動物
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一方、五界説での動物は3ドメイン説のものと基本的に同じであり、原生動物は原生生物として動物とは区別されている。[要校閲] 

動物は、真核生物の中でもオピストコンタ(後方鞭毛生物、Opisthokonta)という単系統性が強く支持される系統群に属し、ここには動物以外に菌類や一部の真核生物が属する。オピストコンタに属する生物は、後ろ側にある1本の鞭毛で進むという共有形質を持ち、動物の精子ツボカビ胞子が持つ鞭毛がこれにあたる。オピストコンタはアメボゾア Amoebozoaとともにアモルフェア Amorphea というクレードにまとめられる[9][10]

さらにオピストコンタにはホロゾア Holozoa というクレードと、ホロマイコータ Holomycota というクレードがあり、動物は前者、菌類は後者に属する[9]。なお動物の起源とされる(後述)襟鞭毛虫もホロゾアに属する[9][11]。前述の通り後生動物を動物界として扱うこと[12][13][14] が多いが、このホロゾアを動物界と見なす試み[15]もある。

また、Adl et al. (2019)では、後生動物 Metazoa Haeckel1874 emend. Adl et al., 2005を正規のランク[注釈 6]とし、動物 Animalia Linnaeus1758 および真正後生動物 Eumetazoa Butschli, 1910と同義(後生動物のシノニム)として海綿動物、平板動物、刺胞動物、有櫛動物を含めながらもそれらを除いた左右相称動物に相当する階級とした[9]
学名と命名法

動物の学名は国際動物命名規約にて運用される[16]。現行の規約は2000年1月1日に発効した第4版である[17]。この命名規約では「動物」という語は本項で示す後生動物を指すが、原生生物であっても研究者によって動物(原生動物)として扱われる場合は命名法上は「動物」として扱われ、この命名規約が適用される[18][19]。(真核生物の命名規約には、国際動物命名規約国際藻類・菌類・植物命名規約があり、このどちらかに則らなければ学名と見なされない。)

動物命名法の起点はカール・フォン・リンネ (1758)の Systema Naturae 『自然の体系 第10版』およびカール・アレクサンダー・クラーク (Carl Alexander Clerck) (1757)の Aranei Svecici であり、ともに1758年1月1日に出版されたとみなされる[20]
特徴

動物は一般的に以下のような共通する形質を持つ。

多細胞真核生物である[21][22]

従属栄養生物である[22][23]。すなわち植物のような独立栄養生物と違い、無機物から自力で栄養源を得る事はできない。

非常に少数の例外的な動物を除き、好気呼吸する[24]。すなわち酸素を使った細胞呼吸をする。

運動性がある[25]。すなわち、自発的に体を動かす事ができる。ただし生涯の途中で付着生物と化すなど、運動性がない時期がある動物もいる。

ほとんどの動物には、胚発生の初期に胞胚という段階がある[26]

また、動物の体制(ボディプラン、bodyplan、Bauplan)を比較する上で、細胞の単複(多細胞化)、組織器官の有無(器官分化)、そして体軸の対称性、胚葉性と体腔が重視されてきた[27][28]
体軸「体軸」も参照

胚が形成される過程で、体軸という体の向きが決定がなされ、その向きには前後軸(頭尾軸)、背腹軸、左右軸の3つの基本的な軸がある[29][30]。動物のパターン形成において、体軸の決定など細胞に位置情報を与える機能をもつ物質をモルフォゲンと呼ぶ[31]

前後軸(antero-posterior axis、頭尾軸、一次軸、吻尾軸)は動物の体制の基本となる軸で、明瞭な背腹軸のない刺胞動物にも見られ、頭部()から尾部(肛門)を貫いている[32]。前後軸の形成にはほとんどの動物(例えば、脊椎動物やコオロギ節足動物)やプラナリア扁形動物)から刺胞動物まで)で Wntリガンド(細胞外分泌性因子)が関わっており、尾部側で Wnt、頭部側で Wnt 拮抗因子が発現している[32]。ただし、ショウジョウバエ(節足動物)では、初期胚において細胞膜の存在しない合胞体として発生する(表割)ため、Wnt のような分泌性因子の濃度勾配ではなくビコイド (bicoid)というホメオドメインを持つ転写因子が蛋白質レベルで頭尾軸に沿って濃度勾配を形成し、形態形成が行われる[32][31]。また、前後軸に沿った分節の形成にもホメオドメインと呼ばれるDNA結合ドメインを共通に持っている Hox クラスター遺伝子が働いており、胚発生が進むにつれ、遺伝子座の 3'-側から順に前後軸に沿って分節的に発現することで前後軸に沿ったそれぞれの位置に固有な形態が形成される[32][33]。Hox 遺伝子群は海綿動物をのぞくほぼすべての後生動物が持っている[33]

背腹軸(dorso-ventral axis)も同様に左右相称動物で認められる動物の体制の基本となる体軸である[32]。扁形動物、節足動物、棘皮動物、脊椎動物など多くの動物で、細胞外に放出される BMP(骨形成因子[34])というリガンドと Chordin などの BMP拮抗因子によってつくられるBMP活性の濃度勾配によって背腹軸が形成される[32]。外胚葉はBMP活性が高いと表皮に、低いと神経に分化するが、19世紀前半から脊椎動物と他の動物では背腹軸に沿った器官配置が反転していることが指摘されており、実際に脊椎動物でBMP が腹側で発現し、背側で Chordin などが発現するのに対し、節足動物(ショウジョウバエ)では背側で BMP に相同な分子 (Dpp, Decapentaplegic) が、腹側で BMP拮抗因子(同、Sog)が発現していることが分かっている[32][34]。逆にショウジョウバエにおける腹側を決めるのは dorsal 遺伝子で、細胞性胞胚期において腹側に転写因子ドーサル蛋白質 (Dorsal)が多く分布し、背側への分化を抑制する[34]。胚発生時から背腹軸が決まっている節足動物とは異なり、両生類(脊椎動物)では、受精の際に精子の侵入と反対側に灰色三日月環が形成され、そこから原腸陥入が起こって Wnt シグナル伝達系のディシェベルド (Dsh, Dishevelled) が活性化して他の因子を活性化し、反応の下流でオーガナイザーを誘導することで背側となる[34]


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