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物質の構成要素としての分子はありふれたものである。それらはまた、海や大気の大部分を構成している。ほとんどの有機物は分子である。タンパク質とその材料となるアミノ酸、核酸(DNAとRNA)、糖、炭水化物、脂質、ビタミンなど、生命を構成する物質は分子である。栄養素であるミネラルは、一般にイオン化合物であり、分子ではない(例:硫酸鉄)。炭素の同素体(異なる分子構造)を示す: a:ダイヤモンド, b:グラファイト, c:ロンズデーライト, d,e,f:フラーレン, g:無定形炭素, h:カーボンナノチューブ
しかし、地球上の身近な固体物質の大半は、部分的または全部が結晶やイオン化合物でできており、分子でできているわけではない。これらには、地球の物質を構成するすべての鉱物、砂、粘土、小石、岩、巨礫、地殻、マントル、地球の核などが含まれる。これらはすべて、多くの化学結合を含んでいるが、識別可能な分子でできているわけではない。
塩や共有結合結晶については、グラフェンのように平面的に、あるいはダイヤモンド、石英、塩化ナトリウムのように3次元的に広がる単位格子の繰り返しで構成されていることが多く、典型的な分子を定義することはできない。また、金属結合を伴う凝縮相(固体または液体)であるほとんどの金属にも、単位格子構造の繰り返しという論旨は当てはまる。したがって、固体金属は分子でできているわけではない。ガラスは、ガラス質の無秩序な状態で存在する固体であり、原子は化学結合によって結合しているが明確な分子は存在せず、塩、共有結合結晶、金属を特徴づける単位格子構造を繰り返す規則性も存在しない。 一般に、分子は共有結合によって結ばれている。いくつかの非金属元素は、自由原子としては存在せず、環境中では化合物または等核分子としてのみ存在するものがある。水素はその例である。 金属結晶は、金属結合によってまとめられた1つの巨大な分子と見なすことができると言う人もいれば[22]、金属は分子とはまったく異なるふるまいをすると指摘する人もいる[23]。 共有結合(covalent bond)は、原子と原子の間で電子対(電子の組)を共有する化学結合である。これらの電子対を「共有対」または「結合対」と呼び、原子間で電子を共有するときの引力と斥力(反発力)が安定した均衡をもたらす状態を「共有結合」と呼ぶ[24]。
結合
共有結合2つの水素原子が2つの電子を共有してH2(右)を形成する共有結合を示す詳細は「共有結合」を参照
イオン結合詳細は「イオン結合」を参照ナトリウムとフッ素が酸化還元反応を起こしてフッ化ナトリウムを生成する。ナトリウムは外側の電子を失って安定した電子配置になり、この電子は発熱的
イオン結合(ionic bonding)は、逆荷電を持つイオン間で静電引力を伴う化学結合の一種で、イオン化合物で生じる主要な相互作用である。イオンとは、1つまたは複数の電子を失った原子(カチオン)と、1つまたは複数の電子を獲得した原子(アニオン)のことである[25]。このような電子の移動は、共有結合とは対照的に「電気原子価(electrovalence)」と呼ばれる。最も単純なケースでは、カチオンは金属原子、アニオンは非金属原子であるが、イオンの中にはNH4+やSO42?のような分子イオンのように、より複雑な性質を持つものも存在する。常温常圧では、ほとんどの場合、イオン結合は個別に識別可能な分子を持たない固体(場合によっては液体)を形成するが、そのような物質が気化/昇華すると個別の分子が生じる(結合が(共有結合ではなく)イオン結合と見なされるだけの十分な電子が移動する)。 ほとんどの分子は肉眼で見ることができないほど小さいが、DNAのような生体高分子を含む多くのポリマーの分子は巨視的な大きさに達することがある。有機合成の構成要素として用いられる分子の大きさは、一般的に数オングストローム(A)から数十オングストローム(10億分の1メートル)程度である。この大きさでは可視光の波長以下の為、顕微鏡など光学的な像として個々の分子を観察することはできない。したがって通常目にする物質は結晶やクラスターなど集団としての分子を目にしていることになる。分子の単位質量は分子量が用いられ、およそ分子量で103から104を境に、それ以下の分子を低分子、それ以上の分子を高分子と呼ぶ。 単一の分子の姿は測定器を介して観測するしかないが、原子間力顕微鏡(AFM)を用いると、低分子(小分子)や個々の原子の輪郭を追跡できることがある。もっとも大きな分子には超分子がある。最も小さな分子は二原子水素(H2)で、結合長は0.74 Aである[26]。
分子の大きさ
分子式
化学式の種類詳細は「化学式」を参照
分子の化学式は、元素記号や数字のほか、丸かっこ、ダッシュ(')、角かっこ([])、プラス(+)、マイナス(-)などの記号を用いて1行で表示する。これらは下付き文字と上付き文字を含むこともあり、活版印刷の1行で表現できるように制限されている。
化合物の実験式は、非常に単純な種類の化学式である。[29]これは、化合物を構成する化学元素の最も単純な整数比のことである[30]。たとえば、水は常に水素原子と酸素原子が2:1の比率で構成され、エタノール(エチルアルコール)は常に炭素、水素、酸素が2:6:1の比率で構成されている。ただし、これによって分子の種類を一意に決めるものではなく、たとえばジメチルエーテルはエタノールと同じ比率である。同じ原子を異なる配置で持つ分子を異性体と呼ぶ。また、たとえば炭水化物は同じ比率(炭素:水素:酸素=1:2:1。したがって実験式も同じ)を持つが、分子内の総原子数は異なる。
分子式は、分子を構成する原子の正確な数を反映し、異なる分子を特徴づける。ただし、異なる異性体は、異なる分子であっても、同じ原子組成を持つことがある。
実験式と分子式が同じであることがよくあるが、常にそうとは限らない。たとえば、アセチレン分子の分子式はC2H2であるが、その元素の最も単純な整数比はCHである。
分子量は、化学式から計算することができ、中性炭素12(12C同位体)原子の質量の1/12に相当する通常の原子質量単位で表される。ネットワーク固体(英語版)の場合、化学量論的計算の際に式単位(英語版)という用語を使用する。
構造式テルペノイド分子アチサンの3次元(左、中央)と2次元(右)の分子モデル詳細は「構造式」を参照