がある。これは化学工学の成り立ちから、生化学が特殊な位置づけにあるためこうして専門的に取り扱われている。 イギリスにおける産業革命の進展により、化成品の量と質に対する要求が急増し、結果として生産工程の効率化と大規模化が必要となったのが嚆矢である。工業化学は1800年代中盤より発展しつつあったが、大規模な化学プロセスの制御に工学的手法が有用であるという発想は1880年代まで現れなかった。1887年にジョージ・デーヴィス(en:George E. Davis
化学工学の歴史
一方アメリカでは、第一次世界大戦の前後、内燃機関の発達とそれに伴う石油化学産業の必要性から、有機化学製品の大量生産が要求されるようになった。しかし、プラントにおける実際の処理を研究対象とする学問はなく、それぞれが経験や勘に基づいた処理を行っていたため、最適なプラントを設計する学問が求められた。反応、分離、精製といった物理的処理を整理し、プロセスを合理的に構成しようという試みが為され、化学工学の思想の根幹ともいえる「単位操作(Unit operation)」という概念が提唱された。これにより関連がなかった個々の製造体系を、単位操作の組み合わせであるとして同じ学問で研究することを可能にした。化学工学の最初のテキストは、W. H. Walker, W. K. Lewis, W. H. McAdamsらによる「Principles of Chemical Engineering」(1923)であると考えられている[2]。
当初はこの単位操作の確立と応用を中心としたが、やがて1940年代にはプロセスの中心となる反応に関する研究が不可欠となり反応工学が生まれた。さらに1960年代には各単位操作に共通な問題を研究するため、移動現象論や粉体工学が成立した。1970年代にプロセス全体を扱うプロセスシステム工学を生み出した時点で、化学工業のプロセスを総合的に研究する学問として化学工学は確立されたといえる。 明治時代の学制において、帝国大学などはその範を主にドイツに仰いだ。そのうち化学という学問の中のひとつとして、工業化学という科が持ち込まれた。 この科は産業界における化学者を育成するという理念に基づいていたので、研究の中心は産業界においての化学であった。 第二次世界大戦直前に、米国の大学から化学工学の概念が日本に輸入され、京都大学、東北大学、東京工業大学などにおいて、化学工学科(当時は化学機械科と呼ばれた)が設置された。さらに戦後、多くの大学でも同様の学科が設置され特に戦後の日本の石油化学産業の発展に貢献した。 各大学での化学工学科は1990年前後に改変されたところが多く、現在、化学工学の学科名としては少なくなっている。化学システム工学、物質工学科、プロセス工学科、生物化学工学科、化学物理工学科などを名称にした大学が多い。 アメリカではプラグマティズムの気風が強く、化学工学の教科書では大体、前半に経済計算、特にプロジェクトエコノミクスに1章から数章割かれているのが普通である。しかし、それらの章は日本の化学工学の教科書からはほぼ抜け落ちており、化学工学が日本に渡った際、なんらかのアカデミズムの影響をうけたものと推測される。
日本の化学工学
日本の化学工学に関連する主な大学・大学院
北海道大学 工学部 応用理工系学科 応用化学コース / 総合化学院 分子化学コース プロセス工学講座
東北大学 工学部 化学・バイオ工学科 / 工学研究科 化学工学専攻
東京大学 工学部 化学システム工学科 / 工学系研究科 化学システム工学専攻
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 応用化学コース / 物質理工学院 応用化学系 エネルギーコース
東京農工大学 工学部 化学物理工学科 / 工学府 化学物理工学専攻
名古屋大学 工学部 マテリアル工学科 / 工学研究科 化学システム工学専攻
京都大学 工学部 工業化学科 化学プロセス工学コース / 工学研究科 化学工学専攻
大阪大学 基礎工学部 化学応用科学科 化学工学コース / 基礎工学研究科 物質創成専攻 化学工学領域
神戸大学 工学部 応用化学科 化学工学講座 / 工学研究科 応用化学専攻 化学工学講座
広島大学 工学部 第三類 化学工学プログラム / 先進理工系科学研究科 先進理工系科学専攻 化学工学プログラム
九州大学 工学部 化学工学科 / 工学府 化学工学専攻
鹿児島大学 工学部 先進工学科 化学工学プログラム / 理工学研究科 工学専攻 化学工学プログラム
参考文献[脚注の使い方]^ Delgass et al. “Seventy-Five Years of Chemical Engineering”. Purdue University. 2013年8月13日閲覧。
^ 「 ⇒化学工学は「絶滅危惧学科」か」『日本機械学会誌』第127巻第1265号、日本機械学会、2024年4月5日、32頁。
関連項目
プロセス (工学)
単位操作
移動現象論
反応工学
分離工学
粉体工学
プロセスシステム工学
プロセス制御
プロセスモデル
工業化学
物理化学
熱力学
流体力学