前立腺癌
概要
診療科腫瘍学, 泌尿器科学
分類および外部参照情報
ICD-10C61
前立腺癌(ぜんりつせんがん、英語: Prostate cancer)とは、前立腺(外腺)に発生する病気、癌のひとつ。さまざまな組織型の悪性腫瘍が生じうるが、そのほとんどは腺癌で、通常は前立腺癌≒前立腺腺癌の意味で用いられる。2012年4月日本で初めてロボット手術であるda Vinciの健康保険適用となった疾患である[1][2]。前立腺炎、前立腺肥大症と関連する可能性も研究されている。なお、少数ではあるが女性前立腺癌の症例報告がある[3][4]。 前立腺がんは従前より、世界全体にて非常に発生率が高く、黒人・白人の発生頻度が著しい。そのため、米国における男性罹患率は1位、死亡数2位と最も罹患数の高いがんの一つとなっている[5]。アジアは人種・環境の両要素にて最も罹患率の低い地域であり、日本では、1950年(昭和25年)当時国内の前立腺がんによる死亡率は男性のがん死全体の0.1%とされ、長らく米国の1/10?1/20の割合と云われてきた[6]。だが日本国内においてもその後、患者数は増加の一途を辿ることとなる。 国立がんセンターによる前立腺がん統計調査においては、1975年(昭和50年)当初およそ年間約2,000人であった罹患者数が2019年(令和2年)には年間94,748人まで急激に増加している。2019年統計では、国内において男性の部位別がん罹患数は首位(2位は大腸がん、3位は胃がん)であるが、2020年(令和3年)男性の部位別がん死亡数は12,759人の7位となっている[7]。 前立腺癌は癌の中では進行性が遅く、生存率・治癒率は高いうえ、予後も他の癌に較べると大変よい。日本において45歳以下での罹患は家族性以外はまれで、50歳以降に発症する場合が多い。その割合は年を追うごとに増加し、80歳以上においては、実に半数以上の日本人男性が潜在性の前立腺癌を有するとされる[5]。米国では男性の約20%が生涯に前立腺がんと診断され[9]、同一人種間の日本と欧米での患者割合の差は食生活、とりわけ米国では脂質摂取量が日本の倍以上ある[10]ことが大きな要因ではないかと指摘される。日本国内においても食生活の欧米化[11]により、近い将来日本においても男性癌死亡者の上位となることが予想されている。また韓国でも経済成長に伴う食生活の変化により前立腺癌の死亡率は上がりつつある[12]。 また、前立腺液に含まれるたんぱく分解酵素であるPSAのスクリーニング検査は近年普及傾向にあり、そのため前立腺癌が発見される確率も高くなっているが、一方でPSA検査は会社や地方自治体における検診で必須項目になっておらず通常はオプション扱いであり、受診するには自費負担となっている[13]。このためPSA検査まで受けず定期検診を受けて安心しきり、自覚症状が出てから前立腺癌に気づいてすでに進行している状態だった例も多い[13]。このため今後、定期検診の中にPSA検査を組み込む自治体や健康保険組合が増加することが期待されている[13]。一般に腫瘍マーカーとしてPSAの信頼度は高いとされており、正常値は4ng/ml以下程度とされている[14][15]。
歴史
前立腺癌の増加アメリカでの男性のがん発生比率(2008年)[8]。前立腺癌は全体の25%を占めている。
原因
医薬品
?瘡(にきび)のためテトラサイクリンを4年以上使用した男性は前立腺癌の相対リスクが1.70倍で有意に高く、アクネ菌
食事
同一人種の居住地域による罹患率の差から、食事が原因の一つと考えられている。高脂肪の食事は前立腺癌のリスクとなる。乳製品の摂り過ぎも前立腺癌のリスクを高めるといわれる[18]。日本の国立がん研究センターが4万3000人を追跡した大規模調査でも、乳製品の摂取が前立腺癌のリスクを上げることを示し、カルシウムや飽和脂肪酸の摂取が前立腺がんのリスクをやや上げることを示した[19]。