出稼ぎ
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2022年の統計によると、日本で出稼ぎをしている外国人の国籍は、第1位がベトナム国籍の人々で453,344人(全体の26.2%)である。その次が中華人民共和国の人々(香港、マカオも含む)であり、397,084人(全体の23.0%)である。第3位はフィリピンの人々であり191,083人(11.1%)である[15]。以前は中華人民共和国の人々が1番多かったが、中国は国内経済が発展し出稼ぎが減る傾向になり、ベトナムの人々が増加傾向にあり、中国を抜いた。

一方で、ブラジルペルーなどからの出稼ぎの人々も多い。日系人の2世や3世やその配偶者などが、両親や祖父母(や義理の両親や義理の祖父母)の母国である日本を出稼ぎ先に選ぶ、ということも広く行われている。

また、欧米オーストラリア韓国などの先進国とされる国々から、英語教師やホステス露天商として出稼ぎに来る例も少なくない。
フィリピン人による国外への出稼ぎ詳細は「en:Overseas Filipino Worker」を参照

フィリピンからはこれまで多くの国民が海外に渡って働き、母国の家庭に送金してきた[16]。フィリピンの人口の1割に相当する1000万人がアメリカや中東諸国などをはじめとする母国の外で暮らす(永住者も含む)。フィリピン人の多くは英語が堪能であるため、世界中で働き、その外貨送金が国内の消費や成長を支えてきた[16]。しかしその経済構造が2015年以降変わりつつある[16]。フィリピン中央銀行によると2015年1月から11月の同国への銀行経由の外貨送金額は前年同期比3.6パーセント増の228億ドル(約2兆6000億円)であり、ここ数年6パーセント程度の増加を示していたのに比べると鈍化しており、2001年以来の低さになる[16]。またフィリピン海外雇用庁によると、2014年に出稼ぎのため出国した国民は183万2668人であり、過去最多を記録した2013年に比べ3600人減った[16]。この背景としては、年率6パーセントという新興国の中でも高い経済成長を続ける同国においては、国内雇用の拡大により、労働者の国内回帰が進んでいることがある[16]。コールセンターなどの受託業務産業が拡大し、100万人を超える雇用を生み出したほか、他のサービス産業も活発化しているからである[16]。それでもフィリピンの人口が年率2パーセント前後の増加を示していることから考えると、国内の労働市場ですべての労働人口を吸収するのは難しく、フィリピンの出稼ぎが大きく減るとは考えられていない[16]。また、日本の船舶会社である日本郵船がフィリピンに商船大学を設立して乗務員を確保していることからも明らかなように、英語に堪能な人材の引き合いは世界各地で根強い[16]
北朝鮮の国家的出稼ぎ

北朝鮮では、外貨獲得のために労働力を輸出して、労働者の給料から天引きを行う国家的な出稼ぎが行われてきた。特に1990年代の「苦難の行軍」の時代には、自国内の食糧事情が悪化したことにより、国と労働者側のニーズが合致。ロシアシベリア地方の森林(北洋材)の伐採現場や遠くアフリカ諸国の建設現場などに多くの労働者が国家の手により派遣された[17]。2015年、国連のマルズキ・ダルスマン北朝鮮人権状況特別報告者は、出稼ぎ労働者の実態をまとめた報告書を公表。派遣国数は17カ国前後、労働者の総数は5万人にのぼり、本国に送金された額は年間あたり12億-23億ドルにのぼると指摘している [18]。一方で、ポーランド[19]ロシアの建設工事の現場などでは、しばしば休日のない長時間労働、低賃金といった劣悪な労働環境が取りざたされることもあった[20]

2017年9月、北朝鮮が弾道ミサイルの発射、核実験を行うと国連安全保障理事会は、北朝鮮に対する経済制裁を決議。その中には、海外で働く北朝鮮労働者の受け入れ禁止も盛り込まれており、当年中にクウェートカタールUAEなどは北朝鮮労働者に対する査証の新規発給、更新を停止する措置を採った。湾岸諸国では多数の労働者が建設現場で働いたが、今後は働く場が失われていく見込み[21]。また、ロシアも労働者の滞在許可更新の制限を開始。2019年末までに、全ての北朝鮮労働者を帰国させる方針を打ち出した[22]が、労働者はその後もロシアで働き続けた[23]

2022年、ロシア国内の北朝鮮労働者9人が離脱して、韓国に入国したことが明らかになった。労働者は2022年ロシアのウクライナ侵攻に伴い、戦地の再建事業に従事させられる可能性を考えて出国を決意。極東地域などそれぞれ異なる場所からモスクワに移動し、国連難民機構の支援を得たとされている[24]
作品における出稼ぎ

上記の『あゝ野麦峠』のようなノンフィクション以外に、生活が苦しい人々が家族と離れて暮らす出稼ぎは、多くの創作の題材とされてきた。『母をたずねて三千里』のように家族と再会できる作品もあるが、出稼ぎ者や故郷に残した家族が失踪・死亡したり、身を持ち崩したりする悲劇や悲しみを描いたものも多い(『雨月物語』「浅茅が宿」、『ウルトラQ』「東京氷河期」、『ひよっこ』など)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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