独特のテンポで進むストーリーで、知的で社会的地位も高い犯人が完全犯罪を目論むも、一見愚鈍で無害そうなコロンボ警部にアリバイを突き崩され、自ら破滅の道を転落する必罰的展開ながら、コロンボ警部と犯人との駆引き、静かにそして確実に追い詰められて行く犯人の内面の葛藤・焦りといった感情描写や、コロンボ警部のユーモラスな台詞回しなど、そのいずれもが味わいのある1話完結の人間ドラマとなっている。脚本家も監督もメインと呼べるほど多数を担当をした者はおらず、基本設定を厳守した中で各自の個性を発揮する競作となっていることもあって、設定を深追いしていくようなキャラクター・ドラマの方向へは進まなかった。
2010年にはコロンボ警部をダーク・ベネディクト、ロイ・フレミングをパトリック・ライカート(英語版)で『殺人処方箋』舞台版がイギリス各地で上演されている[2]。この公演は好評に終わり、2011年にキャストを替えて再演が行われた[2]。 最初に完全犯罪を企む犯人の周到な犯行を視聴者に見せた後、一見して隙のない犯人が見落としたほんの僅かな手がかりを元にして、コロンボ警部が犯行を突き止める物語となっている。これはもともと「犯人が主役のクライムノベル」であったものを舞台化するにあたって、主人公の犯人と主人公を追い詰める探偵役の構図に再編した経緯による(上記#概要参照)。 これは、ミステリー小説では倒叙物と呼ばれる形式である。倒叙物はイギリスの作家オースティン・フリーマンが「読者が(作中の)犯罪を目撃し、推理に必要な事実を全て読者に提供しておくような探偵小説は書けるだろうか?」と提唱し、実際に執筆したことに始まる。レビンソンとリンクは共著『Stay Tuned: An inside Look at the Making of Prime Time Television』(1982年)で、フリーマンの影響を受けていたことを認めると共に、倒叙物の形式がテレビ番組に使えることをパイロット版制作を経て直観したと語っている[3]。 また、日本においては「倒叙物」の説明を行う際には、日本のテレビドラマ『古畑任三郎』と並んで代表作に挙げられ、「『刑事コロンボ』のような作品」と説明されることも多い[4][5]。 犯人は医者や弁護士、作家、会社重役、スターなど地位や名声のある知識人、有名人であることが多く、犯行動機も権力欲や遺産目的によるものが多い。そのため、犯人はコロンボに追い詰められていても高飛びするわけにはいかず、己の破滅を待つだけの焦りが描かれる。知能犯である彼らの犯行はいずれも緻密かつ周到で、コロンボから追及されても鮮やかにかわしていく。これら特権階級(エスタブリッシュメント)の世界をうかがわせること、そしてそれらの人々が作り上げた完全犯罪を覆していくことにこの作品の魅力があるといえよう。原案者のリンクとレビンソンは、コロンボの庶民的で凡庸なキャラクターの対比を鮮明にするため犯人を特権階級に設定したと語っている。 レギュラーキャラクターはコロンボのみである。同僚の刑事なども顔ぶれは一定せず、同一刑事の出演は長いシリーズ中に2-3回程度で、固定された者はいない。そのためよりコロンボと犯人という二人の主人公の対決に焦点が絞られ、どのエピソードから見ても問題のない構成となっている。 テレビドラマでは、ともすると視聴率重視のために短い時間で様々な要素が盛り込まれがちだが、本作では暴力や性的描写が存在せず(新シリーズの一部エピソードを除く)、ドラマは犯人とコロンボの心理戦を中心に進められる。 ゲストスターは犯人を演じるのが原則であるが、「初夜に消えた花嫁」など、例外もある。 アメリカで放送された年:1968年と1971年から1978年まで 放送回初回放送日タイトルゲストスターの役柄ゲストスターゲストスター声優共演[6]
作品の特徴
倒叙ミステリー
キャスト
シリーズ各タイトル・出演者・スタッフ一覧
旧シリーズ
(太字は被害者役)[7]監督脚本
アメリカ日本NHK-BS
※ゲストスター声優の()内の人名は完全版における追加キャスト
単発放送版(1968年)
11968年2月20日1972年8月27日[注釈 2]2010年4月9日殺人処方箋
"Prescription: Murder"精神科医
レイ・フレミングジーン・バリー[注釈 3]NHK版:瑳川哲朗
日本テレビ版:若山弦蔵(麦人)ニナ・フォック(富永美沙子)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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