凝固した血餅は生体にとっては異物であり、組織の修復とともに除去されねばならない。このために存在するのが線溶系である。 そもそも侵襲を受けていない血管壁でも血栓の形成と線溶は絶えず繰り返されており、このバランスが崩れると様々な疾患を引き起こす。 多発外傷では組織因子が血液内に流入して凝固系を発動し、また敗血症によるエンドトキシンなどは炎症性メディエイターの誘導を介して血管内皮細胞の抗血小板作用を減弱させるため、身体各部で血栓が形成されて凝固因子が消費され、ついには凝固因子の枯渇に至る。同時に血栓による循環不全を解消すべく線溶系が亢進する結果、止血ができなくなる。これが播種性血管内凝固症候群(DIC)である。DICの治療にはヘパリンを用いるが、AT3が枯渇している場合は効果がないのでAT3も同時に投与する。また凝固因子と線溶系の因子の多く(第II、VII、IX、XI、XIII因子、プラスミン)はセリンプロテアーゼが進化した物であるから、セリンプロテアーゼ阻害薬であるメシル酸ナファモスタットやメシル酸ガベキサートを投与する。 Ferguson JJ. et al. "Safe use of platelet GP IIb/IIIa inhibitors." Eur Heart J. 19 Suppl D:D40-51.;1998 Apr ⇒Entrez PubMed
血漿中のプラスミノゲンが組織型プラスミノゲン活性化因子(t-PA)もしくはウロキナーゼ(u-PA)によって活性化され、プラスミンになる。
プラスミンは凝固したフィブリンを分解し、D-ダイマーその他の分解産物に変化させる。
線溶阻止物質
プラスミノゲン活性化阻止物質
α1-アンチトリプシン:第14染色体長腕末端(14q32)にマップされたSERPINA1遺伝子によりコードされる分子量約51000の糖タンパク質で、活性化されたプラスミンの作用を阻害する。この欠損によりCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を発病する確率が上がることが知られているが、機序は不明である。
α2-アンチプラスミン:第17染色体短腕末端(17p13)にマップされたSERPINF1とSERPINF2遺伝子によりコードされる分子量59000の糖タンパクで、肝で合成され血流に放出される。血漿電気泳動ではα2グロブリンに属し、線溶阻止に果たす役割は上記のα1アンチトリプシンよりも大きい。
トロンビン活性化性線溶阻止物質
線溶系の異常
参考文献
出典^ ノイアート静注用 添付文書 2023年4月改訂第1版, 日本血液製剤機構
^ アンスロビンP注射用 添付文書 2022年4月改訂第25版, KMバイオロジクス/CSLベーリング
^ アスピリン「バイエル」 添付文書 2017年5月改訂第6版, バイエル薬品
^ ワーファリン錠 添付文書 2019年7月改訂第1版, エーザイ
^ リクシアナOD錠 添付文書 2022年10月改訂第4版, 第一三共
関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、凝固・線溶系に関連するカテゴリがあります。
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