分岐器
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シングルスリップ(阪神尼崎駅)

ダブルスリップ

ダブルスリップ(ミュンヘン中央駅

アウトサイドスリップ(ドイツ)

ダブルスリップとアウトサイドスリップの併用(ドイツ)
東急大井町線自由が丘にあった三枝分岐器
三枝分岐
左右2つの片開き分岐を重ねて3方向に分岐できるようにしたもの。複分岐(庄内駅
複分岐
左右2つの片開きまたは振分分岐を重ねて3方向に分岐できるようにしたもの。三枝分岐は枝が左右対称に分かれるが、複分岐では分岐点が前後にずれている。
番数

分岐器において基準線から分岐線が分かれる角度については、角度を直接規定する方式と、両線の開きとそれに要する長さの比率に基づいて規定する方式の2種類に大別される。世界的に広く採用されているのは後者の方式で、日本ではこの比率を示す数値について「番数」と称している。分岐器の番数の定義や呼称・表記方法は、国によって次の通り差異がある。
中心線法

中心線法(
英語: Centre line method[11])は、クロッシング(フログ)部において交差する軌間線の接線の角度(交差角)または軌道中心線の交点における接線の角度(分岐角)を、角の中心線の長さと両接線の開きの比率をもって示し、「No.15」(=15番)のように番号(番数)として呼称する。交差番数または分岐番数Nと、交差角または分岐角θとの関係は次の式で表される。

N = 1 2 cot ⁡ θ 2 {\displaystyle N={1 \over 2}\cot {\theta \over 2}}


イギリス[11]・北米・日本などで採用。

直角法

直角法またはコール法(
英語: Right angle method / Cole's method[11])は、クロッシング(フログ)部において交差する軌間線の接線の角度(交差角)または軌道中心線の交点における接線の角度(分岐角)を、一方の接線を底辺とし残る一方の接線を斜辺とする直角三角形の底辺と高さの比率(正接)をもって示す。ヨーロッパでは分岐線の曲線半径を合わせて「190-1:9」(=半径190m、9番)のように単位分数の形で表記する。ロシアおよびCIS諸国では「1/11」(=11番)のように単位分数として表記する。インドでは「1 in 9」(9番)のように表記する。交差番数または分岐番数Nと、交差角または分岐角θとの関係は次の式で表される。

N = cot ⁡ θ {\displaystyle N={\cot \theta }}


ヨーロッパ・ロシア・CIS諸国・インド[11]などで採用。

二等辺三角形法

交差角または分岐角が成す二等辺三角形の等辺と底辺の長さの比で番数を示す二等辺三角形法(
英語: Isosceles triangle method[11])は路面電車などの軌道分岐器で用いられることが多い[12]。交差番数または分岐番数Nと、交差角または分岐角θとの関係は次の式で表される。

N = 1 2 csc ⁡ θ 2 {\displaystyle N={1 \over 2}\csc {\theta \over 2}}


日本

分岐器の番数は、基準線から分岐線が分かれる角度の大小を示すもので、片開き、両開きなどといった分岐器の形状とは無関係に、分岐器に用いられているクロッシング(フログ)の番数を分岐器全体の番数として呼称する[13][14]。クロッシング番数は中心線法を採用し、クロッシング部で接する両軌条の軌間線が成す二等辺三角形の高さ(略図 b {\displaystyle b} )と底辺(略図 a {\displaystyle a} )の比をもって示す[14][15][16]

分岐器類の名称の前に、分岐器で用いているクロッシングの番数を付加し、「8番片開き分岐器」「10番シザーズクロッシング」のように呼称する[13]。クロッシング番数に応じて、クロッシング後方における両方の軌間線[17] の接線がなす角度「クロッシング角」が定められている。曲線分岐器の場合は両方の軌間線の交角[13](クロッシング交点において引いた2本の接線がなす角度[14])をもってクロッシング角とする。

なお、曲線ダイヤモンドクロッシングでは、両方の軌道中心線が交差する角度をクロッシング角と読み換え、それに相応するクロッシング番数を呼称する[13]。シザーズクロッシングでは、使用する分岐器に用いられているクロッシングの番数を呼称する[13]
クロッシング番数

かつて「轍叉番号(てっさばんごう)」とも呼ばれた。JIS E 1301で、クロッシング番数およびその角度は次のように規定されている[13]

クロッシング番数クロッシング角備考[14]
4番14°18'8番クロッシング角の2倍
5番11°26'10番クロッシング角の2倍
6番9°32'12番クロッシング角の2倍
7番8°10'14番クロッシング角の2倍
8番7°09'計算式により算出
9番6°22'
10番5°43'
12番4°46'
14番4°05'
16番3°34.5'8番クロッシング角の1/2
20番2°51.5'10番クロッシング角の1/2


8番、9番、10番、12番、14番のクロッシング角は、クロッシング番数とクロッシング角に関する上記の計算式 N = 1 2 cot ⁡ θ 2 {\displaystyle N={1 \over 2}\cot {\theta \over 2}} により、分未満を四捨五入して定めたものである[14]

