刺青
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こうした「入れ墨のファッション化」と日本国内のサブカルチャーの影響により、アニメのキャラクターやアイドルなどを入れ墨する事例も現れている[21][22]。入れ墨といえば前述の反社会性ばかりが取沙汰された時代があったが、歌手の安室奈美恵が自らの亡き母親や息子の名前を入れ墨にしている事例からも解るように、一部の人たちは「愛する対象との同一化」や「憧れの対象との同一化」を図るための、自己表現の為の装飾道具に変化しつつあると主張している。

ナチスのシンボル等のタトゥーを入れる者もおり、アメリカではユダヤ人医師に不快感を与えたり[23]、ドイツでは地方議員が起訴されるなど、社会問題になっている[24]
美容用途ヘナを用いて手に文様を描く印僑女性: シンガポール

女性の眉や唇などに針の深度を浅くしたアートメイク・タトゥー(英語版)(数年で薄くなるが完全に消えはしない)を施すほか、南アジアやアフリカの女性が施すヘナ(植物性の染料)を用いて手に模様を描く(染料なので消える)ことが行われている。TATsと呼ばれるエアブラシを用いて皮膚表面に色素を定着させ、針を使った入れ墨に近い描画を可能とした技法も存在する。この手法では一度描いた文様を油性溶剤を用いて消し去り、新たに描き直すことも可能であるため、一般的な入れ墨では忌避されるような図案であっても大胆に描くことが可能。入れ墨を入れる前に図案が自分に合うかどうか事前に確認する用途にも用いることができる。また、神社の祭礼時の出店などで良く売られている、模様の印刷された極薄のフィルムに超微粒子の顔料を使用した、プラモデルの耐水デカールの様に肌に転写する「タトゥーシール」や、タトゥーのスタイルを取り入れたタトゥーストッキングもあり、ファッションの一部として用いられているが、こうした“消せるタトゥー(入れ墨)”の存在が「入れ墨は消せないが、タトゥーは消せる」といった誤った認識を一般人の間で蔓延させる要因ともなっている(ただし針を浅く入れるライトタトゥーをおこなえば、数年で消えてしまうようにする事も可能である)。美容用途の入れ墨は人間以外に対しても行われており、色素が薄い白毛の犬などの鼻部に生じてしまう白斑を隠すために黒色の入れ墨を施し、ドッグショーでの評価を上げるケースなどが知られている。
性的装飾

主に性的サービス業に従事する女性が、男性の性的興奮を高める性的装飾として入れ墨を施す文化が各国に存在しており、女性器の周辺を装飾している場合も多い。東南アジアの一部の国においては、適齢期に婚期を逃した独身女性が眉部に太幅の眉毛の形状(ちょうど日本のバブル期に流行した眉毛の形である)に入れ墨を施すことで、特定の男性に限定されずに幅広く恋愛を行う意思(=夜這いへの誘い)を示すサインとする習俗がある。
組織帰属の証

日本の暴力団や中華系のなど、反社会的組織の構成員の多くが入れ墨を入れている。欧米においても、ロシアマフィアや米国の白人至上主義団体が入れ墨を構成員の象徴として用いている。日本の暴力団関係者が入れ墨をする理由としては、社会からの離脱と帰属組織への忠誠を表し、痛みに耐えて消えない刻印を背負うことによる覚悟、また「彫り物をしている」と流布することで周囲を威圧するなどが挙げられる。その図案は日本の伝統的な題材を描いたいわゆる「和彫り」が主流である[注釈 3]。特定の犯罪組織への帰属を示す入れ墨の存在により、当該犯罪組織からの離脱が困難になる場合があるため、米国においては自発的な犯罪組織脱退者に対して入れ墨除去手術の費用を公的に負担する場合がある。反社会的な組織に限らず、近代国家においても国家への帰属意識・忠誠の確認として入れ墨を入れた例がある。朝鮮戦争において中華人民共和国が義勇軍の名目で参戦した時、実際にはその名に反して多くの者が国民党軍から寝返ったばかりの兵士であり、人海戦術の使い捨ての駒とされた。そのため少なからぬ数の兵士が自ら国連軍に投降し、そうでなくても捕虜となった義勇軍兵士たちは、中華人民共和国への帰参を望まなかった。中国義勇軍の捕虜たちの3分の2を占める1万4000人が大陸ではなく、台湾への渡航を希望した。台湾への渡航を希望する者は、自らの意思で、あるいは半ば強制されて、国民党への忠誠・反共を表す文言を入れ墨として入れた。
医療関係入れ墨による色調再建(左乳輪)
乳頭・乳輪の再建
形成外科領域では、乳頭・乳輪の再建のために入れ墨の技術を用いることがある。「乳房再建#乳頭・乳輪の再建」も参照
メディカル・アラート・タトゥー
意識を失っている状態やその緊急搬送時などの、自身の身体情報や病歴を伝達できない状況の想定下で、持病やアレルギーや検視では判別が難しい内臓の異常を、医療従事者などに迅速に知らせる目的のタトゥーのこと。脈拍を検べるときに発見しやすい手首の内側に入れる人が多い[25]。緊急性はないが、見た目で判別がつきにくいことで他者から誤解されやすいため、片耳に聴覚障害を知らせるタトゥーを施した例もある[25]
傷跡隠し
家庭内暴力や暴行、自傷の傷跡を隠すためのタトゥー。[25]
入れ墨の技術

