しかし、17世紀前半以降、特にイングランド王国において、この北海におけるオランダ覇権に対する反発が強まってきた。1651年、オリヴァー・クロムウェル支配下のイングランド国会で航海条例が制定され、イングランド及びその植民地から外国船は締め出された。これに反発したオランダとの間に、1652年、第一次英蘭戦争が勃発する。この戦争では海戦が主体となったが、オランダ側は常設艦隊を持たず、大型艦も少なかったため、イギリス側が終始優勢に戦闘を進め、1654年のウェストミンスター条約においてイギリス側が勝利を確定した。この後も1665年から1667年にかけて第二次英蘭戦争、1672年から1674年にかけて第三次英蘭戦争が勃発した。この時期はまだオランダの経済力が他を圧していたものの、やがてオランダ経済は衰退の道をたどるようになり、18世紀には北海の制海権はイギリスへと移り、北海経済の中心もアムステルダムからロンドンへと移った。 18世紀以降のイギリスは覇権国家となり、北海の制海権は20世紀中盤までイギリスが握り続けた。1805年、フランスの皇帝ナポレオン・ボナパルトがイギリス本土上陸を目指したものの、スペインの大西洋で行われたトラファルガーの海戦によってこの試みは粉砕され[18]、ナポレオン戦争中を通じてイギリスが制海権を手放すことはなかった。1806年にはフランスが大陸封鎖令を出したものの、制海権を握るイギリスはこれをしのぎきり、逆にこの封鎖令による反発からナポレオンの覇権は崩壊していった。 19世紀末、ドイツ帝国が成立し、急速に国力を増大させるにしたがって、ドイツがイギリスの海上覇権に挑戦し始めた。ドイツ帝国海軍とイギリス海軍は建艦競争を繰り広げ、軍事的緊張が高まりつつあった。一方、1904年に日露戦争が勃発すると、ロシア海軍はバルト海のリバウ軍港からバルチック艦隊を旅順へと回航させようとしたが、ドッガー・バンクにおいてバルチック艦隊はイギリスの漁船を日本の水雷艇と誤認して砲撃、漁民に死傷者を出した。このドッガーバンク事件により、イギリスのロシアへの態度は一時的に非常に硬化し、日本海海戦にも影響を与えた。 1914年、第一次世界大戦が勃発すると、北海も戦場となった。ヴィルヘルムスハーフェンを基地とするドイツ海軍の大洋艦隊と、イギリス海軍のグランドフリートが対峙した。両艦隊間にはヘルゴラント・バイト海戦(1914年)、ドッガー・バンク海戦(1915年)およびユトランド沖海戦(1916年)といった海戦が戦われたが、ドイツ軍は結局イギリス軍の海上優勢を覆すことができないまま終戦を迎えた。 第二次世界大戦における北海を経由した軍艦の活動については、大西洋の戦い (第二次世界大戦)、ヴェーザー演習作戦を参照。 北海を取り巻く国々は12海里(22km)領海で排他的漁業権を主張している[19]。EUの漁業政策で漁業権を調整し、EU諸国とノルウェー間の紛争を処理する[20]。北海で炭化水素が発見されたため、大陸棚会議で各国の権利を中間線方式で区分した。中間線とは二国間の陸上国境の延長とみなされる境界線のことである[21]。ただし、ドイツ、オランダ、デンマークの海底領土の係争は北海大陸棚事件と呼ばれ、長い交渉と国際司法裁判所の裁定を経て決定された[19][22]。 北海は、海上輸送において非常に重要な海域であり、北海航路は世界で最も利用されている航路のひとつである[19]。ヨーロッパで最も貨物取扱量が大きく、世界でも第4位(2012年)に位置するロッテルダム港をはじめ[23]、同世界18位のアントワープ、同世界29位のハンブルク、コンテナ取扱量世界18位のブレーメンおよびブレーマーハーフェン、同33位のフェリックストー(イギリス)[24]、さらにヨーロッパを代表するRO-RO船の港であるブリュージュおよびゼーブルッヘ[25]など、多くの重要港が存在する。商船の他に漁船、石油基地の船、スポーツ用の船舶、遊覧船などでこの海域は混みあい、またバルト海からやってくる船のほとんどは北海を通航する必要があるため、この混雑はさらに激しくなる。ドーバー海峡では、1日に400隻以上の商船が行き来する[26]。北海沿岸には運河が発達しており、なかでも北海とバルト海を結ぶキール運河は最も重要なものであり、2009年にはスポーツボートやほかの小型船舶を含めずに、一日当たり89隻の通行を記録した。これは、世界で最も使用される人工水路である[27]。キール運河を使用すれば、ユトランド半島を迂回するのに比べ460kmの航路短縮となる[28]。 北海には、イギリス領内のフォーティーズ油田 原油や天然ガス以外にも、北海では年間数百万立方メートルの砂や礫が海底から採取されている。これらの土砂は土地造成や建設、養浜に使用される[38]。
近現代
経済
政治状況北海沿岸各国の経済水域
海上交通ロッテルダム港
石油・ガススタートフィヨルド油田
鉱物資源