労働者
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個人開業の医院で家事使用人として雇用し看護師の業務を手伝わせる場合(昭和24年4月13日基収886号)

宗教団体において宗教上の儀式、布教等に従事する者、教師、僧職者等で修行中の者、信者であって何等の給与を受けずに奉仕する者(昭和27年2月5日基発49号)。ただし、僧侶が宗教法人のために労務を提供する場合には、宗教法人と僧侶との関係が単なる宗教的関係を越えた労働関係となり、僧侶が「労働者」とみなされることがある[13]

農村における公役(昭和24年6月13日基収1730号)

受刑者(昭和23年3月24日基発498号)

非行少年が少年法の規定により補導を委託された施設等において作業に就く場合(もっぱら作業が生活指導または職業補導の一環として行われている場合。昭和40年5月20日基収445号)

入院患者が病院のために治療目的で作業に従事する場合(原則。昭和43年8月15日基収3650号)

障害者総合支援法に基づく就労継続支援を行う事業場と雇用契約を締結せずに就労機会の提供を受ける障害者(B型事業場)については、事業場への出欠、作業時間、作業量等の自由があり指揮監督を受けることなく就労する者とされているから、基本的には「労働者」に該当しない。ただし、A型事業場と雇用契約を結んで就労機会の提供を受ける場合、基本的には「労働者」に該当する(平成19年5月17日基発0517002号、平成24年3月30日基発0330第30号)。小規模作業所等において作業に従事する障害者は、作業が訓練等を目的とする旨が明らかであり、訓練等の計画が定められ、作業実態がその計画に沿ったものである場合には当該作業等に従事する障害者は「労働者」としては取り扱わないが、計画が定められていない場合、作業実態を総合的に判断し、作業の強制、作業指示、遅刻・早退・欠勤や指導命令違反に対する制裁等がある場合には、「労働者」として取り扱う(平成19年5月17日基発0517002号)。

自己所有のトラックによって運送委託契約に基づく輸送業務に従事する運転手(横浜南労基署長事件、最判平成8年11月28日)。業務遂行による指揮命令関係の希薄さ、場所的・時間的拘束の弱さ、事業者性等の総合判断から労働者性を否定した。その後、会社からトラックを買い受けて専属使用し給与から償却していた運転手の事例について、当該車両を「専属使用」する目的を考慮して労働者性を肯定した判例(山昌事件、名古屋地判平成14年5月29日)や、会社貸与の車両で運送業務に従事していたものについて労働者性を肯定する判例(アサヒ急配事件、大阪地判平成18年10月12日)がある。

大相撲力士 - 日本相撲協会と力士との契約関係を「有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約」と解するもの(東京地判平成25年3月25日)、準委任契約類似の契約関係(東京地決平成23年2月25日)と解するものがあるが、一般的な労働契約であるとは解されていない。

プロ野球審判員(東京地判平成20年2月26日)

ワーカーズ・コレクティブ(法形式としては中小企業等協同組合法に基づく企業組合)の組合員として、運営会議に出席し、トラックドライバーとして就労している者(企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件、東京地裁立川支判平成30年9月25日、最高裁で確定) - 運営会議で等しく発言している実態等から「事業者性が否定されない」として「労働者性」を認めなかった。なお令和2年に成立した労働者協同組合法では、労働者協同組合の組合員として事業に従事する者は「労働者」として明確に位置づけられることとなった。

シルバー人材センターと会員との間の法的関係は請負又は準委任が原則であり、センターの業務は雇用ではないという制度趣旨から、会員とセンターとの間の労働契約関係を否定した判決がある(東京地判平成26年9月5日)。一方、会員の労働者性を肯定した判決もあり(神戸地判平成22年9月17日)、見解が分かれている。

団体監理型における講習の期間中の技能実習1号の外国人技能実習生については、その時点では雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施者からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、労働基準法上の「労働者」には該当しないこと。企業単独型における雇用契約に基づかない講習の期間中の技能実習生は、外国にある事業場に所属する労働者であるものの、その時点では日本の実習実施者との雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施者からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、日本の労働基準法上の「労働者」には該当しないものであること(平成22年2月8日基発0208第2号)。

以下の法令では、「労働者」を「労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)」と定義し、労働基準法と同一の解釈となる。

労働安全衛生法(第2条)

最低賃金法(第2条)

賃金の支払の確保等に関する法律(第2条)

じん肺法(第2条)

家内労働法(第2条)

炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(第2条)

公益通報者保護法(第2条、なお他法と異なり「同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く」とはしておらず、これらの者も含まれる。)

また「労働者」の定義規定を置いていない法令においても、

労働者災害補償保険法においては、法律の目的・趣旨や労働基準法との関係に触れた規定の存在から、同法における労働者は労働基準法上の労働者を指すと解されている[5]最高裁判所も同様の立場をとっている(横浜南労基署長事件、最判平成8年11月28日)。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)においては、通達にて同法における労働者は「労働基準法第9条に規定する「労働者」と同義であり、同居の親族のみを雇う事業に雇用される者及び家事使用人は除外するものである。」(平成28年8月2日職発0802第1号、雇児発0802第3号)としている。

労働契約法第2条では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義される。ほぼ同じ内容であるので、労働基準法上の労働者の判断基準は労働契約法の労働者性判断においても一般的に妥当すると考えられる[14]

勤労者財産形成促進法第2条では「勤労者」の定義を「職業の種類を問わず、事業主に雇用される者」としている。同法施行時の通達において「本法の「勤労者」は、労働基準法等の「労働者」と異なる概念ではないが、本法は、公務員船員も適用対象としているものであるため、「勤労者」の語を用いたものであること。」(昭和47年1月22日発基3号)としていて、「労働者性」の判断については労働基準法と同様になる。
労働組合法


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