在し、一般開業医はこの専門医資格が必要とされている。

ドイツ国内においては1999年から医師の定年制が施行され、68歳になると保険医療を行うことはできなくなった。また、それによって定年後の医師の生活を支える目的で「医師老齢年金制度」という社会保障制度が存在する。
中国の医師制度

中国では、西洋医学を中心として学ぶ医学部と、中医学を専門に勉強する中医学部に分かれる。西洋医学部を卒業し1年のインターンを経ることで医師免許受験資格を与えられ、中医学部を卒業し1年のインターンを経ることで中医師免許受験資格を与えられる。日本との違いは、医師免許自体が、中医学系と西洋医学系の二本立てであることである。

数年前から、外国人も医師国家試験の受験が可能になっている。嘗て中医師免許相当とされた「国際中医師免許」は、受験しても外国はもちろん本国である中国でさえ医療行為を行うことのできない学力認証試験であり、医師の世界では意味をなさない。

第二次世界大戦前には日本へ国費で留学生を送り医学を学ばせていた。魯迅は仙台医学専門学校(現東北大学医学部)に留学したが、退学し作家に転身している。
韓国の医師制度

韓国では医療二元化体制を取っており、中国と同じく西洋医学系と中医学系に区分される。

韓国で医者になるためには、2つの条件を備えなければならない。まず、医科大学や医学専門大学院で学業を終えること、そして医師国家試験を受けて合格することである。他の方法としては、外国の医科大学を卒業して学士号を取得した外国の医師免許保有者が、韓国の医師国家試験予備試験に合格し、国家試験受験資格を得て国家試験に合格する方法がある。また、軍委託教育制度で医師になることができる。
日本の医師の医師制度

医師
英名 Physician

略称ドクター、M.D.、Dr.
実施国 日本
資格種類国家資格
分野医療
試験形式一般試験、実技試験
認定団体厚生労働省
等級・称号医師
根拠法令医師法
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
テンプレートを表示
日本の医療」も参照

日本では「医師」は国家資格であり、大学の医学部(6年制)を卒業後に「医師国家試験」に合格して医籍登録を完了したものに厚生労働大臣より免許が与えられる[5]1999年に改正された医師法第16条の2に「診療に従事しようとする医師は、2年以上、医学を履修する課程を置く大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない。」と明記され、2004年度からは、臨床医として勤務するためには2年間以上の臨床研修を行うことが努力義務とされた。臨床研修を終えていない医師は、医業を続けることはできるが、病院・診療所の長となることができない。この間の「医師」を一般に研修医とも呼ぶこともある(資格名ではなく通称名)。ただし、基礎研究医や産業医社会医学者、法医学者などはこの義務はない。しかし、これらの分野でも認定医取得条件や求人に2年間の臨床研修を義務づけている場合もある。

一般的には、病院や診療所といった医療機関で医業(医療行為)を行う医師(臨床医)が多いが、医療機関以外では法務省に所属し、刑務所拘置所の収容者を対象に医療行為を行う医師である矯正医官自衛隊に所属する医師である医官や、保健所(地域保健法施行令第4条第1項にて「保健所の所長は医師でなければならない」と規定されている。次項に例外規定もあり)、基礎研究医、産業医、社会医学者、法医学など直接医療行為を行わない医師もいる。

2022年1月現在、医師免許に更新制度はなく、通常は生涯にわたって有効である。医師は2年おきに住所・氏名などを都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届け出る必要がある[5]医療過誤、犯罪等による資格停止・剥奪は厚生労働省医道審議会により決定される[6]

日本の医師免許は診療科ごとに交付されるものではなく、医師は法律上は歯科以外すべての診療科における診療行為を行うことができる、とされている。(歯科医師のみ別資格になっている)

近年では医療の進歩と共に技術的に高い次元での専門化・細分化傾向が強まり、日本においても各診療分野の学会が「学会認定医」、「学会専門医」などの学会認定専門医制度を導入しており、さらに2018年からは専門医の養成・認定を一括で行う日本専門医機構による「新専門医制度」が開始され[7][8]、一般診療者への技術度の目安として広まりつつある。がしかし、これらは法的には「肩書き」に過ぎず、所持していなくても診療科を標榜することは可能である(たとえば、眼科の医師が皮膚科の診療を行うことも可能)。ただし、麻酔科を標榜するには厚生労働省の許可を得なければならない(医療法第70条2項、及び医療法施行規則第42条の4に基づく)。

また、「医師」には「一人医療法人」という制度があり、「医師」一人でも医療法人が設立できる。死体検案書作成は、医師の独占業務である。
法的枠組み

日本で医師の資格を規定する根拠となっている法律は「医師法」であり、医師法第17条に「何人も、医師でなければ、医業をなしてはならない。」と規定し、職業選択の自由を規制している。なお日本の医師免許は、個人に医業をするために与えられた免許であるため登録免許税が発生する。また、認知症などになると免許を取り消される場合がある。なお、後見人が必要となった場合は免許が取消処分となる。診療報酬などを不正に請求し罰金以上の処罰を受けると取消処分となる。

また、しばしば資格を持たない者が医師を名乗り医業を行う例が見られ、1970年前後には、いわゆるニセ医者が多数存在していたことが社会問題となった。警察庁の調べでは1969年に91件104人、1970年に110件96人、1971年(9月まで)に40件37人が摘発されている[9]


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