加工貿易が増大すれば、中間財貿易が増大する。加工貿易についての統計資料は入手困難であるが、中間財貿易については統計がある。中間財貿易は、世界貿易において、1960年代以降つねに、消費財・資本財・最終財(消費財+資本財)を上回る貿易量を示してきた[1]。経済のグローバル化は、この傾向を強めている。 産業革命当時のイギリスはインドやエジプト、アメリカ南部などから綿花を輸入して綿布や綿糸を輸出した。これらの地域はイギリスの植民地もしくは半植民地であり、原材料の輸入価格を安く抑えることが出来た。このように帝国主義の時代には植民地を原材料生産地として発達した本国の加工貿易の例が見られた。 加工貿易は、日本やドイツなど、鉱物資源の乏しい国に多い。 日本は、かつて「資源の博物館」「鉱物の標本室」等と呼ばれるほど地下資源が豊富であったが[2]、産業構造の転換とコスト面から利用できる資源は乏しくなった。 1930年代から始まった石油エネルギーの台頭は高度経済成長の時代により進み、格安の石油をエネルギー源とした加工貿易産業が成長した。一方で、国内石炭産業 1980年代初めには自動車産業の躍進を背景に加工貿易は隆盛を極めたが、プラザ合意後の円高により収益性が大幅に低下した。その後、国内の有力な製造業は北米や東南アジア、中国へ生産拠点を移していった。 2002年以降、中国とアメリカの経済成長により再び加工貿易がクローズアップされている。中国の安価な人件費を背景にした工業化は、より高い原料費とより安い販売価格でも収益を確保できるため、生産量が急増し原材料価格の上昇と最終販売価格の低下圧力となっている。これにより代替可能ないくつかの製造業は利幅圧縮に見舞われている。しかし、技術力と生産性を背景にした自動車産業が依然として競争力を保っており、日本の基幹産業となっている。 日本は、明治中期以降、基本的に加工貿易に依存してきた。日本にとって、また世界の多くの国にとって重要であるにもかかわらず、加工貿易の理論は不充分な状態にとどまっている。大山道広は、次のように指摘している。 国際貿易論の教科書で解説されている標準的な貿易モデルは、消費財の交換を内容とする水平貿易のモデルである。しかし、現実には原料と消費財の交換を主とする垂直的な貿易も重要である。日本型の加工貿易はまさにそのような貿易の一つの典型である。[3] 先進国と発展途上国の間の垂直貿易vertical tradeの大きな部分が製品と一次産品との交換をとっている。先進国の間でもある程度同様な貿易が行なわれている。[4] 日本語で「加工貿易」を論文題名に掲げた理論論文は、大山道広の2論文にとどまる[5]。世界的にも21世紀に入り加工貿易(processing trade)に関する関心が高まっているが[6]、多くは中国の加工貿易の進展に刺激されたものであり、理論的分析の枠組みが得られているわけではない[7]。 加工貿易は、現在では、中間財貿易、投入財貿易(input trade)、フラグメンテーション(fragmentation)、オフショアリング、グローバル・サプライ・チェーン 加工貿易の実証的研究の豊富さに比べて、理論的研究は少ない。例外として池間誠・東田啓作などがある[10]。投入財貿易の画期的な著作とされるジョーンズ
各国の加工貿易
日本
加工貿易の理論
出典・脚注^ Timothy J. Sturgeon and Olga Memedovic, 2010 Mapping Global Value Chains: Intermediate Goods Trade and Structural Change in the World Economy, Development Policy and Strategic Research Branch Working Paper, 05/2010, UNIDO, p.8, Figure 1.
^ 小学校などで教えられることが多いようだ。『中学受験新演習』小5上社会「指導のポイント」には日本の資源について「1 日本の資源 輸入にたよる資源」の項目で「本室〔博物館〕」…鉱物資源の種類は多いが、利用できる量は少ない。」としている。もともとの出典は不明。
^ 大山道広「加工貿易の理論:リカード型モデル」『三田学会雑誌』8(3)(1996.10)、pp.339-351(1-13), p.350.
^ 大山道広「加工貿易の理論:リカード型モデル」『三田学会雑誌』8(3)(1996.10)、pp.339-351(1-13), p.339.
^ 大山道広 1996 加工貿易の理論: リカード型モデル、三田學會雑誌、 89(3): 339-351. 大山道広 1997 加工貿易の理論: HO 型モデル、 三田商学研究、40(4): 19-36. 大山道広(1997)では、加工に比較優位があって、輸入した財を加工・輸出するという貿易構造は得られない。2国の生産関数が同一と仮定されているからである(p.26)。
^ ただし、Processing tradeは日本語におけるような広い意味をもっていない。「加工貿易」という概念は、19世紀に開国してのち比較的早く枯渇により輸出可能資源をなくした日本という状況が生み出した概念ともいえる。
^ Baldone, S., Sdogati, F., & Tajoli, L. 2001 Patterns and determinants of international fragmentation of production: evidence from outward processing trade between the EU and Central Eastern European countries. Weltwirtschaftliches Archiv 137(1), 80-104. Egger, Hartmut and Peter Egger 2005 The Determinants of EU Processing Trade. The World Economy 28(2): 147?168. Koopman, R., Wang, Z., & Wei, S. J. 2008 How much of Chinese exports is really made in China? Assessing domestic value-added when processing trade is pervasive. No. w14109, National Bureau of Economic Research. Xu, B., & Lu, J. 2009 Foreign direct investment, processing trade, and the sophistication of China's exports. China Economic Review, 20(3): 425-439. Xing, Y. 2012 Processing trade, exchange rates and China's bilateral trade balances. Journal of Asian Economics, 23(5): 540-547.
^ 中間財は、国民経済計算において、最終財以外の財を言い、他の財・サービスの生産に投入される。したがって、投入財と呼ばれる場合もある。
^ Jones, R. W. 2000 Globalization and the theory of input trade. MIT Press.
^ 池間誠「国際間生産特化パターンの確定」石川・古沢編『国際貿易理論の展開』文眞堂、2005年、第15章。東田啓作「中間財と国際生産特化パターン」同前、第17章。
^ Ronald Jones 2000 Globalization and input trade. MIT Press.
^ 塩沢由典(2007)「リカード貿易理論の新構成/国際価値論によせてU」『経済学雑誌』(大阪市立大学)107(4): 1-62。Shiozawa, Y. 2007 A New Construction of Ricardian Trade Theory: A Many-country, Many-commodity Case with Intermediate Goods and Choice of techniques, Evolutionary and Institutional Economics Review, 3(2): 141-187.
^ 塩沢・有賀編『経済学を再建する』中央大学出版部、第5章
^ 塩沢由典(2014)『リカード貿易問題の最終解決』岩波書店
^ 塩沢由典「リカード国際価値論の現代的意義と可能性」『国際経済』2018年69巻41-62.
関連項目
貿易理論
フラグメンテーション (経済学)
アウトソーシング
グローバル・ソーシング
中間財貿易
投入財貿易
.mw-parser-output .asbox{position:relative;overflow:hidden}.mw-parser-output .asbox table{background:transparent}.mw-parser-output .asbox p{margin:0}.mw-parser-output .asbox p+p{margin-top:0.25em}.mw-parser-output .asbox{font-size:90%}.mw-parser-output .asbox-note{font-size:90%}.mw-parser-output .asbox .navbar{position:absolute;top:-0.90em;right:1em;display:none}
この項目は、経済に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正
などしてくださる協力者を求めています(ポータル 経済学、プロジェクト 経済)。典拠管理データベース: 国立図書館