区分建物
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標準管理規約では、住戸部分について住宅以外の用途に供してはならない旨の条項があり[14]。標準管理規約(単棟型)の第12条に付されているコメントで、住宅以外の使用禁止規定に違反するか否かは「専ら居住者の生活があるか否かによって判断する。したがって利用方法は、生活の本拠であるために必要な平穏さを有することを要する」とされている[注 6]。「いたずらに過剰規制しない方がいい」という指摘も出されている[15](裁判事例[注 7])。
ペット飼育

日本においては、標準管理規約で禁止の場合と許容の場合の両方の条項が作成されているように複雑な問題となっている[16]ペット飼育をめぐる問題の重要性について、マンション管理センターは、「個々の区分所有者の趣味、嗜好の問題にとどまらず、マンションの使用の在り方、管理の在り方、マンションにおける共同の利益の意義、規約の効力、マンション紛争の解決の当事者、社会におけるペット飼育の意義をめぐる広範な問題を提起している」という弁護士による解説をホームページに掲載している[17]。なお、下記#重要事項説明(宅地建物取引業法)に関連することとして、取引時のペット飼育の可否に関する説明・告知をめぐるトラブルも目立つ[18]
店舗部分がある場合

標準管理規約(複合用途型)においては、店舗部分の使用にあたって、「他の区分所有者の迷惑となるような営業形態、営業行為をしてはならない」とされている一方で、住戸部分のような、他の用途に供してはならない旨の条項はない[19]
効力の及ぶ者の範囲

上記の制約等については、区分所有者以外にも及ぶ場合がある。区分所有法第30条では、管理規約は第三者の権利を害してはならないものとされるものであるが、同法第46条により、借主を含む占有者は、建物等の使用方法につき区分所有者と同一の義務を負うものとされる。
同居人等

標準管理規約においては、区分所有者は、同居する者、店舗の場合のこれに勤務する者に対して、規約、管理組合総会決議を遵守させなければならないとされている[20]
専有部分を貸与する場合

区分所有者が専有部分を貸与(賃貸等)する場合、標準管理規約は、区分所有者が貸与先に管理規約等を遵守させなければならないとし[注 8]、借主に管理組合に対して管理規約等を遵守する旨の誓約書を提出させることとしている[21]
共同の利益に反する行為の停止

共同の利益に反する行為をする者(区分所有者、占有者等)に対して、区分所有法、標準管理規約は、各種の措置を定めている。これらの行為は、専有部分で行われたものも含まれる。関係する事例の中に、暴力団事務所としての使用がある[22]。 
管理組合理事長の勧告、指示等

標準管理規約では、区分所有者又は専有部分の貸与を受けた者(いずれとも同居人も同様)が法令、管理規約等に違反したとき、又は当該区分所有建物内における共同生活の秩序を乱す行為を行った時は、管理組合理事長は、理事会の決議を経て、その区分所有者等に対し、是正のために必要な勧告等を行うことができることとされている[23]
区分所有者・占有者に対する違反行為の差止請求

区分使用者又は占有者が建物の保存に有害な行為等[注 9]をした場合またはする恐れがある場合は、他の区分所有者又は管理組合法人は、その行為の差止を求めることができる[24]
区分所有者に対する使用禁止請求

上記の2つと異なり、専有部分の使用自体を禁止する措置である。区分使用者又は占有者が建物の保存に有害な行為等[注 9]をした場合またはする恐れがある場合において、上記の差止請求では区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合が対象である(裁判事例[注 7] - 認められなかった事例)。

管理組合総会の「特別決議」により訴えをもって専有部分の使用禁止請求を行うものである[25]。この請求を認める判決が確定すると、区分所有者や同居人は当該専有部分を使用できなくなるが、他人に貸し付けることは可能である。「b:建物の区分所有等に関する法律第58条」も参照
区分所有権の競売請求

これは、いわば「最終手段」として専有部分等の所有権を剥奪する形となる措置である。区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為等[注 9]をした場合またはする恐れがある場合において、他の方法では区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難である場合が対象である。

