前橋市
[Wikipedia|▼Menu]
「前橋」の表記が初めて現れるのは天正17年(1589年)の「北条家人数付」(『群馬県史・資料編7』『新編高崎市史・資料編4』所収)であり、これ以降「厩橋」と「前橋」が混在して使われている[4]

『直泰夜話』には酒井忠挙の時代に公儀に届出をして「厩橋」から「前橋」に改めたとあるが、史料上はそれより前の酒井忠清時代の慶安2年(1649年)以降は一貫して「前橋」表記となる[5]
「まやはし」と「まへはし」[ソースを編集]

「厩橋」の読みは通説では「まやは(ば)し」とされてきた[注 2]

その根拠は、前述の「長尾顕景書状」と一連のものである「徳雲軒性福条書写」において「まやはし殿」が現れる[6]他、長楽寺の僧義哲による『永禄日記』(永禄8年(1565年))では「マヤ橋」、酒井忠世による元和年間の文書にも「まやはし」とあるためである。このため、「厩橋=うまやはし」から「まやはし」に音が転化し、それに対し「前橋」と書かれるようになった、と説明されてきた[3]

他方で、「厩橋」を「まへはし」と読む史料も存在し、1510?1560年と推定される和歌山県熊野那智大社実報院『諸国旦那之大帳』で、「まへはし殿」が現れる。また天文21年(1552年)に日叙(身延山久遠寺15世)が満善寺(伊勢崎市)で書いた「仁王経科註見聞私」の奥書に「厩橋」に「マヘハシ」との振り仮名がある[7]

「前橋」表記が生まれる前から併存していた「まやはし」と「まへはし」の読みであるが、地名表記が「前橋」に統一された後も両者は併存し続け、万延元年(1860年)の各国武鑑においても「まやはし」との記述が見られる[8]
「厩橋」の由来に関する俗説と批判[ソースを編集]
平岩親吉由来説[ソースを編集]

『直泰夜話』に、「平岩殿など在城のころは、利根川細くて、厩廓より利根川に橋を架けて、古市村の方へ往来有りし故、厩橋と申し候。」とあるが、上述の通り厩橋は平岩氏入城以前からある地名である[3]
駅(うまや)由来説[ソースを編集]

尾崎喜左雄『前橋小史』などに引かれる説で、古代東山道のうち、群馬(くるま)の駅は上野国府元総社町)付近と想定されるところ、その駅の近くにあった橋に由来して厩橋という地名が付けられたとする[3]

しかしながら、上述のように厩橋の地名の初出は戦国時代であり、それ以前は『吾妻鏡』『東路の津登』といった近辺の地名(大胡、青柳など)の現れる文献中にも見られない。したがって、厩橋を古代の駅に由来する地名とみるには、史料が不足している[9]
地理(2009年以後)[ソースを編集]JR東日本群馬総社駅近辺を蛇行する利根川と前橋市街。利根川の奥は烏川

平成の合併により、面積は2倍ほどになった。そのため、現市域は関東平野の北西端、赤城山の南麓から平野にかけて位置する。全国の都道府県庁所在地では海から最も遠い。市内には利根川広瀬川などの利根川水系が流れる。広瀬・桃ノ木川以北は赤城山麓(丘陵、扇状地、緩やかな平地)が広がる。広瀬・桃ノ木川以西南は広瀬低地面帯、利根・端気川以西は前橋台地である。

中心の鉄道交通は両毛線で、特に前橋駅駒形駅があるが、群馬県の主要幹線(北陸新幹線上越新幹線および高崎線)から外れている。よって、主要の停車駅の高崎駅へ行くには、新前橋駅を経由しなければならない。上毛電鉄も存在するが、始発点ともに他の幹線に接続していないため利用者は少なく、主要であるとは言えない。

また、海岸より100km以上離れた内陸に位置するにもかかわらず、現市域の中南部以南は海抜が100m前後と低い[10]。また、市の北部には海抜1,000m以上の地点も存在し、旧富士見村の赤城山(特に黒檜山)南面は1,800m以上の地点がある一方、下阿内町の利根川河川敷では海抜60m強である[10]。よって、市内で標高差が1,700m以上もある。なお、最高地点は約1,826mで、黒檜山(1,828m)山頂より僅かに南にずれた地点である。