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独自研究が含まれているおそれがあります。(2022年6月)


雑多な内容が羅列されています。(2022年6月)


手ぬぐいを噛んで痛さに耐え恋人の名を刻む江戸時代の女郎。『風俗三十二相月岡芳年、1888年

器具を使ったから「洋彫り」、手で彫ったから「和彫り」とは一概に分類できず、絵の画風や全体の様子で判断する。和風の絵でも筋は器具でぼかしは手彫りで行うなど、手法は彫師により千差万別である。現在は機械彫りが主流であるが、暴力団などの間では手彫りが一種のステータスとなっている。一般的に、伝統的な手彫りの方が痛みが少なく傷の治りが早い。現在では技術の進化、向上により肌へのダメージが最小限に抑えられていて、彫師の技術はそこで判断することもできる。手彫り・機械彫り共に、彫師の技術や作風によって所要時間に開きがある。
手法及び用語
手彫り(テボリ)
柄の先で針を束ね、手を動かして肌に墨を入れる。
羽彫り(ハネボリ)
手彫りの技術。針を皮膚に刺した後、針先を跳ね上げることで穿孔が広がり色素が多く入る。
突き彫り(ツキボリ)
手彫りの技術。
隠し彫り(カクシボリ)
腋下・内股など他人には見られにくい場所に、花びらなどで隠れた名前や言葉、淫靡な絵を彫る。
毛彫り(ケボリ)
人物や動物の毛の部分を彫ること。通常よりも細い針で彫ることが多い。
筋彫り(スジボリ)
下書きとしてボカシの前に全体の輪郭を彫る。
ボカシ(あけぼの)
墨の濃淡や各色を用いて、全体を彫っていく。
ツブシ
塗りつぶすこと。
シャッキ
手彫りの音。
マシーン彫りの様子
機械彫り(キカイ・マシーンボリ)
磁石の磁力またはモーターの回転運動を用い、機械の上下運動により肌に針を刺す。束ねられた針には浸透圧により墨が蓄えられる構造。
ライナー・マシーン
ライン(筋彫り)を行うための「ライナー」と呼ばれる入れ墨器具。
シェーダーマシーン
シェーディングを行うための「シェーダー」と呼ばれる入れ墨器具。シェーディングとは、ツブシやボカシ、カラー等の施術を指す意味の用語。
半端彫り(ハンパボリ)
彫りの痛みに耐えられない、費用が続かないなどの理由により、入れ墨が途中で終わっていること。
白粉彫り(オシロイボリ)
血行が盛んになると浮き出ると言われている彫り物のこと。創作上のものであり、現実には不可能である。蛍光塗料を用いてブラックライトに浮かび上がる入れ墨は存在するが、通常の状態でも絵は見える。
二重彫り
刺青を入れた人物の図柄を入れること。水門破り、花和尚魯智深、九紋龍史進など。

図柄の周囲の雲や波を彫ったもの。
抜き彫り
額を彫らずに主題だけを彫ったもの。
古梅園
和彫りのインクとして使われる書道用の固形は奈良の古梅園製の和墨が良いとされ、明治時代の彫師の間では古梅園製の「桜」が定番として使用されていた。続きを別の彫師が彫る際、墨の銘柄が違っていると色が変わってしまうため、共通してこの銘柄が使われたのだという。菜種油煙の上質な墨が刺青にはいいとされており、現代では梅花墨、金神仙、五つ星紅花墨などが使われている。
医療的側面

昭和の頃に和彫りの入れ墨を施した者に対しては、MRI検査を行うことができない場合がある。MRI検査の際に金属が多く含まれる顔料を使用した入れ墨がある部分に、火傷や痛み、入れ墨の変色が発生することや、MRI画像にノイズが入ることがあるためで[26][27][28]、このようなトラブルは入れ墨に使われるインクの成分 (特に酸化鉄やその他の金属成分が原因とされる) によって発生する。そのため病院ではMRI検査の前に患者に入れ墨の有無を確認することがある。ただし、このような事例は平成以降に製造されたタトゥーインク(酸化鉄などをチタンなどの磁性を帯びない金属で代替しているインク)の場合には稀であり[29]アメリカ食品医薬品局は火傷のリスクに比べてMRIによる診断を行う有用性の方が非常に高いとしている[30]。MRI撮影を行う場合でも、入れ墨がある部分に冷却材などを当て、医療従事者が細心の注意を払い、異常があれば即座に撮影を中断できるような体制を作ることが求められる[31]
感染症

オートクレーブ等の殺菌方法では、血液中の全ての種類のウイルスを死滅させることはできないため、施術用の針やインクの再利用は感染症の原因となる。そのため、血液の付着する施術用の針やインクは使い捨てにする必要がある。

安全管理が不十分な場合、B型肝炎C型肝炎HIVに感染する場合がある[32]ほかアレルギー[33]肉芽腫[34]の発症が報告されている。


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