労働組合法
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労働基準法第9条では、「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われるものをいう」とされ、契約上において、請負委任とされている者についても、実態として雇用契約が締結されていると認められること、つまり実質的な「使用従属関係の有無」で判断されるが、労働組合法第3条では労働基準法とは異なり「使用される者」という要件が課されていない。労働基準法が、法が定める労働条件による保護を受ける対象を確定するための概念と解されるのに対し、労働組合法では労働組合を組織し集団的な交渉を通じた保護が図られるべき者が幅広く含まれると解される[2]。したがって労働組合法上の「労働者」には失業者も含まれるものとされ(昭和23年6月5日労発262号)[3]、また勤務時間の管理を受けず時間的・内容的に自由に業務遂行を行う者も含まれうる。具体的に労働組合法上の「労働者」かを判断するには、「業務組織への組み入れ」「契約内容の一方的・定型的決定」「報酬の労務対価性」をもとに、「業務の依頼に応ずべき関係」「広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束」を合わせて総合判断する。ただし、「顕著な事業者性」が認められる場合は、労働者性が否定され得る[2]

労働組合制度は、労働関係における労働者の地位の向上等を目的とするものであって、労働者たる限り当然にこれに加入し、その代表者たる地位に就し得るものであるから、未成年者といえども法定代理人の同意を得て労働契約を締結し労働者たる地位を有するものである限り、その自由意志により、有効に労働組合に加入し、その代表者たる地位に就くことができる(昭和32年9月4日法務省民事甲第1663号)。未成年者である労働組合員が、労働組合の代表者たる地位に就任した場合、当該未成年者は、労働組合の代表者として訴訟行為をなしうる(昭和32年8月29日法務省訟行甲第9433号)。

労働組合

労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第2条及び第2項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第7条第1号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない(第5条1項)。労働組合は国家による規制から自由に結成できるのがILO87号条約(日本も批准)の原則であるが、日本では第5条に定める手続き(資格審査)を経なければ法の保護を受けられない[4][5]

なお、第5条1項但書の「個々の労働者に対する保護」とは、救済をも含むものであるがここにいう「第7条第1号の規定に基く」とは、必ずしも個々の労働者の保護を第7条第1号に限定する趣旨ではなく、注意的に書き加えたのに止り、第7条第3号に関しても個々の労働者に対する救済が与えられる。この場合、使用者に対する支払中止命令が当該団体を構成する個々の労働者が労働組合を結成する(所属団体を労働組合たらしめることを含む。)ことを妨害する使用者の不当労働行為の排除命令たる救済になるわけである(昭和24年10月3日労収第7384号)。

労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する(第6条)。

会社従業員に非ざる者をも、その構成員として包含する労働組合であっても、その代表者は第6条の規定により当該会社の従業員たる組合員のために会社と交渉する権限を有するものであって、第7条2号の適用については、右の代表者が、たまたま解雇された者である場合、他に特別の理由の存在しない限り、その「労働者の代表者」自身が従業員でないということのみでは、会社がこれとの交渉を拒否する「正当な理由」とはならないものと解する(昭和29年1月29日労発第3号)。

労働組合の規約には、以下の各号に掲げる規定を含まなければならない(第5条2項)。
名称

主たる事務所の所在地「事務所は何々工場におく」という如く会社の承諾を得る前に規約で一方的に使用者の建物内に事務所をおく旨を記載することは望ましくない(昭和24年6月9日発労第33号)。

連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。

何人も、いかなる場合においても、人種宗教性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。第4号は、何人もいかなる場合においても、人種、宗教その他一定事由によって組合に加入する権利がないものとされ、又は組合員たる身分を失うことはない旨を規定することを定めたものであって、差別待遇をうけない旨の規定が現に組合員である者だけに関するものであっては、法に十分適合したものとは云い難い(昭和30年10月19日広島県民生労働部長あて労働省労働法規課長通知)。

単位労働組合にあっては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあっては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。「単位労働組合」とは、本部、支部、分会、班その他名称の如何にかかわらず、第2条の労働組合たる社団的実体を有するもの(即ち労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織され、その為の自己の規約をもち、これに従って独自の意思決定をなし且つこれを執行する機関とこれを行うにたる会計をもつた団体であって、同条但書の各号に該当しないもの)であって、労働組合をその構成員としないものをいい、連合団体とはこれらの単位労働組合を構成団体とする労働組合であって地評、支部その他名称の如何にかかわらない。この場合、単位労働組合と連合団体たる労働組合との区別には、交渉相手方の如何に関係がなく、もっぱらその労働者の団体の自主的決定にまつべき問題である(昭和24年10月11日労発第400号)。役員選挙規則において、協約に定められた争議不参加者の役員被選挙権を排除する旨の規定を設けることは、たとえそれが組合活動の円滑な運営を確保するという考慮に基くにせよ、そのことは単に争議の場合にのみ関する一時的の事柄であつて、而もこのような事柄は、組合運営上、他の方法によっても回避し得ないわけではないから、右の如き考慮から直ちに組合員の基本的権利の一たる役員被選挙権を奪うことは、相当な理由があるものとは認められず、従って第3号に抵触するものと解する(昭和30年9月15日宮崎県民生労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)。役員の立候補者の数が役員の定員を超過しない場合に、直接無記名投票による選挙を行うことなく立候補者が役員となることは、立候補が充分民主的且つ自由に行われているものである限り差支えないものと解する(昭和25年1月23日労収第397号)。役員中所謂三役(組合長、副組合長、書記長)選挙に当り三役を執行委員の互選とする規約の規定については互選を行う執行委員の選挙方法が法の要件を充足している場合には差支えない(昭和26年2月16日労発第627号)。規約中、「役員の任期を一年とし、再選を妨げない」とあるところ、これに「但し、正副委員長、書記長、会計及び監事の同一役名にて引続き連続四選はできない。」旨を附加して規定することは、法に抵触しない(昭和27年2月26日労収第9311号)。