管理組合総会の「特別決議」により訴えをもって専有部分の競売請求を行うものである[26](裁判事例[注 10])。「b:建物の区分所有等に関する法律第59条」も参照
管理、改修、建替関係
管理等

専有部分の管理は、所有権を持つ各区分所有者が行うことが原則である。区分所有法では、区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し[注 11]、改良するため必要な範囲において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができるものとしている。この場合、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない[27]

一方で、配管、配線等共用部分と一体になった設備部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要がある場合もあり、標準管理規約は、そうした必要があるときは管理組合で管理を行うことができるものとしている[28]
新築マンションのアフターサービス

日本の民法上不動産の売主は瑕疵担保責任を負うが、これは、隠れた瑕疵が対象で、損害賠償または契約解除のみが認められている。そこで、消費者保護、営業政策の観点から瑕疵の有無にかかわらず一定の不具合があれば、無償修補を行うアフターサービスがマンション分譲で広く見られる[29]。修補を行う期間は、専有部分関係では、「室内建具、建具金物、造付家具、室内床仕上げ」等が引き渡しの日から2年間となっている。
改修

専有部分の改修は[注 12]、当該区分所有者が責任を負うものであるが、管理同様に関連する共用部分と一体で行った方が効率的な場合もある。ただし、共用部分を対象とする修繕積立金を取り崩して専有部分の改修を行おうとするなど法的に問題のある事例も見られる[30]

専有部分の改修により共用部分や他の専有部分に影響を及ぼす場合が考えられる。標準管理規約では、専有部分の修繕等については管理組合理事長の承認を要することとされ、理事長又はその指定を受けた者が必要な範囲で調査の実施すること、その調査に区分所有者は正当な理由がなければ拒否できないことが規定されている[31]。なお、住宅金融支援機構は、「共用部分には手をつけない」のほかに、電気等の容量への注意、工事中は他の専有部分に騒音、振動等色々な影響があるため、工事関係者にルールを遵守させること等を呼びかけている[32]
買取請求権

建物の価格の2分の1を超える部分が滅失(大規模滅失)した場合の復旧については、支出の大きさ等から区分所有者に与える影響が大きいため、区分所有法では、専有部分の買取請求権が認められている。

区分所有法第61条に基づく大規模滅失における復旧決議が成立した場合、その復旧決議に賛成しなかった(反対、棄権)区分所有者は、決議に賛成した区分所有者(承継人を含む)の全部又は一部に、専有部分、敷地利用権を時価で買い取るべきことを請求できる。
売渡請求権

建物の建替えでは既存建物の取り壊しにより専有部分も滅失することとなる。区分所有権の保護と建替えの円滑化の調整の観点から、区分所有法では、区分所有者に対する専有部分の売渡請求権が認められている。

区分所有法第62条に基づく建替え決議が成立した場合、建替え参加者又は買受指定者[33]は、不参加者に対して専有部分、敷地利用権を時価で売り渡すことを請求できる[34]。建替手続きについては「マンション」を参照
専有部分の取引

専有部分の処分は、共用部分の共用持分と分離して行うことはできず、敷地利用権とも原則として分離して行うことはできない[35]。日本では上記のとおり、建物と土地は別個の不動産として扱われるため、区分所有法の特徴的な制度となっている。そこで、不動産鑑定評価基準は、「区分所有建物及びその敷地」という類型でとらえている[36]

不動産鑑定評価基準は、特有の価格形成要因について、各論第1章で、これらのもの[注 13]を挙げている。これらは、#重要事項説明(宅地建物取引業法)で述べている説明事項と重なる部分がある。
階層別、位置別効用比

マンションの場合は、一般的に眺望等の観点から上層階ほど、さらに南-東-西-北の順で一棟の建物における効用比が高い、すなわち、他の条件が同じならば床面積当たりの単価(価格、賃料)が高くなる傾向があり、超高層マンションでは顕著となる[37]


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