創造論
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聖書の真理を与えられているとの確信に立って、聖書を中心に論じ[7]、進化論を退けるために、科学を道具として用いる[8][9]。科学は神学によって導かれるべきだとし、進化論には根拠がないと主張する[7]。それに関与する学者・科学者を「クリエーショニスト」と呼ぶ。特徴として若い地球説がある。
古い地球説詳細は「古い地球説」を参照

近代科学の地球の古い年代を認める説。断絶説、漸進的創造論を含む。
断絶説(間隙説、ギャップ・セオリー)詳細は「断絶説」を参照

創世記1章1節と1章2節の間の創造以前の状態、に長い時間(数十億年)があったとする説。単に長い時間の間に創造的進化論を当てはめる考えと、この中に二回創造説の最初の時代があり1章2節が二回目の創造であるとする考えがある。
長期説(1日=1時代説)

創世記中で「日」と訳されるヘブライ語ヨームには「長い時間、特別な出来事の時」という意味があり、創造の六日間が数千年、あるいは数十億年の期間であったと考える(創造の1日を千年あるいは数十億年の長期とし、×6の期間で創造)。

神が時間をも作ったと考えるならば創造の最初の時間、六日間はまさに「特別な出来事の時」として理解できる。また「長い時間=千年」を、アダム、ノア、アブラハム、ダビデ、キリストまでがそれぞれ約千年、キリストから現代までを2千年=合計6千年として予型や雛形としての側面から聖書を読み取る神学的解釈と字義解釈は矛盾しない(ペテロの手紙第二3:8)。

この長期説をとる立場の中には、七日目の安息日が終わったという記述がないこと、またヘブル書4章の記述などから、創世記2章3節から終末までの人類の歴史全体を七日目であると解釈する立場もある。
進化的創造説(有神論的進化論)詳細は「有神的進化論」を参照

単体で用いられる説ではなく、上記の「断絶説」「長期説」に含まれる長い時間の中で生命の進化があり、その過程において神の意思が反映されたとするもの。また、創造論と進化論 は必ずしも対立しないとし、神の意志によって進化がなされたとするため「進化的?」と呼ばれているが進化論を積極的に支持しているのではないとしている。人によっては「断絶説」「長期説」以外の説にも適用して用いる場合もある。
霊魂に着目する解釈
伝達説

テルトゥリアヌスの説。肉体と霊魂はアダムにおいて創造され、自然生殖によって伝達されたとする[10]
霊魂創造説(創造神学)

肉体の発達の初期段階に、神が直接創造した霊魂が肉体に注入される。アリストテレスペラギウス、また、トマス・アクイナスらカトリック教会の神学者の多くが唱えたとされる説[10]
新約聖書を用いる解釈
枠組み説

6日間の出来事は創造の順番として理解する説。聖書の主題は人類の救済であるとし、聖書の記述が科学的に全て解明されたわけではないため、聖書の創造の記述について一般的な解釈である枠組み説に立つ創造論支持者も多い(テトス3:9等)。
二回創造説

第一の創造の後、ルシファーサタン悪魔)に率いられた天使(堕天使=悪霊)らの反乱が起こり、その戦乱で世界は破壊されてしまったので、ミカエル率いる天の軍勢が堕天使を制圧し地獄に幽閉した後、神が世界を造り直した過程が第二の創造だとする説(黙示録12章2~9節、ペテロの手紙第二2:4)。

英語訳聖書で以前、地獄と訳されていた「ハデス」を現在は音訳にするものが多く、日本語では音訳あるいは「黄泉」(よみ)と訳して地獄と明確に区別している。人間は死後、自動的に地獄や天国に行くのではなく最後の審判があり、神による死者の裁きがあった後に「よみ」さえも落とされる場所が地獄であり、まだ形成されていないため字義的に二回目の創造は黙示録の記述にある神が創造する「新しい天と地」となる。この場合第一と第二の創造は字義解釈に取り込まれる。
化石等の観測に基づく解釈
複数回創造説詳細は「天変地異説」を参照

フランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエは天変地異説を提唱した。キュヴィエはほ乳類化石の専門家であったが、化石として発見される動物は現在ほとんど見られず、逆に現在見られる多くの動物は化石として発見されることがない。この矛盾を解決するため、ノアの洪水伝説を流用し、同様な大災害が複数回起こったのだと論じた。彼自身は神による創造には言及していないが、彼の弟子筋や、後続の学者には、彼の天変地異説と結びつけ、神による創造は何度も、たびたび行われたのだと考えたものがいる。19世紀には多くの博物学者・地質学者が創造論者でもあり、現実に観察される生物や地球と聖書の記述を合致させようと様々な説が提示された。本説も、オムファロス説もそれらのうちの一つ。
オムファロス仮説詳細は「オムファロス」を参照

イギリスの自然学者フィリップ・ヘンリー・ゴス1857年に提唱した。歴史の存在を想像させる地質学的、生物学的、その他ありとあらゆる証拠(化石、地層、年輪など)は、それを含めた完全な形で地球は紀元前4004年に創造された、とする。
宗教ごとの解釈
異教的創造説

この節では異教とキリスト教が結びついた創造説について記述する。紀元後1世紀、アレクサンドリアのフィロンによって、イデア界の霊的創造(創世記1章1節から3節)がデミウルゴス(造物主)による物質界創造(同1章4節以降)に先立って起こったとする説が説かれた。これを二段階創造説という、フィロンは創造の第1日をイデア界の創造として把握し、対して、第2日以降に詳細に展開される創造の過程を、イデアに基づく現実界の創造と考えた。ここには、プラトンの『ティマイオス』における「イデアのみやり」による工匠・造物主の世界の創造論と聖書の創造記述の結びつきによる把握がある。創世記2章には「われわれの形(エイコーン)にしたがって」(七十人訳聖書)という個所があり、創造は「エイコーンにしたがって」なされたと考える余地があった。そして中期プラトンにおいて、エイコーンはイデアと互換な概念であり、この語はいわばイデア論と創世記の創世神話をむすぶ蝶番となったのである。

この二段階創造論と同じ発想は、グノーシスにもみられる。グノーシスもまたプラトン思想の影響下にあり、むしろさらに感覚的・肉的なものへの嫌悪を受け継いでいる。グノーシスでは、神の作った善なる霊的世界と、デミウルゴスの模倣により悪なる劣った肉的な世界の二段階の創造が考えられた。この説は、他のグノーシスの教説とともに、のちのキリスト教会からは異端とみなされた。

一方、正統教会のなかにも、異教的な背景をもつ自然学と創世記の創世神話を調和的にむすびつけようとする試みが為された。このとき、自然は、聖書文書とともに「神の業」をあらわす書物であるかのように考えられた。4世紀、多神教的異教は依然として勢力を保っており、したがって、この時代の護教的な文脈のなかでは、両者の一致をいうことは有益であると思われた。例えばカエサレアのバシレイオスは、『ヘクサエメロン』(六日の書、中世思想原典集成2・平凡社収録)を著し、創造説についての記述を行った。
イスラム教の創造説

イスラム教でも『コーラン』に基づく創造説がある ⇒[1][リンク切れ]。そして、これに基づき創造科学を主張する一派も存在している[11][リンク切れ]。
その他の解釈
堕落前の世界と堕落後の世界

全的堕落前と堕落後の世界は相違しており、堕落後の世界に生きている人間がアダムの堕落前の世界を科学的に解明することはできないとする説[12]
高等批評学、文書仮説詳細は「高等批評学」および「文書仮説」を参照

事物の創造順が異なるため統合できないとする文献批判の聖書学により創世記をP典とJ典(2章4節から)の二つに分類して創造説話を解釈するもの。高等批評学文書仮説では『創世記』の第一章天地創造でエロヒムが植物・動物・人(男と女)の順で天地を完成させたとしているのに対し、第二章では第一章とは異なる順序、つまり、アダム・植物・動物・女イシャー(後にイブという名になる)の順にヤハウェ・エロヒムが創ったとしている点に着目し、創世記の記述を文字通りに解釈するものではないと主張している[注釈 1]
インテリジェント・デザイン(ID)詳細は「インテリジェント・デザイン」を参照

近年のアメリカで始まったもので、聖書から科学的に論証しようとする宗教的な論説の創造科学を基礎にして、より多くの人々に受け入れられるように、全てを創った存在を「創造者(神)」と言わず「偉大なる知性(インテリジェント)」と表現し、この知性によって宇宙・地球が設計(デザイン)され、創造されたとするもの。創造科学と違い若い地球説を採らない。


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