総会は、少くとも毎年一回開催すること。労働組合法にいう労働組合が議決機関の存在を必要とすることは、社団たるの本質上当然である(昭和22年10月7日労発第63号)。代議員制度を採っている場合には、「総会」とはその代議員制度による大会を指し、全組合員により構成されるものでなくてもよい(昭和29年4月21日労発126号)。なお、全国的規模をもたない単位組合については5,9の定めによらなければならないものとされ、代議員制度は適用されないことになっている。

すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。信託会社は、会計監査を業としていとなむ資格を法律上認められたものであって、労組法上の「職業的に資格がある会計監査人」に該当すると解する(昭和24年11月5日労収第9165号、昭和42年8月18日各都道府県労働主管部長あて労働省労政局労働法規課長通知)。公認会計士がなした組合会計の監査又は証明は、法律上無効でない限り、「職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書」とみなされる。公認会計士が公認会計士法の制限に反して財務書類の監査又は証明をした場合であっても、その監査、証明は無効とならず、ただ当事者がその信憑性を争い得るに止まるのであって、その監査、証明を信憑するか否かは当事者の問題である(昭和25年3月13日労収第516号、昭和42年8月18日各都道府県労働主管部長あて労働省労政局労働法規課長通知)。労働組合は、法人たる場合に限り、組合名義で使用者のを所有し得る。労働組合が会社の資本の所定の割合以上の株を所有する場合少数株主権を有すること、及び利益配当を受け得ることは当然である(昭和23年4月5日労働省労政課長通知)。

同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。法令により争議行為を禁止されている労働組合は、その規約に第8号の規定を設ける必要はない。又規約に争議行為を行わない旨の規定をもつ労働組合は、その規定が第8号の規定に代るものであって、別に同号の如き規定を設ける必要はない(昭和24年8月8日労発第317号)。労働組合の規約中に、同盟罷業を開始するか否かを決定する権限を、労働争議の具体的発生をみない中に、予め組合員又は代議員の直接無記名投票の過半数による決定に基いて中央執行委員会等に包括委任することができる旨の規定をおくことは、第8号の違反となるが、組合の規約が第8号に適合している場合、組合大会の決議、執行部の措置等がこの組合規約に違反しているか否かを判断し、組合規約に違反すると判断した場合、その是正を求めるのは、組合員自らの問題である(昭和25年3月15日労収第895号)。

単位労働組合にあっては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあっては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。役員の選挙、同盟罷業開始の決定、又は規約改正における組合員の直接無記名投票は、必ずしも総会において行う必要がなく、一定の投票所を設け、一定の期間内に直接無記名投票をすることができるのであって、三交替制を実施する工場、事業場の単位組合においても、組合員が夫々この期間内に投票所において直接無記名投票をすることができる(昭和24年9月22日労収第7387号)。

法人である労働組合

この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによって法人となる(第11条1項)。労働組合に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者対抗することができない(第11条3項)。この規定による登記には、以下の事項を掲げなければならない(施行令第3条)。
名称

主たる事務所の所在場所[6]

目的及び事業

代表者の氏名及び住所

解散事由を定めたときはその事由

法人である労働組合には、一人又は数人の代表者を置かなければならない。代表者が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、法人である労働組合の事務は、代表者の過半数で決する(第12条)。代表者は、法人である労働組合のすべての事務について、法人である労働組合を代表する。ただし、規約の規定に反することはできず、また、総会の決議に従わなければならない(第12条の2)。法人である労働組合の管理については、代表者の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない(第12条の3)。法人である労働組合が代表者の債務を保証することその他代表者以外の者との間において法人である労働組合と代表者との利益が相反する事項については、代表者は、代表権を有しない。この場合においては、裁判所は、利害関係人の請求により、特別代理人を選任しなければならない(第12条の5)。
免責

刑法第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって本法の目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない(刑事免責、第1条2項)。

「暴力の行使」を禁止する旨の規定は、これは当然のことを念の為に規定したものであるから、いやしくも職権の濫用を来し、健全なる労働組合運動の弾圧に陥るがごときことのないよう、その趣旨を充分末端機関にまで徹底し、検察庁警察官署等と緊密な連絡をとり誤解のないように努力されたい(昭和24年6月9日発労第33号)。

「暴力の行使」とは、例えば暴行、傷害、器物毀棄等に該当する行為、即ち、生命、身体、自由若しくは財物等に対する不法な有形力の行使又は不法な実力の行使をいう。


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