出渕特有のデザインの意匠として、メカの表面に複数の穴(基本は上段3個、下段2個の5つ穴)を開けるというものがある(通称「ブチ穴」)[13]。出渕によれば、基本的には軽量化のためのものとイメージしてデザインしているという[11]。本人は「困ったときに穴を入れる」「言及されるようになって極力入れないようにしているが、たまにウケを狙って『どうせ、これが欲しいんだろう?』と入れたりすることもある」などと冗談を言っている[11][13]。あまりにイメージが強く、実際に二足歩行できるロボット「HRP-2」をデザインした際には、本人はデザインに描いていなかったのに、会社側が気を回して完成品には入っていたということもある[11]。
ロボットのデザインにはボディが三次元曲面で構成されたものが多い[注 3]。また、ロボットの頭部およびその周辺を左右非対称に描くことがあり[注 4]、左右対称の頭部がほとんどであるロボットデザインにおいては異色である。
メカデザインの仕事に加えて、ファンタジー世界を題材にしたキャラクターデザインでも有名[3]。海外で普及しているイメージの中から巧みに取捨選択し、それを洗練された表現で描き出すことで、日本のファンタジーのビジュアルの"スタンダードと呼べるものを生み出した[14][注 5]。出渕が『ロードス島戦記』のTRPGリプレイや小説の挿絵によって生み出したエルフやドワーフといった種族のビジュアルは、その後の日本におけるファンタジー世界のイメージに大きな影響を与えた[8][注 6]。特にディードリットが象徴するエルフのビジュアルは、すでに日本を飛び越えて海外にまで広く影響を与えている[3][8]。
出渕のファンタジー世界を描いたデザインやイラストはアール・ヌーヴォー調のタッチという印象を持たれているが、本人は影響を受けていないという[3][注 7]。アール・ヌーヴォー的に見えるデザインは、『指輪物語』の挿絵や映画『ロード・オブ・ザ・リング』のデザインを担当しているアラン・リー(英語版)と映画『ダーククリスタル』のコンセプトデザインを手がけたブライアン・フラウド(英語版)という2人のイギリス人アーティストの作品にインスパイアされたもの[3][8]。この2人の共著でいろいろな妖精を描いた『フェアリー』という画集を中学生の頃に手に入れ、そのビジュアルセンスに多大な影響を受けたという[8]。
また特撮番組では、東映の戦隊シリーズで敵キャラクターのデザインを担当。独創性のある表現力で子ども向け番組にハイティーン以上のファンを取り込むきっかけを作った[9]。
玩具メーカーも出渕のデザインに注目。バンダイの発行する模型雑誌B-CLUBで『聖戦士ダンバイン』に登場するオーラバトラーのデザインをよりリアリティのある解釈でイラスト化する『オーラファンタズム』を連載[9]。海洋堂が出渕デザインのメカやキャラクターを自社で展開するガレージキットで次々と立体化するなど、模型業界において大きな影響を与える存在となった[9]。
メカやキャラクターだけでなく服飾デザイン、特に軍服関係にも興味がある[10][11]。その延長で西洋甲冑にも興味があり、ロボットのデザインやアニメ・特撮のキャラクターの衣裳デザインにも影響が出ている[11]。西洋甲冑ほど詳しくないが日本の甲冑にも興味がある[15]。アニメでも特撮でも、作品の都合に合わせて簡略化したりアレンジしたり絵的に嘘をついたりしながらも、パッと見には着れたり動けたりできるように見える(特撮では実際に着ることができる)ところにデザインを落とし込んでいく[11]。
デザイナーとして作品に参加する場合、自身がデザインした物の動かし方や見せ方については、その作品の作画監督や演出担当者が発言を行うべきであると考えており、デザイナーはあくまでもアニメーターの手伝いとして、作品の世界観を構築する手助けをする立場であると述べている[16]。