労働者派遣事業
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業務請負契約との相違「アウトソーシング」および「業務請負」も参照

派遣法によって労働者派遣契約は従来の業務請負契約と明確に区別されることになった[10]という。

業務請負では、請負労働者は自身が雇用関係を結ぶ企業(=請負業者)と注文主の企業との間で締結した請負契約にもとづいて労働を提供する。そのため、労働者の指揮命令権は注文主の企業ではなく、あくまでも請負業者にあると定義されている[10]

一方、労働者派遣では、派遣業者と派遣先の企業が派遣契約を結び、派遣業者と派遣労働者が雇用関係を結び、派遣先の企業と派遣労働者が使用関係を結ぶ、言うなれば三角形の関係にある[10]。そのため、労働者の指揮命令権は派遣先の企業に認められている[10]
派遣事業の分類

派遣労働者数(2018年6月時点)[12]一般派遣事業者(旧)特定派遣事業者
無期雇用派遣31.1万人7.9万人
有期雇用派遣92.5万人2.1万人
業態許可制
事業所数29,667事業所40,703事業所

特定労働者派遣事業(2018年9月29日で廃止)

派遣元に常時雇用される労働者(自社の正規雇用社員・常用型派遣)を他社に派遣する形態。届出制(派遣法16条、いわゆる「16条派遣」)。

一般労働者派遣の業者に比べると、派遣先として対応する企業・職種の幅は狭いが、特定の事業所に対し技術者(主にコンピュータ・IT・エレクトロニクス機械系の設計関連)などを派遣するような業者(主にアウトソーシング業者と呼ばれる)が多い。

2015年(平成27年)の法改正により16条が削除され、すべての労働者派遣事業が許可制の労働者派遣事業に一本化された。なお経過措置により同年9月30日時点で特定労働者派遣事業を営んでいる事業者は、引き続き2018年(平成30年)9月29日まで特定労働者派遣事業を営むことができる。2015年9月30日以降は、新規の届出は受理されず、それまでに事業所を開設していても新設に係る変更届は受理されない。
一般労働者派遣事業(労働者派遣事業)

派遣元に常時雇用されない労働者(自社の非正規雇用社員・登録型派遣)を他社に派遣する形態。厚生労働大臣による許可制。臨時・日雇い派遣もこれに該当する。なお、一般労働者派遣事業の許可を得れば、前項の特定労働者派遣事業も可能である。平成27年改正により常時雇用の有無を問わず許可制に一本化された。なお、改正前に一般労働者派遣事業を営んでいる場合は、その許可のままで引き続き労働者派遣事業を営むことができる。

一般的に「派遣会社」といえば、この形態の事業者が広く知られている。

平成27年改正後の労働者派遣事業は、許可を受けるためには以下の要件をすべて満たすことが必要となる。許可の有効期間は新規3年、更新後は5年となる。

専ら労働者派遣の役務を特定の者に提供することを目的として行われるものでないこと

派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして次に掲げる基準に適合するものであること

派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること

教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること

無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約の終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと

労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見つけられない等、使用者の責めに帰すべき事由により休業させた場合には、休業手当労働基準法第26条)を支払う旨の規定があること

派遣労働者に対して、安全衛生教育労働安全衛生法第59条)の実施体制を整備していること

雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、都道府県労働局から指導され、それを是正していない者でないこと


個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること

事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること

事業所の面積がおおむね20平方メートル以上であること

資産の総額から負債の総額を控除した額(基準資産額)が「2,000万円×事業所数」以上、現預金額が「1,500万円×事業所数」以上であること

1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主については、当分の間、基準資産額1,000万円・現預金額800万円、5人以下である中小企業事業主については、平成30年9月29日までの間、基準資産額500万円・現預金額400万円とする



紹介予定派遣

労働者派遣の内、派遣先企業での直接雇用を前提とする形態。

一定期間派遣社員として勤務し、期間内に派遣先企業と派遣社員が合意すれば、派遣先企業で直接雇用される。ただし必ずしも正社員になれるとは限らない。前提になっているのはあくまで「直接雇用」なので、契約社員アルバイトも含まれる。派遣事業者は労働者派遣事業と職業紹介事業の双方の許可が必要。派遣期間は6ヶ月以内。
派遣労働者の分類

