後口動物(新口動物)は棘皮動物門、半索動物門、脊索動物を含み、新口動物とも呼ばれる[151][233]。ヘッケルは新口動物の共通祖先から脊索動物が進化した過程を論じた際、棘皮動物の幼生[注釈 33] と半索動物のトルナリア幼生が共有する形質を合わせて、それらの祖先型として、ディプリュールラ幼生 (Dipleurula) という仮想的な幼生を考えた[234]。ディプリュールラ幼生はトロコフォア幼生と同様に口から肛門に至る消化管、頂器官に感覚器としての長い繊毛、口を中心とした繊毛帯(または繊毛環)、体後端部の端部繊毛帯を持つが、ディプリュールラ幼生では3部性の体腔(原体腔・中脳腔・後脳腔)を持つことおよび繊毛帯の走り方が異なる[234][235][236]。
2018年現在、棘皮動物と半索動物が姉妹群をなすという説が大勢を締めており[11][237]、これら2つをあわせて水腔動物 Coelomopora という[11]。
後口動物は胚発生において陥入によってできた原口が口になる前口動物に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物であり、かつては現在後口動物とされる棘皮動物、半索動物、脊索動物だけでなく、触手冠動物としてまとめられる箒虫動物、苔虫動物(外肛動物)、腕足動物、そして毛顎動物を含んでいた[233][238]。これはブルスカとブルスカ (1990)、メルグリッチとシュラム (1991)などによる形態形質に基づく系統解析でも、原口に由来しない口を持つだけでなく、原腸由来の中胚葉を持つことや腸体腔を持つことなどの形質からも支持されていた[238]。ほかにも、放射卵割を行うなど[75]、後口動物としての性質を多く持っている。しかし分子系統解析の進展により、触手冠動物および毛顎動物は前口動物に属すると考えられるようになった[75][221][196]。この変更以降も「後口動物」という系統群名を用いるが[239][240][241][242][242][243][244][245] 、毛顎動物や腕足動物のような原口が口にならない動物も前口動物に含まれ[75]、単純に原口の有無が系統を反映しているわけではない。 水腔動物
水腔動物
棘皮動物は、成体が五放射相称、三胚葉性で、内胚葉由来の中胚葉(内中胚葉)を持つ[246]。腸体腔性の体腔で、体腔に由来する水管系と呼ばれる独自の構造をもつ[246][247]。神経系は中枢神経を持たず、神経環と放射神経からなるが、ウミユリ綱では神経節を持つ[246]。ウミユリ綱、ヒトデ綱、クモヒトデ綱、ナマコ綱、ウニ綱からなり、分子系統解析によりこれらのうちウミユリ綱が最も祖先的だと考えられている[246][247]。ウニ綱のうちタコノマクラ類やブンブク類では五放射相称が歪み左右相称性を示す[247]。
現生の半索動物はギボシムシ綱(腸鰓綱)とフサカツギ綱(翼鰓綱)からなり、化石ではフデイシ綱が置かれる[248][249][250]。どちらも体は前体・中体・後体の3つの部分に分かれるという共通した形質を持ち、前者では吻・襟・体幹と呼ばれ、後者では頭盤・頸・体幹と呼ばれる[251]。ギボシムシ綱では腸体腔と裂体腔をもつとされるが、体腔形成には不明な点も多い[252]。ギボシムシ綱は側系統で、ギボシムシ綱のハリマニア科がフサカツギ綱と姉妹群をなし、フサカツギ綱はギボシムシ綱から小型化によって体が二次的に単純化したと考えられる[251]。半索動物は脊索動物と同様に鰓裂を持つ[250][253]。かつては口盲管という器官が脊索の一種と考えられたこともあったが[252]、口盲管と脊索との関係を支持する発生遺伝学的研究結果はなく[253]、現在では脊索を持たないとされる[250]。
脊索動物「脊索動物」も参照
脊索動物 Chordata は頭索動物・尾索動物(被嚢動物)・脊椎動物を含むクレードで、一生のうち少なくとも一時期に鰓裂・脊索およびその背側に背側神経管を持つという形質を共有する[250][254]。脊索は膨らませた細長い風船に喩えられる中軸器官で、脊索鞘という繊維質の頑強な膜に脊索細胞が包まれている[250]。頭索動物および尾索動物がもつ内柱は脊椎動物における甲状腺と相同で、甲状腺は内柱の変化したものと考えられている[254]。発生はさまざまであるが発生の一時期には肛門の後方に筋肉により運動する尾状部分があり、オタマジャクシ型幼生(tadpole larva)を経る[254]。
脊索動物は脊索と背側神経管という共通する二つの特徴をもつことから1つの門に置かれ、その中の3群は亜門に置かれてきたが、佐藤矩行・西川輝昭 (2014)により、分子系統学的解析および3群がそれぞれ特徴的な形質を持つことに基づいて脊索動物をより高次の上門に置き、3群を門に格上げする考えが提唱された[250][255][256]。
頭索動物:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間
オルファクトレス
尾索動物:一生(オタマボヤ綱)ないし一時期に尾部に脊索を持つ。ホヤ綱[注釈 34]、オタマボヤ綱、タリア綱(ヒカリボヤ、ウミタル、サルパなど)からなる。
脊椎動物:脊索の周囲に脊椎が形成される。