凸レンズ
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すなわち、ルーペ無し・有りのときの見込み角度をそれぞれ α、β とすると、倍率 M は M = tan ⁡ β / tan ⁡ α {\displaystyle M=\tan \beta /\tan \alpha } と定義される。ただし、近軸近似の成り立つ範囲では M ≈ β/αとなる。距離 L としては、明視距離(慣習的に 250 mm とされる)が用いられる[5]

倍率は物体とレンズと目の位置関係により変化する。レンズの焦点距離 f、前側焦点から物体までの距離を x、後側焦点から目までの距離を z とすると、倍率 M は

M = L f ⋅ 1 1 + ( x z / f 2 ) {\displaystyle M={L \over f}\cdot {1 \over {1+(xz/f^{2})}}}

となる[6][7]

手持ち式のルーペの場合、主に以下のような使い方がある[8]

物体をレンズの前側焦点に置く(x = 0)。このときレンズを通した光は平行光になるので、目の位置に関わらず虚像は無限遠にあり倍率は一定で、M = L/f となる。

目をできるかぎりレンズに近づけ(z = -f)、かつ虚像の見かけの位置が目から L = 250 mm となるように物体を置く。このとき M = (L/f) + 1 となる。さらに物体をレンズに近づければ倍率は上がるが、実際は目の焦点があわせられる範囲で制約される。

目を後側焦点に置く(z = 0)。このとき倍率は一定で M = L/f となり物体の位置によらない。

商品としてのルーペには M0 = 250/f を倍率として表示している場合[9]と、M = (250/f) + 1 = M0 + 1 を表示している場合[10]、あるいはそのいずれでもない場合(目と物体の間の距離を 250 mm としてレンズをその中間に置いたときの倍率[11]、など)がある。

読書用ルーペなどで片面が平らな平凸レンズをもちいたものでは、倍率は表裏どちらでも同じだが、凸側を物体に向けたほうが非点収差などが小さく、見やすくなる[12]。倍率が大きいルーペ(M0 > 1)で両眼で観察できるほど視野を広くするには非球面レンズが必要となる[13]

頭に装着して用いるルーペはヘッドルーペと呼ばれ、両手を用いた細かい作業などに用いられる。
凹レンズ
基本的性質図2‐1凹レンズによる虚像

凸レンズと逆に光を発散させるレンズは凹レンズ(おうレンズ、: concave lens)と言う。レンズの両面の形により、両凹、平凹、凸凹 (メニスカス凹)の各種がある。

凹レンズを通る光(図2-1)には主に以下のような性質がある。
軸に平行な光線は凹レンズを通った後、入射側にある軸上の一点(焦点)から出たかのように広がって進む(発散)

レンズの後方の焦点に向かう光線は凹レンズを通過した後は軸に平行に進む

節点を通る光線は凸レンズ同様に角度を変えずに進む

凹レンズでできる像は常に正立虚像で、物体と同じ側にある。焦点距離を負の数値であらわす(f < 0)と、凸レンズの場合と同じレンズの公式が成り立つ。
凹凸レンズ

凹凸レンズ(英:meniscus lens)は、英語名のまま、メニスカスレンズとも呼ばれる。レンズの片面が凸、もう片面が凹になったレンズで、二つの面の相対的な曲率の違いに応じて中央が周囲より厚い場合は凸レンズとして、逆の場合は凹レンズとして働く。眼鏡の場合は単体で、また光学機器で他のレンズと組み合わせて使用される。
レンズの種類
屈折率により光路を制御するレンズ

回折レンズ - 回折を利用したもので、一部の写真レンズの部品として用いられている。

セルフォックレンズ - 屈折率分布型の端面が平坦なレンズ。アライメントがし易いためWDM光通信のコンポーネントなどに使われる。アレイ状に並べたセルフォックレンズアレイ(SLA)はプリンタやコピー機の光学系などに使われる。

非球面レンズ - 収差を抑える(場合によってはゼロにする[14])ため、面を真球ではなくしたレンズ。写真レンズや光学式メディアのピックアップ用レンズや眼鏡用として生産されている。

光学レンズと同様な働きをする技術、現象

重力レンズ - 天体などの重力による時空の歪みによって、光が曲げられる現象である。これにより、遠方の銀河などの像が歪んだり、2つに分裂したりする。

電子顕微鏡では光の代わりに電子線を用いて試料の拡大像や回折図形を得るが、この電子線を曲げるレンズ(電子レンズ)として電磁石を用いた磁界レンズや静電場を使った静電レンズが用いられる。

放射光などによるX線回折では、回折によってX線を集光するX線レンズが用いられている。X線レンズの材料として金属多層膜などが挙げられる。

光以外の物をレンズのように制御する技術

爆縮レンズ - 原子爆弾に用いられる技術

爆薬レンズ

風レンズ - 小型の風力発電風車に用いられる技術

音響レンズ - 音波の収束に使用される。ソナーイルカ等の海洋哺乳類にみられる。

誘電体装荷アンテナ - アンテナの開口部に設置された誘電体により、見かけの開口率を高める。

脚注[脚注の使い方]^ lensの意味 - 英和辞典 - コトバンク
^ レンズ豆とレンズ - EMG エンパイヤメガネグループ
^ a b c Smith, Warren J. (2000-07-26). Modern Optical Engineering: The Design of Optical Systems (3rd Ed. ed.). McGraw-Hill. pp. pp. 25 - 27. .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-0071363600 
^ “"副実像"の写像公式化の研究”. 熊本県立宇土高等学校. 2022年3月5日閲覧。
^ 鶴田匡夫「 ⇒第8・光の鉛筆[11 読書用ルーペ2 明視距離]」『O plus E』、アドコム・メディア、2006年6月。 
^ 小穴純『レンズの話』。 
^ 鶴田匡夫『続・光の鉛筆 : 光技術者のための応用光学.』新技術コミュニケーションズ、1997年。ISBN 4-915851-02-8。 
^ 鶴田匡夫「 ⇒第8・光の鉛筆[10 読書用ルーペ1 倍率と解像力]」『O plus E』、アドコム・メディア、2006年5月。 
^ ニコンビジョン. “ ⇒ハイグレード読書用ルーペ”. 製品紹介. 2008年6月2日閲覧。
^ 池田レンズ工業. “ ⇒ルーペの倍率”. ルーペスタジオ楽天店. 2006年6月2日閲覧。


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