動物
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海綿動物は相称性や胚葉がなく体制が単純であるため[162]、最も初期に分岐した後生動物として直感的に受け入れられやすいのに対し、有櫛動物は放射相称、神経系と筋系をもつため、有櫛動物より後に海綿動物が分岐したと考えると筋系や神経系が有櫛動物と Parahoxozoa(有櫛動物と海綿動物以外の後生動物)で2回独立に獲得したと考えるか、海綿動物でどちらも1回完全に喪失したと考えなければならないため、大いに議論を呼んだ[11]。系統誤差の影響を軽減することで、再び海綿動物が最も初期に分岐したと考えられる結果が得られている[159][166]

海綿動物 Porifera は相称性がなく胚葉がないなど最も単純なボディプランを持つ[162]。海綿動物の細胞は分化するものの、組織を形成することはなく[172]、複雑な器官をもたない[173]。そういったことから海綿動物は側生動物 Parazoa Sollas, 1884 と呼ばれることもある[9][37]

刺胞動物有櫛動物の体は放射相称性を持ち、唯一の腔所である胃腔の開口は口と肛門を兼ねる[174]。これらの動物門の細胞は組織に分化しているものの、器官を形成していない[175]。中胚葉が形成されない二胚葉性の動物であるとされるが、細胞性である間充織を中胚葉とみなし、ヒドロ虫綱以外の刺胞動物と全ての有櫛動物を三胚葉性とみなす事も多い[152][176]

刺胞動物は触手に物理的または化学的刺激により毒を含む刺糸を発射する刺胞と呼ばれる細胞器官を持つ[174]。漂泳性(クラゲ型)と付着性(ポリプ型)という生活様式の異なる2つの型を持ち雌雄異体である[174]。かつては単細胞生物とも考えられていた寄生性のミクソゾアは分子系統解析により刺胞動物に内包されている[176]

それに対し有櫛動物は1個の細胞が変形してできた膠胞を持ち、中胚葉性の真の筋肉細胞を持つほか、全てクラゲ型であり、二放射相称で雌雄同体である[177][178]

平板動物は神経細胞も筋肉細胞も持たず、体細胞は6種類しかなく器官や前後左右軸をもたない、自由生活を行う動物として最も単純な体制を持つ[176]。しかし2008年にセンモウヒラムシ Trichoplax adherens のゲノム解読がなされ、シグナル伝達系、神経シナプス細胞結合などに関する多くの遺伝子の存在が報告された[176]
左右相称動物「左右相称動物」も参照

4つの門を除いた全ての動物門が左右相称動物である。左右相称動物は完全な三胚葉性で[179]、体が左右相称である[179]。外見上は左右対称であるが、内部の臓器は限られた空間の中に各臓器を互いの連結を保ちながら機能的に配置するために、位置や形が左右非対称となっている[30]

左右相称動物は肛門、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に体腔ないし偽体腔(線形動物、輪形動物など)を持つ。左右相称動物のボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である[180][181]。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する感覚器や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある(頭化という)。多くの左右相称動物は環状筋縦走筋のペアを持つので[181]、ミミズのような体が柔らかい動物では流体静力学的骨格(水力学的骨格、流体包骨格、hydrostatic skeleton)の蠕動により動く事ができる[182]。また多くの左右相称動物には繊毛で泳ぐことができる幼生の時期がある。

以上の特徴は例外も多い。例えば棘皮動物の成体は(幼生とは違い)放射相称であるし、寄生虫の中には極端に単純化された体の構造をもつものも多い[180][181]
珍無腸動物「珍無腸動物」も参照

珍無腸動物門(珍無腸形動物門) Xenacoelomorpha は珍渦虫無腸動物からなる左右相称動物であり、その単系統性は分子系統解析から強く支持されている[11][145]。その系統的位置に関しては、左右相称動物の最も初期に分岐したとする説[146][147] と後口動物の一員であるとする説[148][149][158] がある。前者の考えを支持する場合、珍無腸動物以外の全ての門を含む左右相称動物は有腎動物 Nephrozoa と呼ばれる[11][146][168]

珍渦虫 Xenoturbella は1878年に発見され、1949年に報告されたが、その分類は長らく謎で、渦虫の珍しい仲間だと思われていた[183]。しかし2006年以降、分子系統解析により、後口動物に入ることが示唆され、独立した珍渦虫動物門 Xenoturbellida が設立された[184][185]

無腸動物 Acoelomorpha は無腸類と皮中神経類からなり、それぞれ扁形動物門の無腸目および皮中神経類に分類されていたが、1999年の分子系統解析によって初期に分岐した左右相称動物であることが示唆された[145]。Jaume Baguna と Marta Riutort によって左右相称動物の新しい門として分離された[186]

2011年、Philippe や中野裕昭らは分子系統解析により珍渦虫動物と無腸動物をともに珍無腸動物門という動物門を構成することを提唱した[148]。そして、チンウズムシの自然産卵による卵と胚の観察結果を報告し、摂食性の幼生期を経ない直接発生型であるなどの共通点を指摘した[187]。珍無腸動物門は設立当初新口動物に分類されたが[145][149][188]、その後の研究により当時知られていた左右相称動物のサブクレード、後口動物・脱皮動物・冠輪動物(螺旋動物)のいずれにも属さず、これら3つ(有腎動物)の姉妹群となる最も初期に分岐した左右相称動物とされた[146][147]。しかし2019年に再び長枝誘因などの系統誤差の影響を軽減することで、珍無腸動物は後口動物の水腔動物との姉妹群であることが支持された[149][189]
毛顎動物「毛顎動物」も参照

毛顎動物ヤムシと総称される動物で、かつては成体の口が原口に由来しないという発生様式から後口動物とされてきた[190][191]。しかし、主な中枢神経が腹側にあることや顎毛(餌の捕獲器官)にキチン質をもつことなど、前口動物の特徴も持つことは古くから知られてきた[191]


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