山岳:赤城山系 ? 駒ヶ岳(1,685m)、地蔵岳(1,674m)、長七郎山(1,579m)、荒山(1,572m)、鈴ヶ岳(1,565m)、鍋割山(1,332m)

河川・用水:利根川、広瀬川、桃ノ木川、荒砥川、赤城白川、粕川、寺沢川、大正用水、群馬用水

湖沼:大沼、小沼、覚満淵、千貫沼、荒子沼、五料沼、乾谷沼、吉沼
2020年(令和2年)撮影の旧前橋町中心の空中写真。利根川が北から南へ流れる。同年8月11日年撮影の32枚を合成作成。
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。
気候[ソースを編集]

太平洋側気候内陸性気候を併せ持つ。の群馬県は新潟県長野県から北西の季節風が吹き、県境の山岳部に甚大な積雪をもたらす。が、県中部の前橋市域に達するころには乾燥している。この季節風は「からっ風」や、赤城山を吹き下ろすため「赤城颪」と呼ばれる。この影響で冬は晴天の日が多いが、数年に一度30cmを超える激しい大雪に見舞われることもあり、平成26年豪雪で前橋観測所は観測所の史上最高となる最深積雪73cmを記録した。

群馬県の平野部にある前橋市、伊勢崎市から埼玉県熊谷市にかけての高崎線沿線沿いの上武地域は冬の最低気温が比較的高く、南関東内陸部の地点(東京都府中市八王子市神奈川県海老名市千葉県佐倉市など)よりも高いことが多い。

は内陸部に位置するため地表が温まりやすく、埼玉県熊谷市などと並び暑さが烈しい。2001年(平成13年)7月24日には最高気温40.0°Cを観測。気象官署[注 3] で40°C以上の最高気温を観測したのは、1978年昭和53年)8月3日山形県酒田市で最高気温40.1°Cを観測して以来23年振りであり、平成初の記録であった。更に、この高温多湿などにより、が多い特徴がある。

前橋市昭和町(前橋地方気象台、標高112m)の気候
月1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月年
最高気温記録 °C (°F)22.0
(71.6)24.6
(76.3)27.1
(80.8)32.4
(90.3)36.5
(97.7)39.5
(103.1)40.0
(104)39.8
(103.6)38.1
(100.6)33.0
(91.4)27.3
(81.1)25.2
(77.4)40.0
(104)
平均最高気温 °C (°F)9.1
(48.4)10.0
(50)13.5
(56.3)19.3
(66.7)24.2
(75.6)26.8
(80.2)30.5
(86.9)31.7
(89.1)27.3
(81.1)21.7
(71.1)16.4
(61.5)11.5
(52.7)20.2
(68.4)
日平均気温 °C (°F)3.7
(38.7)4.5
(40.1)7.9
(46.2)13.4
(56.1)18.6
(65.5)22.1
(71.8)25.8
(78.4)26.8
(80.2)22.9
(73.2)17.1
(62.8)11.2
(52.2)6.1
(43)15.0
(59)
平均最低気温 °C (°F)?0.5
(31.1)0.0
(32)3.1
(37.6)8.2
(46.8)13.6
(56.5)18.0
(64.4)22.0
(71.6)23.0
(73.4)19.3
(66.7)13.2
(55.8)6.9
(44.4)1.9
(35.4)10.7
(51.3)
最低気温記録 °C (°F)?11.8
(10.8)?9.0
(15.8)?7.8
(18)?3.1
(26.4)0.3
(32.5)6.0
(42.8)11.9
(53.4)13.6
(56.5)8.4
(47.1)0.6
(33.1)?3.5
(25.7)?7.4
(18.7)?11.8
(10.8)
降水量 mm (inch)29.7
(1.169)26.5
(1.043)58.3
(2.295)74.8


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:378 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef