労働関係調整法
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第6条の労働争議の定義に於ては「争議行為発生の虞ある状態」をも労働争議の中に含ましめているが、此の判断については充分に慎重を期し、例えば当事者の一方より右の理由により調停の申請等があった場合にも慎重に之を取扱うこととし、此の点の解釈を繞ってかえって後に紛議の種をのこす等のことがないよう特に注意すること(昭和21年10月14日厚生省発労第44号)。

紛争の種類としては「権利紛争」(裁判所における訴訟手続になじむもの)も「利益紛争」(当事者の合意によってのみ解決されうるもの)も含まれるが、労働組合又は労働者集団が当事者となっているもの(集団的紛争)に限られる。「争議行為が発生するおそれ」とは、実際上は集団的労使関係の当事者間で意見の対立があれば当然に争議行為発生のおそれがあるものとして扱われる。

争議行為

「争議行為」とは、同盟罷業怠業作業所閉鎖その他労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であって、業務の正常な運営を阻害するものをいう(第7条)。

当事者が争議行為としての作業所閉鎖ではない旨言明していたとしても、その行為が現実にその主張を貫徹することを目的とする行為、又はこれに対抗する行為であって、それが客観的に業務の正常な運営を阻害するものであるかぎり、第7条にいう争議行為である。従って、当事者が、「争議行為としての作業所閉鎖でない」「ロツク・アウトでない」と言ったことのみで当該行為が当然に争議行為でなくなるものではない(昭和28年10月30日労収第3321号、昭和28年11月9日労発第249号)。

公益事業

「公益事業」(public utility) とは、次に掲げる事業であって、公衆日常生活に欠くことのできないものをいう(第8条1項)。
運輸事業運輸事業で公益事業と認められるものの範囲は大体次の通りとする(昭和22年5月15日労発第263号)。

一般公衆の需要に応じ鉄道軌道によって、または一定の路線を定め定期的に自動車を運行し若しくは命令航路その他公共の為欠くことのできない航路によつて旅客又は貨物を輸送する事業、但し遊覧のみを目的とするものを除く。

「一定の路線を定め」とは、自動車が常に一定の路を通り、一定地点を経過して運行されていることを要するのであって、単に営業区間が定まっていることのみをもっては足りない。「定期的に」とは、公示した運行表に従って荷物の有無に拘らず定期的に運行されていることを要するのであって、その営業実体が荷物がなければ自動車を運行しないようなものであれば「定期的に」に該当するものとはいえない(昭和26年2月6日労発第10号)。


通運事業法(現在の貨物運送取扱事業法)の規定により運輸大臣の免許を受けている運輸事業、但し、特定の荷主を指定して限定免許を受けているもの及び遊覧のみを目的とする鉄道軌道及び日本国有鉄道(現在のJR。以下同じ)の経営する航路を含む。)により運送される物品に関するものを除く(通運事業とは他人の需要に応じてする左に掲げる行為を行う事業(国の行う郵便の事業を除く。)をいう)。
自己の名をもってする鉄道(軌道及び日本国有鉄道の経営する航路を含む。以下同じ。)による物品運送の取次又は運送物品の鉄道からの受取

鉄道により運送される物品の他人の名をもってする鉄道への託送又は鉄道からの受取

鉄道により運送される物品の集貨又は配達(海上におけるものを除く。)

鉄道により運送される物品の鉄道の車輛(日本国有鉄道の経営する航路の船舶を含む。)への積込又は取卸

鉄道を利用してする物品の運送


上記の事業と一体をなす港湾運送業(海上運送に附随して貨物の船積または陸揚のため荷捌、積卸または、または曳船による運輸をなす事業及びこれらの作業の請負をなす事業)。

港湾運送事業のうち公益事業に該当するものの範囲は、「公益事業である通運事業と一体をなす港湾運送業」のみであって、一体をなしていないその他の港湾運送業はすべて公益事業に該当しないものと解する(昭和25年6月26日労収第4083号、昭和25年9月15日労収第3834号)。


前各項の事業には、その事業を行うのに欠くことのできない信号、監視(以上燈台によるものを含む。)、通信及び修理保全などの業務を含むものとする。
従って以下の如きのものは公益事業と認めない。

会社、工場、事業場、官公衙などが専ら自己の業務上の用に供するため行う運輸事業。

路線を定めず若くは定期的でない貨物自動車運送事業(小運送業として行われるものを除く。)及び旅客自動車運送事業。

馬、牛荷車リヤカー、人力などによる運送事業(小運送業として行われるものを除く。)。
「運輸事業」とは、人又は物を甲地から乙地に運ぶという本来の運送、輸送の業務そのものに限らずその社会における経済発展の段階に応じて社会通念上これと不可欠一体をなすものを含めた事業をいうと解すべきである。不可欠一体をなしているか否かの区別はその事業が形式上本来運輸業務を目的とする企業(バス会社等)の内部で行われているか或は別個の企業となっているかの相違だけでは、にわかに判定し得ないが、今日の段階においては別個の企業として営まれていることは多くの場合不可欠一体をなすものでないと判定される(昭和24年11月1日労収第8208号)。「一般公衆の需要に応じ」「一定の路線を定め定期的に自動車を運行し」て、「旅客または貨物を運送する事業」に該当する限り、当該自動車運送事業に並行する競争路線又はこれに代えて利用しうる他の交通機関の有無にかかわりなく、公益事業である(昭和29年9月25日労発第254号)。日本国有鉄道との請負契約に基づいて行なう車両清掃の事業及び車両蓄電池の現車着脱の事業は、公益事業に該当する(昭和42年2月21日労収第10号)。

郵便信書便又は電気通信の事業郵便(逓送を含む)、電信、電話の事業であつて公益事業と認められるものは、一般公衆の需要に応ずるもののみとし、その事業には、その事業を行うのに欠くことのできない修繕保守補充などの業務を含むものとする。従って会社、工場、事業場、官公衙が専ら自己の業務上の用に供するために行う電信、電話の事業は公益事業と認めない(昭和22年5月15日労発第263号)。


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