セグメント別 派遣労働者数
(2018年6月時点)
[12]無期雇用派遣有期雇用派遣
製造業務6.2万人22.0万人
製造業務以外32.8万人72.6万人

常用型派遣(正規雇用
派遣先企業の仕事の依頼が有無にかかわらず、常に派遣労働者と派遣業者との間に雇用契約が結ばれている状態の派遣[13]。定常型派遣、無期雇用派遣ともいう。なお、いわゆる契約社員は有期直接雇用であり、正社員(無期直接雇用の被雇用者。つまり常時雇用される労働者)には当たらないため、常用型派遣され得ない。次節の登録型派遣を参照。
登録型派遣(有期雇用
派遣先企業の仕事の依頼が有るときのみに、派遣労働者と派遣業者との間に雇用契約の関係が生じる状態の派遣。有期雇用派遣ともいう。日雇い派遣もここに含まれる。
派遣期間

平成27年9月30日時点で既に締結されている労働者派遣契約については、その契約に基づく労働者派遣がいつ開始するかにかかわらず、改正前の法による期間制限がかかる。すなわち、期間は原則1年。延長は最長3年まで可能だが、その事業所の過半数労働組合等(過半数労働組合または過半数代表者)の意見を聴取する義務がある(派遣法第40条の2)。ただし、派遣契約締結から派遣開始までにあまりにも期間が空いている場合は脱法行為と認定される可能性がある。

平成27年9月30日以降に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣には、全ての業務で次の2つの期間制限が適用される。
派遣先事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所に対し派遣できる期間(派遣可能期間)は、原則、上限3年となる。起算日は、新たな期間制限の対象となる労働者派遣を行った日である。3年の間に派遣労働者が交代したり、他の労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合であっても、起算日は変わらない。延長しようとする場合、その事業所の過半数労働組合等からの意見を聴く必要がある。延長期間も上限3年であり、また延長しても、個人単位の期間制限を超えて同一の有期雇用の派遣労働者を引き続き同一の組織単位に派遣することはできない。ここでいう「事業所」とは、雇用保険の適用事業所と同一である。雇用保険の事業所非該当承認を受けている場合、原則、期間制限を受ける事業所単位の事業所としては認められない。こうした一の事業所としての独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱うこととなる。派遣先の事業所ごとの業務について、労働者派遣の終了後に再び派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3ヶ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされる(クーリング期間)。派遣先が延長手続を回避する目的でクーリング期間を空けて派遣受け入れを再開する行為は、法の趣旨に反し、行政指導等の対象となる。過半数労働組合等からの意見聴取は、期間制限の抵触日の1ヶ月前(起算日から2年11か月後)までに、十分な考慮期間を設けたうえで行わなければならない。また派遣先は、過半数労働組合等が意見を述べる参考となる資料を提供しなければならず、意見の内容を書面に記載して3年間保存し、また事業所の労働者に周知しなければならない。意見を聴いた結果、過半数労働組合等から異議があった場合には、派遣先は対応方針等を説明しなければならず、またその意見を十分尊重するよう努めなければならない。最初の受け入れの際には、派遣先は過半数労働組合等に受け入れの方針を説明することが望ましいとされる。
派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、原則、上限3年となる。組織単位を変えれば、同一の事業所に引き続き同一の派遣労働者を派遣することができるが、3年を超える場合は事業所単位の期間制限を延長する必要がある。ここでいう「組織単位」とは、業務としての類似性・関連性があり、組織の長が業務配分、労務管理上の指揮監督権限を有するものとして、実態に即して判断される(一般的な企業の「課」「グループ」に相当する)。派遣労働者の従事する業務が変わっても、同一の組織単位内である場合には、派遣期間は通算される。派遣先の事業所における同一の組織単位ごとの業務について、労働者派遣の終了後に同一の派遣労働者をふたたび派遣する場合、派遣終了と次の派遣開始の間の期間が3ヶ月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされる(クーリング期間)。
期間制限を受けない場合
以下の場合は期間制限はかからない。

派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合

60歳以上の派遣労働者を派遣する場合

終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合(平成27年改正前は「3年以内の有期プロジェクト」とされていたが、改正後は終期が明確であれば3年を超えてよい)

日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合

産前産後休業育児休業介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合
かつて派遣法施行令第4条で定めていた業務(俗称26業務)については専門的な業務であるか、特別の雇用形態が必要とされることにより、派遣期間制限はないとされてきたが、平成27年改正により、26業務についても他の業務と同様の期間制限がかかることとなった。なお改正法の施行を理由に26業務に従事していた有期雇用者に雇い止めを行ってはならない(派遣労働者にも労働契約法第19条(雇い止め法理)が適用される)。
日雇い派遣の制限
詳細は「日雇い派遣」を参照登録型派遣のうち、その雇用する日雇労働者を派遣するものを特に「日雇い派遣」と呼ぶ。


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