医学
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エジプトのパピルスの中に「現存する最古の医学書」と言われているものがあり、そこには紀元前3世紀エジプトにおいてすでに「外傷者に対しては、まず質問検査、機能試験、診断、治療」と記述されており、現代と変わらない診療手順を行ったことが明らかになっている[6]

医学は歴史をふりかえると経験医療(経験医療)として存在していた。他の各学問が成熟してゆく中で医学も独自性を持った学問として発展し、(西洋では)「人体の研究と疾病の治療・予防を研究する学問」とされた[6]

(西洋医学は20世紀に医学を「人間の疾病に関することを取り扱う学問」などとしつつ疾病にばかり着目し他の面を見落としたり、人間をただの物体のように扱う傾向があり、それが諸問題を引き起こす結果を招いたが、反省が始まり)、近年では(西洋医学も)「人間を生理的・心理的かつ社会的に能動的ならしめ、できるかぎり快適な状態を保たせる研究」として機能や社会的な面についても見落とさないようにする立場に変わりつつある[6]。詳細は「医学史」を参照
東洋医学経絡図の一例詳細は「東洋医学」を参照

現在日本で「東洋医学」と呼ばれるものは、おおむね伝統中国医学に相当している[7]西洋医学とは異なる理論・治療体系をもつ医学である。「東洋医学」と言う以上、きちんとした論理の上に成立している[7]。そしてそれは、日本人が持つ生命観自然観に近いものである[7]

中国伝統医学は民間療法とは区別されている[7]。東洋医学は、民間療法とは異なった考え方に基づいて運用されている[7]

一例として、生姜の使い方を見ると、どちらも風邪の時に使うことはあるものの、民間療法では風邪の時に何の考えもなしにそれを機械的に与えるのに対し、中国伝統医学では、寒気(さむけ)が強い時のみに使用され、反対に熱感が強い時には使用しないのである。なぜなら、中国伝統医学では、生姜は体を温める作用がある、と考えているからである[7]

日本でも古代より「医」は巫女陰陽師僧侶によって中国から伝えられた呪術、医療が行われていた。室町時代以降は中国大陸との交易も盛んとなり、漢方が積極的に伝わっていった。江戸時代以降は、日本は独自の漢方医学を発展させ、薬学である本草学を中心に診療が行われていった。華岡青洲によって記録上世界最初となる麻酔による乳癌手術が行われたりした。また、幕末には国学の影響を受けて漢方伝来以前の医学を探求する動きも現れた。

現在は中華人民共和国では中医学朝鮮民主主義人民共和国では東医学大韓民国では韓医学として実践されている。これらの伝統医学は、長い歴史を通じて各地で培われ、現在でも広く実践されている。
西洋医学ギリシア神話にて医の神であるアスクレーピオスの像。左にシンボルの手術詳細は「西洋医学」を参照

ヨーロッパ世界においては、「医」の起源は古代ギリシアヒポクラテスとされている。ヒポクラテスは学問としての医学を確立し[8]、その後古代ローマガレノスアリストテレスなどの自然学を踏まえ、それまでの医療知識をまとめ、古代医学を大成した[9]

しかしこうした医学書の多くはギリシア語で書かれていたため、ローマ帝国の崩壊とともにヨーロッパではその知識の多くが失われ、断片的なものが残るに過ぎなくなっていた。一方、医学知識はローマの継承国家でありギリシア語圏である東ローマ帝国において保持され、8世紀以降アッバース朝統治下においてヒポクラテスやガレノスをはじめとする医学文献がアラビア語に翻訳された[10]。イスラム世界においてもガレノスは医学の権威とされ、その理論を基礎とするイスラム医学が発達した[11]。11世紀初頭にはイブン・スィーナーが「医学典範」を著わしたように、この時期イスラム世界では百科全書的医学書が多く編まれ、イスラムおよびヨーロッパ世界に大きな影響を与えた[12]

これらのアラビア語文献は、12世紀に入るとシチリア王国の首都パレルモカスティーリャ王国トレドといった、イスラム文化圏と接するキリスト教都市においてラテン語へと翻訳されるようになった[13]。これによってヒポクラテスや、特にガレノスの著作が西欧に再導入され権威とされたほか、イブン・スィーナーなどの新たな文献も流入した[14]

ヨーロッパ中世においては、内科学のみが医学とされ、外科学の地位は低かった。外科医療は理容師理容外科医とも言われた)によって施術され、外科手術や瀉血治療などが行われていた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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