労働者
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労働組合法上の労働者は、主体となって労働組合を結成する構成員として、使用者との間で団体行動権の行使を担保とした団体交渉法制による保護が保障されるべき者を指す[15]。労働基準法上の「労働者」との大きな違いは、労働組合法上の「労働者」には「使用される者」という要件が課されていないことにある。したがって失業者も含まれるものとされ(昭和23年6月5日労発262号)、また勤務時間の管理を受けず時間的・内容的に自由に業務遂行を行う者も含まれうる。近年の実務では特に、労働基準法では「労働者」として認められなくても労働組合法では「労働者」として認められる者(一人親方フリーランス等)の扱いが問題となっている[16][17]

具体的に労働組合法上の「労働者」かを判断するには、以下の6つの要素を総合的に判断する[18]
業務組織への組み入れ - 労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。

契約内容の一方的・定型的決定 - 契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。

報酬の労務対価性 - 労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。

業務の依頼に応ずべき関係 - 労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。

広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束 - 労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。

顕著な事業者性 - 労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられるか。

仮に1.-3.(基本的判断要素)の一部が充たされない場合であっても直ちに同法上の労働者性が否定されるものではない。また、各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも、4.及び5.(補充的判断要素)を含む他の要素と合わせて総合判断することにより労働者性を肯定される場合もありうる。さらに、各判断要素の具体的検討にあたっては、契約の形式のみにとらわれるのではなく、当事者の認識(契約の形式に関する認識ではなく、当該契約の下でいかに行動すべきかという行為規範に関する認識)や契約の実際の運用を重視して判断すべきである。もっとも、6.(消極的判断要素)が認められる場合は、総合判断において、労働者性を消極的に解し得る判断要素として勘案される。
「労働者」として認められた例


一人親方たる大工(昭和21年6月1日労発325号、昭和25年5月8日労発153号)

家内労働者たるサンダルの賃加工者(「東京ヘップサンダル工組合事件」中労委1960年8月1日労委年報15号30頁)

自由出演契約の下にある放送会社の管弦楽団員(「CBC管弦楽団労組事件」 最高裁判所第1小法廷1976年5月6日判決 民集30巻4号437頁)

プロ野球選手

日本放送協会(NHK)の集金スタッフ[19][20]

公文式の教室指導者[21]

「労働者」として認められなかった例


コンビニエンスストアフランチャイズ加盟店オーナー(東京地判令和4年6月6日。なおオーナー側が判決を不服として控訴[22]) - 「加盟者は、商品の販売・サービスの提供について、独立した事業者と評価するに相応しい裁量を有していると認めるのが相当」「加盟店の営業日・営業時間に制約があるからといって、加盟者の労務提供が時間的に拘束されているとはいえない」等の理由から、コンビニオーナーの労働者性を否定した。

労働金庫法第2条は、「労働者」の定義を労働組合法と同一にしている。
その他の法令

以下の法令では、いずれも労働基準法では基本的には「労働者」に含めていない求職者を各法の対象に含めている点で異なっている。

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律においては、通達にて同法における労働者は「職業の種類を問わず、他人に使用され、労務を提供し、その対価である賃金を支払われる者であること。ただし、現に使用され、及び労務を提供していることは必ずしも必要ではなく、例えば、事業主から解雇され、その当否をめぐり紛争を提起している者については、紛争の対象となっている解雇の時点で「労働者」の要件を満たしていれば、本法の「労働者」に該当するものであること。「労働者」であるか否かは、単に契約内容のみによって外形的に判断するのではなく、実態を踏まえて判断するものであること。」(平成13年9月19日厚生労働省発地第129号/基発第832号/職発第568号/雇児発第610号/政発第218号)としている。基本的には労働基準法の「労働者」性に準拠しつつも、同法では「個々の労働者と事業主との間の紛争」に「労働者の募集及び採用に関する事項についての個々の求職者と事業主との間の紛争を含む。」(第1条)としていて、「求職者」についても「労働者」に準じて法の対象に含めている。

職業能力開発促進法第2条では「労働者」を「事業主に雇用される者(船員職業安定法(昭和23年法律第130号)第6条第1項に規定する船員を除く。第95条第2項において「雇用労働者」という。)及び求職者(同法第6条第1項に規定する船員となろうとする者を除く。以下同じ。)をいう。」と定義している。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)では通達において「労働者」の定義を「雇用されて働く者をいい、求職者を含むものであること」(平成18年10月11日雇児発1011第2号)としている。


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