他のクロッシング番数のクロッシング角は、次のようにして機械的に定めたものであり[14]、計算式によって算出する角度とは誤差がある[18]

4番、5番、6番、7番のクロッシング角は、それぞれ8番、10番、12番、14番のクロッシング角の2倍とする。

16番、20番のクロッシング角は、それぞれ8番、10番のクロッシング角の1/2とする。


ドイツ

ドイツにおいて、クロッシング番数 (Herzstuckverhaltnis) は分子を1とした単位分数を用いて示す(8番=1:8)。番数はヨーロッパ標準の直角法を用いている。ドイツ連邦鉄道 (DB) および現在のドイツ鉄道 (DBAG) では、番数を含め次の形式で分岐器類を分類呼称している。

例:EW 60-500-1:12 L Fz H

略号意味略号の例
EW分岐器の形式単純分岐 (EW)、外方分岐 (ABW)、内方分岐 (IBW)、複分岐 (DW)、片複分岐 (EinsDW)
60レール種類UIC60レール (60)、S49レールb(49 - ドイツ国有鉄道、ドイツ連邦鉄道、ドイツ国営鉄道)、S54レール(54 - ドイツ連邦鉄道)、R65レール(65 - ドイツ国営鉄道)
500曲線半径分岐線の曲線半径。単位m。
1:12番数単位分数で表記する。例では12番。
L分岐方向左 (L)、右 (R)
Fzポイント部構造弾性トングレール (Fz)、弾性ポイントブレード (Fsch)、ピボット式トングレール (Gz)
H枕木材質木製 (H)、木製のうち広葉樹材 (Hh)、鋼製 (St)、コンクリート (B)

現在のドイツ鉄道で主に使われている分岐器の例である(分岐器呼称のxxはレール種類に応じた任意の数字が入る)。

単純分岐器ノーズ許容通過速度
EW xx-190-1:7,5/6,6(分岐半径190m、7.5番/6.5番)可動40 km/h
EW xx-190-1:7,5(分岐半径190m、7.5番)可動40 km/h
EW xx-190-1:9(分岐半径190m、9番)固定40 km/h
EW xx-300-1:9(分岐半径300m、9番)可動50 km/h
EW xx-500-1:12(分岐半径500m、12番)可動60 km/h
EW xx-500-1:14(分岐半径500m、14番)固定60 km/h
EW xx-760-1:14(分岐半径760m、14番)可動80 km/h
EW xx-1200-1:18,5(分岐半径1200m、18.5番)可動100 km/h
EW xx-2500-1:26,5(分岐半径2500m、26.5番)可動130 km/h
曲線分岐器(一例)
ABW xx-215-1:4,8(分岐半径215m、4.8番)可動40 km/h

またICEが運行するマンハイム-シュトゥットガルト高速線およびハノーファー-ヴュルツブルク高速線用に開発された高速分岐器 (Schnellfahrweichen) には次のようなものがある。分岐器呼称末尾の「-fb」は弾性可動ノーズ付きを示す。複心曲線使用の分岐器は分岐線側を異なる半径の曲線を組み合わせたものにしており、EW 60-7000/6000-1:42の場合、トングレール部は半径7000m、分岐器中央部より後方は半径6000mとなっている。

分岐器呼称許容通過速度
基準線側 / 分岐線側
EW 60-1200-1:18,5-fb(分岐半径1200m、18.5番)280 km/h / 100 km/h
EW 60-2500-1:26,5-fb(分岐半径2500m、26.5番)280 km/h / 130 km/h
複心曲線使用分岐器
EW 60-6000/3700-1:32,5-fb(分岐半径6000m+3700m、32.5番)280 km/h / 160 km/h
EW 60-7000/6000-1:42-fb(分岐半径7000m+6000m、42番)280 km/h / 200 km/h

ドイツ鉄道が開発し1998年に使用を開始したクロソイド分岐器 (Klothoidenweichen) には次のようなものがある。分岐線側の曲線を緩和曲線の一種であるクロソイド曲線として衝動及びレール損耗の低減を図ったもので、EW 60-10000/4000-1:39の場合、トングレール先端を半径10000mとし、分岐器中央部にかけて半径4000mまで曲率が逓増したのち、分岐器後方にかけて再び半径10000mまで曲率が逓減する。この特徴のため、クロッシング部の番数だけでは従来の分岐器と規模を単純に比較できない。

このうち、分岐線側でも220km/hでの通過を可能とした40.15番クロソイド分岐器EW 60-16000/6100-1:40,15-fbはベルリン-ハレ線ビターフェルト駅構内においてハレ方面とライプツィヒ方面の分岐用に2基使用されており、番数は42番高速分岐器EW 60-7000/6000-1:42-fbより小さいものの、分岐器1基の長さは169.2mに達し、ドイツ国内最大の分岐器である。


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