切腹_(映画)
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その他

小姓:天津七三郎、田中謙三、中原伸、池田恒夫、宮城稔、門田高明、山本一郎、高杉玄、西田智、小宮山鉄朗、成田舟一郎、春日昇、倉新八、林健二、林章太郎、片岡市女蔵、小沢文也、竹本幸之佑
スタッフ

監督:
小林正樹

製作:細谷辰雄

製作補:岸本吟一

脚本:橋本忍

原作:滝口康彦(『異聞浪人記』より)

撮影:宮島義勇

音楽:武満徹

美術:戸田重昌、大角純平

録音:西崎英雄

照明:蒲原正次郎

編集:相良久

スチール:梶原高男

助監督:丹波康二

装置:中村良三

装飾:田尻善一

衣裳:植田光三

技髪:木村?右ヱ門

結髪:木村よし子

進行:内藤誠

撮影助手:関根重行

照明助手:奥谷保

録音助手:藤田茂

編集助手:瀬頭純平

製作助手:斎藤次男

現像:東洋現像所

時代考証:猪熊兼繁

衣裳考証:隅田董之助、河村長灌

殺陣:加登秀樹

題字:勅使河原蒼風

評価

『切腹』は、一部の批評家からは切腹場面の残酷さを非難されたものの、カンヌ映画祭などの海外の映画祭では高評価され[1][2]、1962年度のキネマ旬報ベストテンでも総得点数244点で第3位となった[3][4]

三島由紀夫もこの映画を好評し、竹光での切腹という残酷さについては、真刀の切腹でも実際はもっと凄惨であるとし、「演出者があのシーンに、輸入品にすぎぬ近代ヒューマニズムの怒りをこめたつもりであるなら、観客の反応は計算の外だつた」として[2]、どんなに残酷に強いられた切腹であったとしても、その行為自体は、「武士の名誉を賭けた意志的行為」であり、映画の演出者がその「〈名誉〉の固定観念と、〈誤まてる〉道徳」を笑おうとも、一般的な観客の心の奥底でその自殺行為に「美学」を感じることは否めなく「切腹者のいさぎよさに、高潔な意志のあらはれと、一つの美の形を無意識に見てゐる」と、この映画の成功の要因を解説している[2]。外国の批評家が、「切腹」からギリシア悲劇を聯想したことは、私には興味深い着眼と思はれ、それは作家が意図した否定とは逆に、たとへ形骸化したとはいへ、一民族の一時代のモラルを宿命と見て、これに対する人間の抵抗と挫折を、包括的に肯定した批評であつた。因みにギリシア悲劇が、人間の死の場面を決して舞台に出さなかつたことはよく知られてゐる。
かくして「切腹」は、知性的な部分と感性的な部分の、両刃の剣を持つた作品であつた。そしてその愬へ方が、相反する方向へ向ひながら、そこに異様な均衡を保ちえた作品であつた。ただ作者が、残酷場面の意図を、主題の強調と展開のために必要だつたと、もつぱら知的に説明してゐるのは疑問のある点で、この作品の残酷さを残酷美に高めたものは、むしろこの作品の感性的側面の力であり、又、一見知的に見える構成と場面設定の単純性は、実は伝習の形式美と不可分であることを言ひたかつたのである。そしてそれは私がここに事々しく言ふまでもなく、観客がつとに、無意識の裡に感じとつてゐたことである。 ? 三島由紀夫「残酷美について」[2]
逸話

終盤の津雲半四郎演じる
仲代達矢と沢潟彦九郎役の丹波哲郎の、護持院原での決闘では殺陣に使われる竹光ではなく真剣が使われており、文字通り命懸けの撮影であった。この時の仲代が用いているのが、戦国時代の「沈なる身の兵法」といわれる鎧武者が戦うために腰を低く落とし、脇に刀を構える「八相の構え」による介者剣術であり、丹波が江戸初期の尾張藩柳生利厳(兵庫助)が創始した「直立たる身の兵法」(つったったるみのへいほう)と「上段・中段の構え」、すなわち現代の剣道の原型である背筋を伸ばした構えで戦っている。つまり、戦国生き残りの武士を演じる仲代と、江戸時代の当時としては最先端の構えを習得している丹波の対照が鮮やかに描写されている。時代考証家の大森洋平が「鎧武者の刀法」の例として時代劇制作スタッフに例示しているほどである[7]

劇中において丹波哲郎演じる沢潟彦九郎が修めた剣術の流儀として「神道無念一流」の名前が登場する。しかし似た名前で実在する流儀である「神道無念流」は、この映画の舞台である寛永年間にはまだ存在しないため、架空の流儀であると思われる。

千々岩求女が竹光で切腹したストーリーと、音楽担当が武満徹であったことを掛けて、当時の松竹の宣伝部には、「切腹もタケミツ、音楽もタケミツ」という内輪のジョークがあった[8]

新免一郎役の安住譲は川崎麻世の実父である。

脚注[脚注の使い方]^ a b c 「さ行――切腹」(なつかし 1989
^ a b c d e 「残酷美について」(映画芸術 1963年8月号)。32巻 2003, pp. 572?576に所収
^ a b 「昭和37年」(80回史 2007, pp. 130?137)
^ a b 「1962年」(85回史 2012, pp. 190?198)
^ 「第十一章 映画『人斬り』と昭和四十年代」(山内・左 2012, pp. 294?318)
^ 「第二章 映画『人斬り』と三島由紀夫――田中新兵衛と永井尚志」(山内・戦後 2011, pp. 56?107)
^ 大森洋平『考証要集 秘伝!NHK時代考証資料』(文春文庫、2013年12月)pp.314-315。なお、現代剣道で八相の構えは型稽古に残るのみで試合では殆ど用いない。詳しくは五行の構え参照。
^ 戸板康二『ちょっといい話』(文藝春秋、1978年1月)pp.188-189

参考文献

『キネマ旬報ベスト・テン80回全史 1924-2006』キネマ旬報社キネマ旬報ムック〉、2007年7月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4873766560。 

『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』キネマ旬報社〈キネマ旬報ムック〉、2012年5月。ISBN 978-4873767550。 

日高靖一ポスター提供『なつかしの日本映画ポスターコレクション――昭和黄金期日本映画のすべて』近代映画社〈デラックス近代映画〉、1989年5月。ISBN 978-4764870550。 

『決定版 三島由紀夫全集32巻 評論7』新潮社、2003年7月。


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