北マケドニア
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マケドニアは、1990年代前半のユーゴスラビア崩壊に伴うユーゴスラビア連邦からの独立に際して、戦禍に巻き込まれることなく平和的な独立を果たした唯一の国家である[注釈 3]。そのため、連邦解体に反対の立場にあったセルビアや、その他の旧ユーゴスラビア諸国に対する国民感情は、他の旧ユーゴスラビア諸国の国民に比べると穏やかである。

2008年10月にセルビアが自国領と考えるコソボを、マケドニアは国家として承認した。セルビア共和国はこれを受け入れられないとし、マケドニアに駐在する大使を召還するとともに、セルビアに駐在するマケドニアの大使をペルソナ・ノン・グラータとして国外追放した。その後マケドニアは新しい大使をセルビアに着任させた。

北マケドニアには、人口の2割から3割程度のアルバニア人が居住しており、アルバニアおよびコソボを巻き込んでの大アルバニア主義の伸張は国土の統一を脅かす問題として警戒されている。1997年暴動で混乱状態に陥ったアルバニアでは、コソボ独立を求めるアルバニア人武装勢力「コソボ解放軍」が拠点を設け、人員を集め、また軍施設から略奪された武器を集めていたと考えられている。コソボ紛争が終わると、その武器と人員の一部がマケドニアのアルバニア人武装勢力「民族解放軍」にもたらされたと考えられている。このようなことから、アルバニアおよびコソボの安定は北マケドニアにとって死活的な問題となっている。マケドニアは、2008年2月にコソボが独立すると、10月に同国を国家承認した。2009年には両国間に外交関係が樹立された。

南のギリシャとは先述したマケドニア呼称問題を抱えていたほか、スラヴ系の「マケドニア人」という民族自認や、「マケドニア語」という言語呼称も問題となっている。ギリシャには、第一次世界大戦後のヌイイ条約の定める住民交換によってギリシャからブルガリアに追放されるのを逃れるために、自身をギリシャ人と宣誓してギリシャ領マケドニアに留まった少数のスラヴ人が住んでいる。このスラヴ人の中でも、1991年のマケドニア共和国独立以降、自身を「マケドニア人」と考える人々が現れている。ギリシャでは公式にはスラヴ系「マケドニア人」という少数民族の存在は認められておらず、彼らの民族的・文化的権利の追求が両国間の問題となっている。

また、マケドニア国内ではギリシャ領やブルガリア領も含めた統一マケドニアに関する議論が多く見られ、右派政党内部マケドニア革命組織・マケドニア国家統一民主党もかつてはこれを党是に含めていた。ギリシャは、マケドニアが独立後しばらくその国名を諦めないことと併せて、マケドニアが潜在的にギリシャ領マケドニアに対する領土的野心を持つことを警戒した。

ギリシャは国名や言語・民族呼称などに関する問題を抱えている一方で、これらの問題が解決されれば地域の安定と繁栄のために、マケドニア共和国のNATOおよび欧州連合加盟が望ましいとしている。ギリシャはドイツとならんでマケドニアの最大の貿易相手国であり、両国の経済は深い結びつきを持っている。マケドニアとギリシャを結ぶ幹線道路の建設も進められ、マケドニアはギリシャから多数の投資を呼び込んでいる。北マケドニア共和国はギリシャと比べると物価も賃金も安く、ギリシャ向けの生産拠点、あるいはギリシャからショッピング・観光の場ともなっている。
地域統合

北マケドニアは中欧自由貿易協定南東欧協力プロセスに加盟しており、ユーゴスラビア崩壊後の新しいバルカン諸国の地域協力体制の枠組みに加わっている。2021年7月末には、人やモノ、金の自由な移動を保障する経済圏構想「オープンバルカン・イニシアチブ」の立ち上げをセルビアおよびアルバニアとともに提唱した[29]。またNATOおよび欧州連合(EU)加盟を目指してきた。

2019年2月の北マケドニア共和国への国号変更で、NATOとEUの加盟国であるギリシャによる反対が解消したため、NATO加盟国とマケドニアは2019年2月6日、マケドニアを30番目のNATO加盟国とする議定書に署名し[30]、2020年3月27日に正式に加盟した[31]。一方で、EUへの加盟については国名変更後の2019年10月のEU首脳会議でフランスに加盟を拒まれた[32]が、2020年3月には加盟交渉に入ることで合意している[33]
EU

2005年、マケドニアは「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」の名で、正式に欧州連合加盟候補国となった。ニコラ・グルエフスキ首相は2014年ごろの加盟を目指すとしていたが、2008年後半の欧州連合議長国となったフランスのニコラ・サルコジ大統領は、マケドニアの欧州連合への参加には国名問題の解決が前提となると繰り返し表明し、マケドニアの国民や政府関係者を失望させた。国名問題は2019年に解決したが、バルカン半島諸国がEUに加盟することで移民が西欧諸国に流入しやすくなり、移民反対を掲げる政党が増長しかねないと懸念するフランスやオランダデンマークなどはその後も加盟交渉入りに反対し続けた。2020年2月には加盟候補国の改革が遅れれば交渉を止められるといった加盟手続きの改革案を欧州委員会が提示し、フランスなどが評価。3月24日に加盟交渉入りすることが決定した[33]
NATO

2008年、NATOはアルバニアおよびクロアチアの加盟を認める一方、マケドニアの加盟はギリシャの拒否権行使によって否定された。マケドニアはクロアチア、アルバニアと同時のNATO加盟が勧告されており、マケドニアに対する加盟拒否は国内で激しい怒りを生んだ。アメリカは「マケドニア共和国」の呼称を認めており、この時のアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領はアフガニスタンイラクにも軍を派兵している同盟国マケドニアのNATO加盟を強く支持している。

一方、ロシアはバルカン半島でのNATO加盟国増加を妨害するため、マケドニア国内に対して、ギリシャとの和解および米国やNATO、EUに対する反感を高める政治・世論工作を展開していると報道されている(ロシアは否定)[34]

2020年3月27日、30番目の加盟国としてNATOに加盟した[35]
対日関係詳細は「日本と北マケドニアの関係」を参照「駐日北マケドニア大使館」も参照
駐日北マケドニア大使館


住所: 東京都品川区東五反田五丁目16-17

アクセス: JR山手線五反田駅東口、もしくは都営浅草線A4


北マケドニア大使館全景

北マケドニア大使館正門

北マケドニア大使館表札

地理マケドニアの地図詳細は「北マケドニア共和国の地理(英語版)」を参照 コラプ山

北マケドニアは欧州の南東、バルカン半島の中央に位置し、欧州とアジア、北アフリカの中継地点でもある[36]。また、国土の大部分が山地の内陸国でもある。北にコソボおよびセルビア、東にブルガリア、南にギリシャ、西にアルバニアと国境を接し、いずれも高い山脈が連なる高山地帯である。最高地点はアルバニア国境のコラプ山標高2764m)。国土の中央には北西から南東にヴァルダル川が流れ、ギリシャ領へと続いている。ヴァルダル川の周りには急峻な渓谷が刻まれ、この渓谷には北からの冷たい風が流れ込み、ギリシャ領へと吹き付ける。この強い北風はヴァルダリスと呼ばれている。南西部のアルバニアおよびギリシャとの国境地帯にはオフリド湖プレスパ湖という2つの湖がある。北西部からコソボ南部一帯にはシャール山脈(英語版)があり、この山脈の山々はバルカン半島で最も高い山に数えられ、標高2,500m (8,202ft) を超える山が30座も存在している。

北マケドニアは、地中海性気候と高山性気候の中間にある。ヴァルダル川の渓谷部は標高が低く、地中海性気候に近い。ここでは夏季には最高気温が40に達することもある。一方で高山地帯は冷涼であり、冬季は深い雪に閉ざされる。

現在、北マケドニアにはガリチツァ国立公園、マブロヴォ国立公園(英語版)、ペリスター国立公園(英語版)およびシャール山脈国立公園の4つの国立公園が存在している。「北マケドニアの国立公園の一覧(英語版)」も参照
生態系
動物相詳細は「北マケドニアの野生動物(英語版)」を参照
植物相北マケドニアの植生地図
緑色の部分は森林であり、国の大部分を覆っていることが覗える詳細は「北マケドニアの植物(英語版)」を参照

北マケドニア共和国の植物は約210科存在しており、920属に上る。同国の植物相は約3,700種の植物で構成されている。
地方行政区分詳細は「北マケドニアの基礎自治体」を参照


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