剣術
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なお、宮本武蔵は『五輪書』の「地之巻」で、従来は弓や槍を含む[15]武士としての諸芸全般(「武家の法」)を指していた「兵法」から「剣術一通の事」のみを切り出して「常陸国鹿島・香取の社人共、明神の伝へとして流々をたてて、国々を廻り、人につたゆる事ちかき比の義也」(正保2年(1645年))と記し、鹿島・香取の社人たちが剣術のみを兵法として全国をわたり伝えるようになったのは古いことではないことと述べている。

永禄9年(1566年)五月吉日、上泉伊勢守信綱柳生宗厳新陰流相伝自筆伝書に、「上古の流有り、中古に念流新當流、亦復陰流有り。」と三大流派(兵法三大源流)を記している。しかし、この三流も卒然として成立したのではなく、先行の技法を体験した上に工夫考案されたものである[16]

新當流の祖の飯篠家直は『関八州古戦録』によると「鹿伏兎刑部少輔より、刺撃の法を伝授された」となっており、永禄年中「新當流」から「天真正伝香取神道流」を名乗る[17][18]

陰流の祖の愛洲久忠が誰から兵法を学んだかは明らかではないが、愛洲久忠の時代には、関東では既に飯篠家直天真正伝神道流が盛行しており、三河国高橋庄には中条長秀が百年も前に中条流を流布させていた。また15世紀はじめには、念流の祖念和尚(慈恩、相馬四郎義元)の門人中、京六人といわれる人たちが京都奈良を中心に兵法を広めていたと考えられる[19]

この時代の伝書として確認出来るのは、盛嶽文書(大分県佐伯市)として伝わっている永禄8年(1565年)に藤原廣豊が盛嶽氏に発行した新当流兵法書[20]、『武備誌』に掲載された影目録の陰流、また天正年間に外他氏より御子神氏へ出された外他流の目録などがある。

中条流念流新當流(神道流)、陰流は、その後、多くの支流を誕生させることとなる[4]
安土桃山時代

国内再統一の後、兵農分離刀狩が行われた。これ以前に、武士でない庶民が平素から帯刀していた習慣があったことは、日本人と剣術との関わりの深さを認識する上で重要である。

戦場ではなく日常での戦いが前提とされた剣術が主流になったのは、この頃からである。
江戸時代蟇肌撓(ひきはだしない)という袋竹刀を使用した柳生新陰流の演武。袋竹刀は上泉信綱が考案したと伝えられる。(厳島神社で開催される日本古武道協会主催の日本古武道厳島神社演武大会にて)二天一流幕末に外国人カメラマンF・ベアトによって撮影された剣術の稽古。現代の剣道とほぼ同じ道具を使用している。

江戸時代に剣術は大きく発展し、流派は700を超える[21]甲冑着用が前提の介者剣術から、平服・平時の偶発的な個人戦を前提とする素肌剣術へと変わった。それまでの補助的な武器ではなく、打刀と脇差の大小のみでの戦いを前提としているのが特徴ある。

死傷者の生じる木刀での立ち合い(試合)は幕府によって禁止され[22]、約束動作の形稽古が中心となり、のちに竹刀防具が発明され、安全性を確保しながら技を試し合うようになった。

武士が剣術道場を開いたことで非武士階級である、農民町人が剣術を学ぶようになったことも特筆すべきことである。
殺人刀と活人剣

「殺人刀(せつにんとう)」と「活人剣(かつにんけん)」[注 1]とは、元来はの『無門関』・『碧巖録』などの公案での用語である。

上泉信綱1566年(永禄9年)2月肥後国丸目蔵人佐に与えた印可が「殺人刀・活人剣」とあり、また一刀流の本目録14に「まんじ・殺人刀・活人剣」という名前が見られるように、武術に対して、他の禅の用語と同じく大きな影響をあたえた。
兵法家伝書

江戸時代初期、柳生宗矩が『兵法家伝書』において、次のように禅とは異なる意味で使用した。「一人の悪に依りて、萬人苦しむ事あり。しかるに、一人の悪をころして萬人をいかす、是等誠に、人をころす刀は人をいかすつるぎなるべきにや」、「人をころす刀、却而人をいかすつるぎ也とは、夫れ亂れたる世には、故なき者多く死する也。亂れたる世を治めむ爲に、殺人刀を用ゐて、已に治まる時は、殺人刀即ち活人劔ならずや。こゝを以て名付くる所也」

仇なす悪に打ち勝って確実に殺すのが殺人刀であって、その悪を殺したゆえに万人が救われ「活きる」のが活人剣だと言う。兵法、すなわち刀で人を斬る行為にはこの両面がないとならないと諭し、日本の剣術が殺人技法にとどまらず昇華したことを示す。ここで臨済宗沢庵宗彭が柳生宗矩に『不動智神妙録』を与えたことにより、江戸柳生で「剣禅一致」が説かれた結果として「刀法の尾張柳生」に対して「心法の江戸柳生」と言われたことは史実であり、禅の考え方が影響を与えたことは否定できない。

なお、現代の新陰流に伝わる柳生宗厳の書状に、「当流に構える太刀を皆殺人刀という。


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