化石燃料
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1846年にはロシア帝国領だったバクーにおいて地中深くから石油を掘り出す油井が造られ、これに続いて世界各地で油田が開発された。掘削やボーリングの技術革新によって生産量は増大し、さらに石油精製技術の発達によって用途が多様化すると各地で原油が大量生産されるようになり、価格も下がって、まもなく石油は鯨油に替わる照明用油の主力となった[19]。いったん燃料として使用されるようになると、使われる成分は常温液体のため(気化しやすい成分については圧縮すると液化し LPG として使われる)使い勝手が良く、特に1870年代に内燃機関が開発され普及し始めると、その燃料として利用が急速に増大し、外燃機関でしか使用できない石炭に代わり世界のエネルギー供給の最も重要な部分を占めるようになった[20]。この特性から石油は自動車飛行機といった内燃機関を使用する輸送機器において特に重要なものとなっているが[21]、このほかにも発電や、従来は木炭などが主に使われていた暖房・給湯など、様々な用途の燃料として大量消費されるようになった。こうして1950年代以降世界のエネルギー供給の主流は急速に石炭から石油へと移行し、この変化はエネルギー革命と呼ばれるようになった[22]。石油は世界を動かすまさしく根幹となり、石油を産出する産油国は経済的に大きな力を持つようになった。1973年には第四次中東戦争が勃発するが、このときアラブ石油輸出国機構が石油戦略を行い原油価格を大きく引き上げたことで世界経済が大混乱に陥ったいわゆるオイルショックは、このことを端的に示している[23]

しかし、石油資源は中東地域への偏在が大きいため、オイルショック以降は世界各地に存在する天然ガスも燃料として盛んに使用されるようになった[24]。その後いったん原油価格は低迷したものの、21世紀に入り原油価格が急騰すると、シェールガスシェールオイルといった、従来コスト高のため放置されていた化石燃料、いわゆる非在来型化石燃料の開発が始まった[25]。さらに同時期、新たな燃料として海底に存在するメタンハイドレートの研究が盛んとなったが、採取の難しさや温室効果が高いことなどから実用化はなされていない[26]

化石燃料はいずれも燃焼時に大量の温室効果ガスを排出するが、種類別にみると褐炭の単位当たり排出量が極めて大きく、石炭や石油も多い一方で、天然ガスの排出量はやや少なくなっている[27]。このため液化天然ガスの利用が21世紀に入り推進されている[28]
生産と消費

石油生産量は需要増に伴って増加傾向にあり、2016年には日量9215万バレルとなっている。2018年時点で石油生産が最も多い国家はアメリカ合衆国であり、次いでサウジアラビアロシアの順となり、この3ヶ国が日量1000万バレルを超えている。4位のカナダが520万バレルで、5位以下は500万バレルを下回っており、上位3ヶ国の生産がやや突出している。なお5位以下は、イランイラクアラブ首長国連邦中華人民共和国クウェートブラジルの順となっている[29]。かつては長らくロシアとサウジアラビアが石油生産量トップの座を争っていたが、シェールオイル開発の発展に伴い2010年代に入るとアメリカの生産量が急伸し、2018年に世界最大の産油国となった[30]。天然ガス生産は2016年に約3.6兆m3となっている[31]。石炭生産量は2016年度には約73億トンであり、そのうち中華人民共和国が32億トンと40%以上を占めており、2位のアメリカの約7億トンの4倍以上となっている。なお、3位以下はインドオーストラリアインドネシア、ロシア、南アフリカポーランドカザフスタンコロンビアの順となっている[32]

部門別に見ると、石油消費は運輸部門で圧倒的に大きく、同部門の総エネルギー消費の90%以上は石油によってまかなわれている[33]。これは、自動車や飛行機、船舶などの燃料が石油によってほぼ占められていることによる。電気やエタノールなどによる代替燃料開発も進められているものの石油に取って代わることは困難であり、2040年度予測でもこの状況にそれほどの変化はないと考えられている[34]。同じく石油が代替困難なもう一つの分野は石油化学工業部門であり、やはり同様に2040年度においても大半は石油を使用したままだと考えられている[34]。天然ガスは産業部門と発電部門で主に用いられるが、需要の伸びは2010年代に入り減速している[35]。石炭使用は2000年代に入り急伸したが、二酸化炭素排出が大きく環境への負荷が大きいことから先進国を中心に代替が進み、発展途上国での使用が中心になるとみられている[36]。石炭は発電部門のほぼ50%を占めているほか、産業部門でも熱の供給や鉄鋼製造などにおいて広く使用されている[37]

化石燃料は有限であり、さらに世界経済の成長に伴って消費量が急増を続けていることから、1970年代より化石燃料の枯渇は問題として長く叫ばれ続けている。一方、探査の進展や採掘技術の進歩などによって可採埋蔵量は増加し続けており、そのため可採年数はほぼ変化していない[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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