北キプロス・トルコ共和国
[Wikipedia|▼Menu]
1983年-1984年の国旗。国旗が赤と白で反転されている。

トルコ系住民はトルコの庇護のもと、翌1975年にキプロス連邦トルコ人共和国を結成し、キプロス共和国の連邦国家としての再編成を要求した。これを受け1970年代を通じて国際連合仲介により断続的に統合交渉がもたれたが、南キプロスがクーデター以前の体制の復活を要求したのに対し、北キプロスは南北キプロスによる対等な連邦国家樹立を要求するなど交渉は折り合いを見せず、北キプロス側は1983年11月15日に独立を宣言した。これにより両国の分断状態は確定したものとなった。

2004年、国連は連邦制による再統合案を示して交渉を仲介し、南北同時住民投票にこぎつけたが、南側の反対多数により否決された。この結果を受けて分断状態の長期化、固定化を懸念したヨーロッパ連合(EU)は北キプロスの経済支援を開始し、直接通商の解禁を表明するなど北キプロスを独立国家として認め、実質的に国際社会へ参加させようという動きも起き始めている。

2016年11月7日、南北キプロスの再統合交渉がスイスのモンペルランにて開催。再統合後に連邦制を採用することが合意され、年内の包括合意を目指して協議を進めることとなった[5]が、トルコ軍の駐留を巡る対立により交渉は決裂した[6]
政治「北キプロスの大統領」および「北キプロスの首相」も参照

国家元首大統領。分割以前にキプロス共和国副大統領だったトルコ系有力政治家のラウフ・デンクタシュが1975年にトルコ系住民地区に立てられたキプロス連邦トルコ人共和国の大統領に就任し、1983年の一方的な独立宣言後も続けて大統領の座にあり、2005年に退任するまで合計30年もの間務めた。1985年に定められた憲法により、大統領の任期は5年と定められている。

立法は一院制の共和国議会(定員50名、任期5年)で、議院内閣制にもとづいて首相が置かれる。司法は長官と7名の判事を擁する最高裁判所が司る。
国防

国防はトルコに依存しており、現在も支配領域には数万人規模のトルコ軍が駐留する。北キプロスに軍は存在しないが、警備隊を保有している。沿岸警備隊と警備隊航空司令部があり、警備隊航空司令部はAS 532 (航空機)を2機保有しており、兵員輸送や哨戒、捜索救難に使用する。なおラウンデルは存在しない。沿岸警備隊は16隻の艦船を保有している。
国際関係「キプロス#キプロス問題」も参照

2023年7月27日現在、北キプロスを国家承認する国はトルコ共和国以外に存在しない。(一方のキプロス共和国は国際連合加盟国の193ヶ国中、トルコ以外の192ヶ国から国家承認を得ている)キプロス共和国からの分離に至る経緯から、建前としては独立国家という形をとっているが、独立後も実際にはトルコの強い影響下に置かれている傀儡政権とみられている。首都レフコシャ(ニコシアトルコ語名)において、国会の建物よりもトルコ大使館の方が大きい。そのため、トルコ軍の支援なしに独立できなかったのだから国家の要件たる実効的支配をなしうる政府が欠けているとして、北キプロスは国家として国際法上成立していないとする学説もある(小寺他「講義国際法」より)。前述のとおり日本政府は北キプロスを国家承認しておらず、その領土については「トルコ軍実効支配地域」と呼称している。

元々、キプロス共和国の独立(1960年)以前から、トルコ系住民の間にはキプロス島をトルコ系とギリシャ系の領域に分割してトルコに帰属させるべきとの主張があり、トルコはキプロス問題の行方によっては北キプロスを併合することもありえるとしてきたほどである。近年のトルコ共和国は、国際連合案による統合住民投票に賛成するなど、EU加盟交渉をにらんでキプロス問題に対する態度を柔軟化させているが、一方で依然として南のキプロス共和国の承認を拒み、北キプロスから手を引かない姿勢も見せている。2020年11月15日、北キプロスを訪問していたトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、南北統合に対して否定的な見解を述べた[7]

ヨーロッパ諸国は、1974年のトルコによる北キプロス占領以来、北キプロスに対して経済制裁を加え、通航、通商などを厳しく制限してきた。2004年にはキプロス共和国のヨーロッパ連合(EU)加盟に先立って行われた住民投票で北キプロスの住民の大多数が再統合に賛成したことが評価され、EUは経済制裁の解除、経済支援の実施を表明したが、加盟国キプロス共和国の反対などにより規模を制限された。

また、トルコも参加するイスラム諸国会議機構 (OIC) は以前から北キプロスをオブザーバーとして参加させてきたが、2004年に参加体の名目を「キプロス・ムスリム・トルコ共同体」から「トルコ系キプロス政府」に改めた。ただし、この措置はOICがキプロスを国家として承認したわけではなく、先の住民投票で用いられた北キプロス政府に対する呼称を尊重したものであると説明されている。

2022年よりテュルク諸国機構のオブザーバーとなる[8]
地方行政区分詳細は「北キプロスの行政区画」を参照

国土面積(実効支配地域)はキプロス島の約36%を占め、現在の沖縄県奄美群島を足した面積にほぼ等しい。北キプロスは6つの地区に分かれている。
経済

トルコのみが承認する独立国家であるという事情から、貿易相手がトルコのみに限られ、外国からの資本導入も難しいという事情のために、欧州連合加盟を果たした南キプロスに対して、大きな経済格差を起こしている。北キプロス独自の通貨はなく、トルコの通貨を用いている。2005年の新トルコリラ導入を経て、現在の通貨はトルコリラ(TRY)である。トルコに経済的に依存しているため、1990年代以降、旧トルコリラ(TRL)のインフレーションの影響を受けて苦しんだ。

観光客の誘致を進めるために、トルコでは禁止されているカジノがあるが、後述する交通の問題と入国上の不利もあり、観光産業は南キプロスと比べると好調とは言えない。

近年では教育産業が意外な発展を遂げている。欧州アフリカ中東のいずれからも近く、強大なトルコ軍の支援があるため治安がよい。また欧州よりも生活費が安く、英語で授業を受けることができる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:60 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef