創造論
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4世紀には既にニッサのグリゴリオスが創世記の冒頭部分につき、「歴史であるよりはむしろ物語のかたちを借りた教義である」と述べたことを、英国在住の府主教カリストス・ウェアが著書で引用している[16]

ロシア正教会渉外局長も務めるイラリオン・アルフェエフ府主教は著書『信仰の機密』において、聖書の史実は実際の歴史であって寓話でも比喩でもないが、古代のあらゆる記述と同様に象徴言語で書かれているため、聖書を読むのにあたっては単語のひとつひとつ、形象のひとつひとつを解釈しなければならないのであり、聖書に書かれたことは最後の一字まで真理であるが、全てを文字通りに解釈すべきではないとし、聖書の記述を「象徴的記述」であるとしている[17]
カトリック教会における見解

カトリックは本来、創造論を支持するが、1996年10月にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が、「進化論は仮説以上のもので、肉体の進化論は認めるが、人間の魂は神に創造されたもの」だと述べた。
プロテスタントにおける見解

支持者によって20世紀最大の神学者と称される新正統主義カール・バルトは、未完の主著「教会教義学」全4巻における第3巻、邦訳全36分冊中11冊分を創造説に割いている。

バルトに師事したトーマス・トーランスは師であるバルトと見解を異にし、神学が自然科学に基礎付けられるのではなく、逆に科学が神学に基礎付けられるべきであり、その方が真実に近いとしている[18]

内田和彦は進化論を受け入れる立場が部分的霊感説になるとしている[19]。しかしながら福音主義の神学者の中には有神的進化論を受け入れるものも多数存在する。日本基督教団亀有教会牧師鈴木靖尋は、日本基督教団の牧師の95%が部分霊感であり、有神的進化論の支持者であるとしている[20]
創造論の神学的意義

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出典検索?: "創造論" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2022年7月)

神学的に創造の意義について洞察を深める場合も「創造論」と称される。

前述の通り、ユダヤ教徒・キリスト教徒・イスラム教徒は、理解の差こそあれ基本的に創造説を受け入れている。

特に、聖書は十全に信頼するに値する書物と信じるキリスト者は、宇宙の始まりから現在までの過程は旧約聖書の『創世記』の記述の通りであり、生命はそれぞれの「」が個別に創造された不変のものであると信じている。

ある書物、文献を読解あるいは研究、調査をする場合にはまずは読んで字のごとくに解釈しつつ、文脈からその文章を解釈する事がまずなされるべき姿勢である。しかし聖書が持つその独自性から多くの部分を予型、雛形、比喩、としても読み取ることが出来るため横道にそれてしまい聖書の存在の目的である、個々の人格的救いをもたらす信仰を損ない、健全な教義や信仰の破綻あるいは異端に及ぶ危険性を孕んでいる。神が聖書の記述通りに生命や世界をされたことを字義的に解釈することは、それぞれの教派間にも聖書信仰による一致をもたらす原動力になるものと思われる。

また聖書は考古学的にも信頼できるものだという認識が、19世紀末からの考古学的発見によって高まって来ており、書簡の多くの部分でその歴史的記述の正しさが実証されている。さらに人間の持つ弱さ、罪の性質から来る ⇒因習や伝統的慣例などの間違いを正す力を持っている。信仰者が御言葉により霊の糧を与えられているのはいうまでもないが信仰者のみならず、現実の社会に多大な影響を与えてきた書物である。この聖書を神の言葉として信ずるに値するものであること、進化論的価値観から聖書的世界観への変換(パラダイムシフト)という新しい視点を与える創造論は意義あるものと言える。
創造論の影響
アメリカ合衆国

アメリカ合衆国では『創世記』をそのまま信じている人はかなりの割合であると言われ、論争が起こってきた。その中には、進化論を教えるならば同じ時間だけ創造論も教えるべきであるという主張や、創造主の存在を出さずに創造論を暗に示唆するインテリジェント・デザイン論など立場は多様で、複雑である。一部の州では生物の教科書で「進化論」を教える派と「創造論」を教える派が真っ向から対立し社会問題化することもあった(スコープス裁判など)。インテリジェント・デザイン論を公教育に取り入れようとする動きに対して反対派が創造主がスパゲッティ・モンスターであるというパロディ宗教「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」を創設して抗議運動を起こした。

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}近年アメリカで創造論を支持する人が増加しているのは福音派の影響というよりも、それぞれの専門家が議論を交わすテレビ討論番組などの放送が大きく影響しているようである。[要出典]民間の統計では国民の50%を超える人々が神が人間を創造した事を信じているという数字が出ている[21][注釈 2]

創造論は 聖書根本主義者の間違った主張であるとする立場では、創造論者の総称として「ファンダメンタル」と呼ぶこともある。創造論の間違いを主張する媒体はインターネット上でも見られる。過激な活動で影響を与えようとする創造論者がアメリカには存在しており、それに対する拒絶反応が創造を信じないリベラル派自由主義神学)に創造論を非難する理由を与えている。
日本

江戸時代の役人新井白石は、密入国した宣教師シドッチの取り調べで天地創造について聞かされたが、「デウス自体を何ものかが造って、天地がまだ存在しない時点で生れたことになる。そうでなくてデウスが自ら勝手に生れるのなら、天地も勝手に生まれておかしくない」「デウス自身が皆を善人につくって、全員をその教えに従わせればいいではないか。それができないで、世界中の人を洪水で絶滅させるとは何事か」(現代語訳)などと冷淡な感想を述べており、キリスト教は仏教に比べ劣っているとして禁教を正当化した[22]

日本では創造論を初等教育で教えるように求めて裁判に訴えた例は2020年時点ではないが、保守的な福音派の教会においては創造の教理は信じられている。また、学校教育では進化論を教えるため、チャーチスクールホームスクーリングで子弟を教育する教会や家庭もある。ただし日本におけるキリスト教の信仰者は国民人口の1%に満たない上、そのなかでも保守派教会の信徒は少数派であるため、影響は限定的である。
脚注[脚注の使い方]
出典^ 宇田進『福音主義キリスト教と福音派』いのちのことば社
^ Forster, Roger;Marston, Dr Paul (2001). "Chapter 7 - Genesis Through History". Reason Science and Faith. Chester, England:Monarch Books. ISBN 1854244418. “アーカイブされたコピー”. 2009年4月27日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2009年3月24日閲覧。. Retrieved 2007-06-30.
^ Moore, James. "Evolution and Wonder - Understanding Charles Darwin". Speaking of Faith (Radio Program). American Public Media. “アーカイブされたコピー”. 2008年12月22日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2008年11月22日閲覧。. Retrieved 2007-06-27.
^ History of the Collapse of "Flood Geology" and a Young Earth, adapted from The Biblical Flood:A Case Study of the Church's Response to Extrabiblical Evidence (Eerdmans, 1995) by Davis A. Young. Retrieved 2007-06-30.
^ Forster, Roger;Marston, Dr Paul (2001). "Chapter 7 - Genesis Through History". Reason Science and Faith. Chester, England:Monarch Books. ISBN 1854244418. “アーカイブされたコピー”. 2009年4月27日時点の ⇒オリジナルよりアーカイブ。2009年3月24日閲覧。. Retrieved 2007-06-30.
^ 日本福音同盟『日本の福音派』いのちのことば社
^ a b 奥山実『悪霊を追い出せ!-福音派の危機を克服するために』 マルコーシュ・パブリケーション ISBN 4872071115
^ イ・ジェマン『創造科学コンサート』Duranno ISBN 978-4-931534-42-1
^ 奥山実『悪霊を追い出せ!-福音派の危機を克服するために』 マルコーシュ・パブリケーション ISBN 4872071115


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