分_(数)
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例えば、江戸時代後期の1854年に起った安政東海地震の発生時刻は「朝五ツ時七分」(9:23頃[注 3])(駿河国『震災諸家届書』)のように書かれたものがある[17]。このように表記した場合、「朝五ツ時」(8:06頃[注 4])から一時の7⁄10だけ経過した時刻を指している[18]

安政南海地震では揺れた時間が「凡ソ二分時位」(広島『藝州広嶋?十二月朔日相届候書状写』)と書かれたものがある[19]。これは、現在の単位で約2分間ではなく、一時の2⁄10、つまり20分余揺れたという意味である[注 3]

当時一般的だった不定時法では昼と夜の長さは緯度、季節によって変動し、例えば江戸の場合、夏至では昼の一時は2.64 h、夜の一時は1.36 h、冬至では昼の一時は1.82 h、夜の一時は2.18 hと変動する[20]。従って「一分」の長さは、現在の単位で夏至では昼が約1551、夜が約8分9秒、冬至では昼が約10分56秒、夜が約13分4秒と変動する[21]伊予大洲藩銀二分札。延享3年(1746年)。「貮ふん」と単位が平仮名で表記されている。
分(銀の貨幣単位)

江戸時代の秤量貨幣であるは、天秤による目方(質量)の実測値を以て貨幣単位とされた。これを銀目という。ここで十匁に相当し、質量(分銅)では基本単位となっている「」は、の貨幣単位との混同を避け使用されていない。

銀の貨幣単位は「匁」を基本単位とし、匁の1⁄10が「分(ふん)」、分の1⁄10が「厘」の十進法となっている[22]。金の貨幣単位である「分(ぶ)」との混同を避け「ふん」と称呼された。価格表示は、例えば「銀二匁五分」のようになり、これは銀2.5匁を表す。金一両 = 銀六十匁の御定相場に基けば、銀一分[注 5]は銭6 2⁄3に相当する(銀3分 = 銭20文)。
割合

割合で用いる「分」は、の1⁄10である[4][23]歩合割合)における分の上位の単位は 1⁄10 を表す「」である。従って、十進法の小数0.326を、「三割二分六厘」と表現する。割合に関する記述は、江戸時代初期の『塵劫記』に現れる[24]
百分の一を意味するとの誤解

割合を言うときには、「三割二分六厘」というように表現する。「」そのものが.mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/10 を意味する数詞であるために、「割」とともに「分」を使った場合には、まるで分が1/100 を意味するかのように誤解されがちである。この誤解はかなり広範に信じられている[25][26]

割合においても、分は割の1/10を意味する。割合の全体は十割(10割)であるが、現代の数学において割合の全体は実数の1で示すため、一割(1割すなわち現代数学での1⁄10に相当)の1⁄10である分に1⁄100を示すとの誤解が生じた。
その他の表現・使用

「七分咲き」、「五分五分」、「九分九厘」、「腹八分(腹八分目)」、「盗人にも三分の理」、「七分袖」の表現の中での使われ方は、全体である「十分(じゅうぶ) = 1」に対する割合を表している。つまりそれぞれ「1」を全部として、「0.7咲き」、「0.5 対 0.5」、「0.99」、「満腹の0.8」、「盗人にも0.3(30%)の理屈」、「長袖の70%の長さの袖」ということであり、これらからも「分」が1⁄10の意味であることが明確である。

中国と台湾における国際単位系SI接頭語でも、1⁄10を表す分量単位であるデシ(deci、記号は d )の漢字として「分」を使用している(zh:国??位制#詞頭)。なお、1⁄100のセンチ(centi、記号は c)には「厘」を、1⁄1000のミリ(milli、記号は m)には「毫」を使用している(zh:国??位制??)。

人民元ニュー台湾ドル満州国圓などの通貨単位においても、分は元やから見れば1⁄100とはなるが、その場合でも分の意味としてはあくまで(元や圓の1⁄10である)角の1⁄10であり、分自体が1⁄100を表しているわけではない。例えば「3角5分」は「3.5角」の意味である。
六十進法における「分」

時間と角度は六十進法なので、「分」は六十分の一を表すことになる。なお、この場合の読みは、「ふん」または「ぷん」である。

時間の一分 = 1⁄60時間

角度の一分 = 1⁄60

漢字の旁

分は、メートル法(現在では国際単位系)におけるデシ (d)(=1⁄10)と同等である。したがってデシ接頭語とする単位の漢字(つくり)となっている。ただし、これらの漢字は計量法では認められておらず、使用することはできない。

分 + 米(メートル)→ 粉(デシメートル)

分 + 瓦(グラム)→ 瓰(デシグラム)

分 + 立(リットル)→ 竕(デシリットル)

読み

質量銀目の1⁄10を表す「分」の場合は「ふん」と読む。


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