北欧神話
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巫女はユグドラシルや3柱のノルン(運命の女神[注 5])の説明に進む。巫女はその後アース神族とヴァン神族の戦争と、オーディンの息子でロキ以外の万人に愛されたというバルドルの殺害[注 6]について特徴を述べる。この後、巫女は未来への言及に注意を向ける。
終局(終末論信仰)バルドルの死から世界の終末が始まる詳細は「ラグナロク」を参照

古き北欧における未来の展望は、冷たく荒涼としたものであった。同じく北欧神話においても、世界の終末像は不毛かつ悲観的である。それは、北欧の神々がユグドラシルの他の枝に住む者に打ち負かされる可能性があるということだけでなく、実際には彼らは敗北する運命にあり、このことを知りながら常に生きていたという点にも表れている。

信じられているところでは、最後に神々の敵側の軍が、神々と人間たちの兵士よりも数で上回り、また制覇してしまう。ロキと彼の巨大な子孫たちはその結束を打ち破る結果となり、ニヴルヘイムからやってくる死者が生きている者たちを襲撃する。見張りの神であるヘイムダルが角笛ギャラルホルンを吹くと共に神々が召喚される。こうして秩序の神族と混沌の巨人族の最終戦争ラグナロクが起こり、神々はその宿命としてこの戦争に敗北する。

これについて既に気づいている神々は、来たる日に向けて戦死者の魂エインヘリャルを集めるが、巨人族側に負け、神々と世界は破滅する。このように悲観的な中でも2つの希望があった。ラグナロクでは神々や世界の他に巨人族もまたすべて滅びるが、廃墟からより良き新しい世界が出現するのである。オーディンはフェンリルに飲み込まれ、剣を失っていたフレイはスルトに敗れ、トールとヨルムンガンド、テュールガルム、ロキとヘイムダルがそれぞれ相討ちになる。スルトによって炎が放たれ、全世界は海中へと沈む。このように神々はラグナロクで敗北し殺されるが、ヴィーザルのようにごく一部の神は生き残り、またラグナロク後の新世界ではバルドルとヘズのように蘇る者もいる。

ただし、ラグナロク後の展開は解釈や資料によって異なり、異版では新たな世界が生まれることなく世界が滅亡するというものもある[3]
王と英雄ラムスンド彫刻画に描かれている『ヴォルスンガ・サガ』の一節

この神話文学には超自然的な生き物たちもさることながら、英雄や王たちの伝説にも関連している。物語に登場する氏族や王国を設立した人物たちは、実際に起こったある特定の出来事や国の起源などの例証として、非常に重要であるという。この英雄を扱った文学は他のヨーロッパ文学に見られる、叙事詩と同様の機能を果たし、民族の固有性とも密接に関連していたのではないかと考えられている。伝説上の人物はおそらく実在したモデルがあったとされ、スカンディナヴィアの学者たちは何代にもわたって、サガにおける神話的人物から実際の歴史を抽出しようと試みているのである。

ウェーランド・スミス(鍛冶師のヴィーラント)とヴォルンドルシグルズジークフリートスキールニルスヴィプダグ、盲目の神ヘズと英雄ホテルス、そしておそらくはベオウルフとボズヴァル・ビャルキ(英語版)など、時折ゲルマンのどの世界で叙事詩が残存していたかにより、英雄も様々な表現形式で新たに脚色される。他にも、著名な英雄にはハグバルズ、スタルカズ、ラグナル・ロズブローク(粗毛ズボンのラグナル)、シグルズ金環王、イーヴァル広範王(イーヴァル・ヴィーズファズミ)、ハラルド戦舌王(ハーラル・ヒルデタンド)などがいる。戦士に選ばれた女性、盾持つ処女も著名である。女性の役割はヒロインとして、そして英雄の旅に支障をきたすものとして表現されている。
北欧の崇拝
信仰の中心ガムラ・ウプサラ。11世紀後期に破壊されるまで、スウェーデンにおける信仰の中心地だった

ゲルマンの民族が現代のような神殿を築くようなことは、まったくなかったかもしくは極めて稀なことであった。古代のゲルマンおよびスカンディナヴィアの人々により行われた礼拝の慣例ブロート(供儀)は、聖なる森で行われたとされるケルト人バルト人のものと似通っている。礼拝は家の他にも、石を積み上げて作る簡素な祭壇ホルグで行われた。しかし、カウパング(シーリングサルとも)やライヤ(レイレとも)、ガムラ・ウプサラのように、より中心的な礼拝の地が少ないながら存在していたように見える。ブレーメンのアダムは、ウプサラにはトール・オーディン・フレイの3柱を模った木像(神像)が置かれる、神殿があったと主張している。真ん中には主神トールが鎮座していた。
司祭

聖職のようなものは存在していたと思われる一方で、ケルト社会における司祭ドルイドの位ほど、職業的で世襲によるものではなかった。これは、女性預言者及び巫女たちが、シャーマニズム的伝統を維持していたためである。ゲルマンの王権は、聖職者の地位から発展したのだともよく言われている。この王の聖職的な役割は、王族の長であり生贄の儀式を執り行っていた、ゴジの全般的な役割と同列である。シャーマニズム的考え方を持っていた巫女たちも存在してはいたが、宗教そのものはシャーマニズムの形態をとっていない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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