日本において、偽札事件に比べ低額であることから事件としては少ないが、使用目的で切手を偽造しようとしたものとして著名なものは、1913(大正2)年に発生した「菊切手偽造事件」がある。この偽切手は、早期に発見され押収されたため現存するものが少なく、逆に偽造品の方にプレミアがつく結果となった[9]。 切手は郵便料金を前納した証紙であるため、その複製には一定の制約がある。 1972年(昭和47年)に制定された郵便切手類模造等取締法
郵便切手類模造等取締法
郵模法の第1条第2項では、総務大臣の許可を受けたものについては郵便切手の模造をしてもよいとされている。許可に関しては郵便切手類模造等の許可に関する省令[12]にも定めがある。これは、海外で発行された切手や発行後50年が経過してパブリックドメインになっている切手にも適用される。実際、切手収集家向けに発刊されている出版物のように、原色かつ実寸で切手の写真を印刷しているものには、『令和XX年X月X日郵模第XXXX号』といった許諾番号が記載されている。現在では政府機関にオンラインで申請することができる[13]。
しかし、出版するたびに許可が必要であるとすれば、新聞や雑誌など速報性が求められる出版物では郵便切手を紹介することができなくなってしまう。この問題を解消するため、「郵便切手類模造等取締法第1条第2項の許可を受けたものとみなされるもの」(昭和47年10月30日郵政省告示第881号)[14]で挙げられた条件を満たすものについては総務大臣の許可を受けたとみなすこととされている。ここで挙げられている条件の例としては、白黒印刷する場合、切手に「模造」などの文字を入れた場合、印面に黒い線をいれている場合、紙以外の材質で作る場合などがある。雑誌や書籍に切手の画像を掲載する場合に黒い斜め線が入れられていたり、文字が入れられている場合が多いのは、この規定にしたがって総務大臣の許可を不要とするための措置である。
以上のように、日本において切手を紙に印刷する場合には、総務大臣の許可を得るか、総務大臣の許可を受けたと見なされるための適切な方法で行わなければならない。紙以外に印刷する場合には、材質が紙と紛らわしくなければ先述の告示の条件に合致するため、個別に許可を得る必要はない。 切手の図案は美術の著作物であるため、郵模法のほかに、著作権法の対象となり、この点からも複製などが規制される。 一般に切手の図案は技芸官等による職務著作であって(著作権法第15条)、その著作権は日本郵便株式会社に帰属する。この場合、その著作物は法人著作物であるため、著作権の保護期間は、公表後または創作後50年である。著作権法においては引用などが正当な利用として認められているが(著作権法第32条等)、切手については郵模法によってこれらの利用が制限を受けたり、これら以外の態様の利用が認められる場合がある。 一方、近年発行されているアニメーションのキャラクターを描いた切手などの原著作権者が存在する図案を用いた切手については、日本郵便株式会社とその原著作権者との間に職務著作の関係は成立しないため、一般に原著作権者の著作権が及ぶことになる。このため、著作権法において認められている引用などの範囲を超える利用については、原著作権者の許諾が必要となる[注釈 18]。したがって、郵模法に違反しないからといって無条件に使用するのは控えた方が無難である。
著作権法
備考
和文通話表で、「き」を送る際に「切手のキ」という。
複十字シール - 切手と類似していて目打がある。公益財団法人結核予防会が毎年結核撲滅・予防募金運動のために発行している。
キッテデカ - 切手収集家の警察官(特捜室刑事)が、郵便趣味の知識を武器に次々と事件を解決させる漫画。
特定信書便切手(特定信書郵便切手) - 株式会社Q-POSTが自社の配送サービス用に発行していた「日本初の民間郵便切手」。郵便法による切手ではなく、郵便局での郵便料金納付には利用できなかった。ロジクエスト#沿革を参照。
脚注[脚注の使い方]
注釈^ 米以外に大豆や生蝋・黒砂糖・小麦などもあった。
^ 商品切手→商品券など、例外的に小切手がある。
^ 時には別の素材が用いられる。
^ 日本においては、日本郵政グループの日本郵便株式会社。