労働者
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どの範囲の者を「労働者」として扱うか、大きく分けると「労働者」の概念を統一的に扱う国(ドイツフランスなど)と個々の法令ごとに異ならせる国(アメリカイギリスなど)とがある[2][3]
国際労働機関

国際労働機関(ILO)の2006年の雇用関係勧告(第198号勧告)においては、「いかなる者が雇用関係にある労働者と見なされるのか、労働者はいかなる権利を有するのか、及びいかなる者が使用者であるのかを確定することが重要である」との意見を表明し、以下の勧告を発行している[4]。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}

9 雇用関係にある労働者を保護するための国内政策を実施する上で、当該雇用関係の存在についての決定は、当該雇用関係が関係当事者間で合意された契約その他の方法による事実に反した取決めにおいてどのように特徴付けられている場合であっても、業務の遂行及び労働者の報酬に関する事実に第一義的に従うべきである。

13 加盟国は、雇用関係が存在することについての明確な指標を国内法令又は他の方法によって定義する可能性を考慮すべきである。これらの指標には、次の事実が含まれ得る。(a) 仕事が他の当事者の指示及び管理の下で行われていること、仕事が事業体組織への労働者の統合を含むものであること、仕事が他の者の利益のために専ら若しくは主として遂行されていること、仕事が労働者自身で行われなければならないものであること、仕事がこれを依頼する当事者が指定若しくは同意した具体的な労働時間内若しくは職場で行われていること、仕事が特定の存続期間及び一定の継続性を有したものであること、仕事が労働者に対して就労可能な状況にあることを要求するものであること、又は仕事がこれを依頼する当事者による道具、材料及び機械の提供を含むものであること。(b) 労働者に対する定期的な報酬の支払があること、当該報酬が労働者の唯一若しくは主な収入源となっていること、食糧、宿泊及び輸送等の現物による供与があること、週休及び年次休暇等についての権利が認められていること、労働者が仕事を遂行するために行う出張に対して当該仕事を依頼する当事者による支払があること、又は労働者にとって金銭上の危険がないこと。—2006年の雇用関係勧告(第198号)
日本法による労働者

日本の法制では、個々の法令ごとに労働者の定義を定める方法をとっている。

個別的労働関係における労働者概念については、労働基準法第9条に定められていて、また多くの個別的労働関係法では、労働基準法と密接な関係を持って制定された経緯や、労働基準法から分離独立した経緯等から、労働基準法の労働者概念を用いている。他方、集団的労働関係法上の労働者概念は、労働組合法第3条に定めている。大別するとこの二法に分けられる。
労働基準法

第9条  この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

職場における労働条件の最低基準を定めることを目的とする労働基準法上の労働者は、 同法が定める労働条件による保護を受ける対象を確定するための概念である[5]

「労働者」であるか否か、すなわち「労働者性」の有無は「使用される=指揮監督下の労働」という労務提供の形態及び「賃金支払」という「報酬の労務に対する対償性」、すなわち報酬が提供された労務に対するものであるかどうかということによって判断されることとなる[6]。契約の形や名称にかかわらず、実態としての雇用契約(民法623条)が締結されていると認められるかどうかが基準となる。

「指揮監督下の労働」については、以下の点を判断基準とする[7]

仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無

業務遂行上の指揮監督の有無

拘束性の有無

代替性の有無


「報酬の労務に対する対償性」については、結局において「労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うもの」と言うべきものであるから、報酬が「賃金」であるか否かによって逆に「使用従属性」を判断することはできない。 しかしながら、報酬が時間給を基礎として計算される等労働の結果による較差が少ない、欠勤した場合には応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給される等報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強することとなる[8]

「労働者性」が問題となる限界的事例については、「使用従属性」の判断が困難な場合があり、その場合には、以下の要素をも勘案して、総合判断する必要がある[9]

事業者性の有無

専属性の程度

その他「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点


「労働者」として認められた例


法人の重役で業務執行権又は代表権を持たず、工場長、部長の職にあって賃金を受ける者(昭和23年3月17日基発461号)[10]

共同経営の事業において出資しながら、賃金を受けて働いている者(昭和23年3月24日基発498号)

労働組合の専従職員(昭和24年6月13日基収1073号)労働提供を免除されて組合事務に専従しているが、本条でいう「労働者」にあたる。

請負制の新聞配達人(昭和22年12月27日基発400号)

治療院経営者との関係における、共同経営者たる所属あんま師、はり灸師(所定の要件を満たす場合。昭和36年4月19日基収800号)

個人開業の医院で看護師見習いの業務に従事させ、かたわら家事その他の業務に従事する者(昭和24年4月13日基収886号)

JRA厩務員(特殊の例外的な場合を除き、調教師が「使用者」となり、JRA、競馬共助会、馬主は使用者とならない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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