北朝鮮軍
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また、朝鮮系の将兵によって構成されていた中国人民解放軍第164師団と中国人民解放軍第166師団が、第二次国共内戦が終結した1949年に帰国してそれぞれ人民軍第5師団と第6師団に、さらに中国人民解放軍第165師団が1950年に帰国して人民軍第7師団に改編された[7]ことなどにより、量的にも韓国軍に対して大きなアドバンテージを得ることができたのである。
朝鮮戦争詳細は「朝鮮戦争」を参照祖国解放戦争勝利記念館の記念碑

朝鮮人民軍の奇襲により1950年6月25日に勃発した朝鮮戦争(北朝鮮では「祖国解放戦争」と位置づけている)では、当初の朝鮮人民軍はソビエト連邦中華人民共和国からの豊富な支援を受けて前述のように韓国軍を質量ともに圧倒しており、緒戦で韓国の首都ソウルを陥落させ、アメリカ軍イギリス軍を始めとした国連軍の参戦後も大田の戦いなどで勝利を得て、国連軍を釜山円陣に追い詰めた。1950年7月4日に金日成(当時、首相)が朝鮮人民軍の最高司令官となった。

しかし、国連軍の仁川上陸作戦が成功したことにより戦局が一転すると、人民軍は敗走を重ねて多くの戦力を失い、一時は臨時首都の平壌を喪失するまでに追い詰められた。その後、中国人民志願軍の参戦により平壌を奪還してソウルも一時は再び陥落させたものの、1953年7月27日の休戦まで、人民軍は中朝連合司令部の朴一禹の指揮下にあり、金日成は戦争の中での主導的な役割を失った。

しかし、金日成はむしろこれによって北朝鮮内部における権力確立に専念することができた。当時の党内の有力派閥であり、パルチザン養成機関を掌握していた南労党派は、金日成によって朝鮮戦争の失敗の責任を転嫁されて粛清された。前述のソ連派・延安派なども最終的には1956年の8月宗派事件により壊滅し、人民軍からその影響は排除された。
現在

1960年代初めから現在に至るまで50年以上の長きにわたり、北朝鮮当局は朝鮮戦争における軍事的な教訓に基づく国家戦略として「四大軍事路線」を堅持し、人民の暮らしよりも軍事が優先される「先軍政治」を標榜している。具体的な政策は、金日成が自ら教示した4つのキーワードである「全人民の武装化、全軍の幹部化、全軍の現代化、全国土の要塞化」に基づく。

第一に、「全人民の武装化」が追求されている。すなわち、徴兵制によって人民に長期間の兵役の義務を課し、除隊後も予備役として「地方軍」に所属させ、もしくは人民軍とほぼ同じ階級制度を導入する「労農赤衛隊」等の民間防衛組織に加入させる。これにより、人海戦術による朝鮮半島全域での全縦深同時突破を実現しうる約400万人の予備兵力を確保している。膨大な兵力数は大量破壊兵器と並んで、米韓軍による北進を防ぐ抑止力ともなっている。また、有事の際に人民軍の兵站輸送等に使役される鉄道員や一部の公務員たちの職階には、人民軍による指揮監督の円滑化のために人民軍とほぼ同じ階級制度を導入している。

第二に、朝鮮人民軍では、韓国に対する縦深攻撃を行う際に、部隊の多くが壊滅に追い込まれ将校と下士官が大量に死傷することは既に織り込み済みである。極限状態の中にあっても戦闘序列を守り、作戦を成功させるため、実際の戦闘中に階級が上位の者を失っても、その隷下にあって生き残った者が「主体思想」を信念として、直ちに階級が1ないし2階級上位にある者の職務を代行できるよう、「全軍の幹部化」を追求している。そのために、部隊においては「日帝残滓」を人民軍から一掃する反日教育が推進され、一種の宗教のように金日成一族のことを崇拝させるマインドコントロールが行われている。

第三に、「全軍の現代化」と称して、現代の戦略兵器である弾道ミサイルおよび核兵器の開発を行う。日本や韓国においては、平時から特殊部隊にアジトや資金の提供を行う協力者ネットワークである「土台人」「主体思想派」を確保し、特殊部隊による工作船運用やクラッキング等の諜報戦に、限りある資源の投資を集中している。

第四に、北朝鮮上空の制空権を敵に奪われることを想定し、あらかじめ重要施設や兵器工場の多くを内陸部の地下施設内に設け、空爆から防護するという「全国土の要塞化」を推進している。
軍事戦略

朝鮮半島の統一について、人民軍は殲滅戦略(Strategy of Annihilation)を取っている。その軍事戦略アプローチとして彼らは配合戦、奇襲、速戦即決の3つを掲げている[8][9][10][11][12][13]。この3つの軍事戦略アプローチは相互に助け合う関係にある。
兵力

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出典検索?: "朝鮮人民軍" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2009年4月)

北朝鮮は保有する兵力を公表したことはないが、英国シンクタンク・国防戦略研究所の年次報告書『ミリタリー・バランス』によると、陸軍102万人、海軍6万人、空軍11万人の合計120万人、また日本防衛省がまとめた『令和4年版防衛白書』では、総兵力は約128万人とされている。これは、対峙している韓国軍の兵力(56万人)と在韓米軍(3万)の合計よりも多い。[14]北朝鮮の人口は約2578万人なので、国民の5%程度が軍役に就いていることになるが、そのために兵役期間が10年(2005年までは、13年だった)と極めて長く、元々GDPが1.2 - 2.4兆円で著しく低迷する北朝鮮経済に与える影響は極めて甚大である。なお、実際に戦闘に使える兵の数となると、20万から30万という説を唱える者もいる[15][16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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