化学
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原則的に近年の化学では、全ての物質が原子からできているとの仮説[11](あるいはフレームワーク)を採用し、物質の性質は原子自体の状態や、原子同士の結びつきかた(化学結合)で決定されると考える[注 1]。したがって、繰り返しになるが、基本的に現代の化学は、原子・分子レベルでの物質の構造や性質を解明して、また新しい物質や反応を構築して[10]、「物質とはなにか」に関する知見を積み上げる学問である[7]

化学は典型的な蓄積型の学問である。取り扱う物質の種類は増える一方で、1980年代には600万種を越え、しかも年平均1000種が追加されていた[12]。これらは基本的に減ることは無いため、それに関する情報は増加の一途をたどる。数世紀前の実験で得られた基礎的なデータですら(間違いでない限り)重要性を失わない。同様に古典的な方法論も最新の量子論的手法と同じくらい高い価値を持つ。[10]

しかしながら、学問としての化学の成立は遅い。数学、物理学、天文学などが2000年前の古代ギリシアで構築され始めたのに対し、科学の一分野として扱うことができる近代的化学のほうは、18世紀末にフランスのアントワーヌ・ラヴォアジエ(1743年 - 1794年)の質量保存の法則(1774年発見)[13]ジョン・ドルトン(1766年 - 1844年)の原子説[11]が正しい方向付けをした[4]事に始まってから、まだ200年程度しか経過していない[13]#歴史化学の歴史も参照)。これは近代物理学の最初の到達点であるニュートン力学が『自然哲学の数学的諸原理』(プリンキピア)に書かれた年(1687年)と比べ、化学の興隆が100年程度時代が下ることを意味する。

その短い歴史の中で、化学は大きな末広がりの構造を持つに至った。化学の基礎的な部分はほとんど固められ、根底から転換がなされる余地はほとんど無い。ところが、物質に対する理解が進み、応用が広がる中で化学が担う役割はほとんど全ての生産・製造に深く関わるようになった[10]。さらに、弱い相互作用を重視した新しい物質像の構築や、自然との調和を実現するための環境化学など、近年になって化学はさらに広がりを見せつつある[15]
化学で扱う基本的なこと周期表は化学のバイブルとも言われる[16]
原子の種類と構造詳細は「原子」を参照

化学では、物質の基本単位を原子として、その原子が持つさまざまな性質を抽象的概念である「元素[17]として把握する。原子論が確立した現代では、その特徴を理論的に掴む上で、原子核陽子中性子)および電子までの原子の構造から原子番号質量数電気素量イオン同位体などを決定し取扱い、各元素が持つ性質を理解する。[18]

原子が持つ周期的性質(周期律)は初期の化学が発見した一大成果である[19]。この物理的性質の近似を生む要因である電子配置から、各元素のイオン化エネルギー電気陰性度酸化数原子半径イオン半径などの特徴が理論づけられる[20]。この周期律を簡略な表にまとめた周期表は化学のバイブルとまで呼ばれる[19]

元素の性質を記述することは、化学の中でも量子力学統計力学が取り扱う。周期律は、量子力学の成立をもって初めてその本質が明瞭になった[7]。原子内の電子配置はボーアの原子模型では限界がある[21]ので、波動力学パウリの排他原理波動関数[22]、そして電子のエネルギー準位で説明される[20]


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